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ナタリー•ローズ  作者: 徳田新之助
新たな旅立ち
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隠された力





ナタリーの「真実の顕現」の力により、侯爵の不正が白日の下に晒され、兵士たちは動揺し、民衆は怒りに燃えた。侯爵は、予想外の反撃に顔色を変えたが、その表情にはまだ諦めの色はなかった。彼は、自身の隠し持っていた「切り札」を使い、この状況を打開しようと画策する。


「まさか、これほどの力を持つとは…だが、この国の真の闇を知らぬ愚か者め!」


侯爵は、舞台裏に控えていた側近に合図を送った。すると、会場の地下から、これまで感じたことのない、重く淀んだ「気」が湧き上がってきた。それは、泉の「地の息吹」とは異なる、より人工的で、しかし強大な負のエネルギーだった。


「これは…!」


ナタリーは、その「気」の正体に驚愕した。それは、かつて「虚無の徒」が使用していた「霊力の核」に似ていたが、さらに大規模で、この国の「地の息吹」を無理やり歪ませ、吸収しているような感覚があった。


「愚かな異国の女よ! この国の真の力を見せてやろう! 我が祖先がこの国を支配するために築き上げた、闇の力をな!」


侯爵は高らかに叫んだ。彼の言葉と共に、地下から巨大な石の塊がせり上がってきた。それは、無数の黒い鎖で縛られ、禍々しい文様が刻まれた、巨大な「霊力の核」だった。その核からは、人々の「憎悪」や「絶望」を増幅させるかのような、負の波動が放出されていた。


「これは、この国の歴史の中で積み重ねられてきた、人々の負の感情を吸収し、力に変える装置だ! これがあれば、民衆の心など、意のままだ!」


侯爵は、狂気に満ちた笑みを浮かべた。彼は、この「闇の核」を使い、人々の心を完全に支配し、ナタリーを排除するつもりだったのだ。


会場にいた人々は、その禍々しい光景と、核から放たれる負の波動に怯え、次々とその場に倒れ伏した。兵士たちもまた、その力に抗えず、苦しみ始めた。アルベルトと執事も、その強大な負の力に、顔を歪ませた。


「お嬢様、これは危険です! このままでは、この国の『地の息吹』そのものが、完全に汚染されてしまいます!」


執事が叫んだ。


ナタリーは、自身の「統合された貌」の力を最大限に引き出した。泉の清らかな力と、古の箱の破壊の力、そしてそれらを融合させた「創造」の力が、彼女の身体から溢れ出した。七色の光が、闇の核から放たれる負の波動と衝突し、会場は光と闇の激しい応酬の場と化した。


ナタリーは、闇の核の力を打ち消すだけでなく、その根源を浄化する必要があると感じた。彼女は、泉の囁きに耳を傾けた。泉は、この闇の核が、かつてこの国を築き上げた祖先たちが、強大な力を得るために、大地から無理やり生命力を奪い、人々の負の感情を封じ込めたものだと伝えてきた。それは、この国の「過去の傷痕」そのものだった。


「この闇の核は、この国の悲しい歴史の象徴…しかし、これを破壊するだけでは、真の解決にはならない!」


ナタリーは、破壊ではなく、「浄化」と「解放」の道を選んだ。彼女は、闇の核に宿る負の感情を、泉の力で「希望」の光へと変換するイメージを心に描いた。


ナタリーは、闇の核に向かって両手を突き出した。彼女の身体から放たれる七色の光は、闇の核を包み込み、その禍々しい文様を一つずつ浄化していく。核から放出されていた負の波動は、徐々に弱まり、代わりに、温かく清らかな光が会場に満ち始めた。


侯爵は、自らの切り札が浄化されていく光景に、絶望の叫びを上げた。彼の顔からは、傲慢な笑みが消え失せ、純粋な「恐怖」の感情が浮かび上がっていた。


闇の核が完全に浄化されると、それは光の粒子となって消滅した。会場に倒れていた人々は、まるで悪夢から覚めたかのように、ゆっくりと意識を取り戻した。彼らの心から、これまで感じていた「恐怖」や「絶望」の感情が消え失せ、代わりに、清々しい「安堵」と「希望」の感情が満ちていた。


「…これは…何が…」


兵士たちは、自分たちが侯爵の不正に加担していたこと、そしてナタリーが真の「光」であったことを悟り、その場にひざまずいた。


侯爵は、全てを失ったかのように呆然と立ち尽くしていた。彼の支配は完全に終わりを告げた。


ナタリーは、浄化された会場を見渡し、静かに微笑んだ。彼女の「統合された貌」は、個人の内なる淀みだけでなく、社会全体を覆う歴史的な「闇」をも浄化し、真の「希望」を呼び覚ますことができることを証明したのだ。


しかし、ナタリーの心には、新たな予感が芽生えていた。この国の闇の核は、世界に広がる「虚無の徒」の影と、何らかの繋がりがあるのではないか。この勝利は、より大きな戦いの序章に過ぎないのかもしれない。ナタリーは、この国に残された「希望の芽吹き」を見守りながら、次の旅路へと心を向け始めていた。

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