侯爵の罠
ナタリーの活動により、子供たちの間に希望の光が芽生え、一部の大人たちの心にも変化の兆しが見え始めた。しかし、この動きは、この国の支配者である侯爵にとって、自らの権力を脅かす危険な兆候として映っていた。侯爵は、ナタリーが異国の村で伯爵を失脚させた手腕を知り、彼女を徹底的に排除すべく、巧妙な罠を仕掛けることを決めた。
侯爵は、まず、ナタリーを「異端の魔女」として公然と非難する布告を出し、彼女に近づく者を罰すると脅した。さらに、彼が支配するメディアを通じて、ナタリーに関する虚偽の情報を流し、彼女がこの国の秩序を破壊しようとしている悪女であるかのように印象操作を行った。
「あの異国の女は、我々の神聖な歴史を冒涜し、民衆を扇動している!」
そんなプロパガンダが、連日、街中に響き渡った。
ナタリーは、泉の囁きを通じて、街中に広がる新たな「不信」と「恐怖」の感情を感じ取っていた。人々の心が再び閉ざされ、希望の光が陰り始めていることに、ナタリーは心を痛めた。しかし、彼女は侯爵の企みに屈するつもりはなかった。
ある日、侯爵は慈善事業を装い、大規模な食料配給会を企画した。貧困にあえぐ人々は、その知らせに歓喜した。しかし、侯爵の真の目的は、この機会を利用してナタリーを罠にかけることだった。
アルベルトは、この配給会に不審なものを感じ、ナタリーに警告した。
「ナタリー様、侯爵は慈善などするような人物ではありません。何か企んでいるに違いありません」
ナタリーもまた、泉が伝える侯爵の心の奥底にある「悪意」の波動を感じ取っていた。しかし、飢えに苦しむ人々を放っておくことはできなかった。
「もし罠だとしても、飢えた人々を見捨てることはできません。私が行きます」
ナタリーは、執事とアルベルトと共に、配給会の会場へと向かった。会場には、侯爵が仕立てた兵士たちが多数配置されており、物々しい雰囲気が漂っていた。侯爵は、壇上からにこやかに演説をしていたが、その目はナタリーを冷たく見据えていた。
配給が始まると、人々は我先にと食料を求めて殺到した。その混乱の中、侯爵の兵士たちが突然、ナタリーを拘束しようと襲いかかってきた。
「異端の魔女、ナタリー・ローズ! お前を、この国の秩序を乱した罪で逮捕する!」
兵士たちが、剣を構えてナタリーに迫る。アルベルトと執事が、ナタリーを守ろうと前に出たが、兵士たちの数は圧倒的だった。
その時、ナタリーは静かに両手を広げた。彼女の身体から、泉と古の力が融合した、より強力な七色の光が放たれた。それは、単なる癒しや幻惑の光ではなく、周囲の空間に存在するあらゆる「歪み」を一時的に視覚化する**「真実の顕現」**の力だった。
光に包まれると、兵士たちの目に、彼らが侯爵から受け取った賄賂の金の輝き、人々に配られた食料の中に隠された毒の「気」、そして侯爵の心の中に渦巻く「傲慢」と「邪悪な野心」の淀みが、鮮やかに映し出された。彼らの心に「罪悪感」と「恐怖」が湧き上がり、剣を持つ手が震え始めた。
「貴方方が守るべきは、私利私欲にまみれた権力者の欺瞞ですか? それとも、飢えに苦しむ人々の命と、この国の真の希望ですか?」
ナタリーの言葉が、光の波動と共に兵士たちの心に深く響いた。兵士たちは、侯爵の企みの全貌を目の当たりにし、その場で動けないほどに動揺した。
会場は騒然となった。人々は、兵士たちの突然の異変と、ナタリーから放たれる圧倒的な光に驚愕した。そして、光によって可視化された侯爵の不正の「真実」に、激しい怒りが湧き上がった。
侯爵は、ナタリーの予想外の反撃に顔色を変えた。彼の罠は、逆に自らの悪事を白日の下に晒す結果となったのだ。しかし、侯爵はまだ諦めていなかった。彼は、自身の隠し持っていた「切り札」を使い、この状況を打開しようと画策する。ナタリーの「統合された貌」は、侯爵のさらなる闇に、いかに立ち向かっていくのだろうか。




