伯爵の暗躍
伯爵邸の庭に現れた光り輝く地図は、瞬く間に村中に衝撃を与えた。鉱夫たちは自分たちの苦しみの真の原因を知り、村人たちは伯爵家の非道な行いに怒りを覚えた。神父は、その「奇跡」に神の意思を感じ取り、村人たちに団結を呼びかけた。彼らは連帯し、伯爵家への抗議の声を上げ始めた。
伯爵は、自らの屋敷の庭に現れた「真実の顕現」に激しく動揺した。当初は誰かの悪質な悪戯だと片付けようとしたが、地図が示す詳細な情報と、村人たちの切迫した訴えに、彼の悪事が露呈したことを悟った。しかし、伯爵は素直に非を認めるような人物ではなかった。彼は自身の名誉と利益を守るため、即座に暗躍を始めた。
まず、伯爵は村の有力者や、日頃から恩を売っていた者たちに圧力をかけ、ナタリーを「魔女」と呼んで中傷するよう仕向けた。
「あの娘は、得体の知れない力で村を惑わそうとしている。神の教えに背く者だ!」
そんな噂が、村の一部で囁かれ始めた。特に、伯爵家から金銭的援助を受けていた者たちは、恐れて伯爵の言いなりになっていた。彼らは、ナタリーが「夜の顔」で見せる冷徹な一面を強調し、村人たちの間に疑心暗鬼を植え付けようとした。
ナタリーは、泉の囁きを通じて、村に広がる新たな不協和音を感じ取っていた。人々の心に芽生える「不信」の感情は、かつて「虚無の徒」が利用しようとしたものと似ていた。しかし、ナタリーは動じなかった。彼女は、真実が最終的には勝つと信じていた。
その日の午後、伯爵は村の長老たちを強引に屋敷に呼び出した。彼は、採掘計画書が偽造されたものであり、ナタリーが村の秩序を乱す危険な存在であると主張した。
「あの娘は、村に混乱をもたらす。これ以上、私に逆らうなら、炭鉱を閉鎖せざるを得ない。そうなれば、村は飢えに苦しむことになるぞ!」
伯爵は脅しをかけた。長老たちは、村の未来を左右する炭鉱の閉鎖という言葉に動揺し、苦渋の表情を浮かべた。
しかし、その時、教会から響く鐘の音が、長老たちの心を揺さぶった。それは、神父が村人たちに「希望の歌」を歌うよう呼びかけている合図だった。村人たちの歌声が、長老たちのいる伯爵邸にまで届き、彼らの心を奮い立たせた。
一方、ナタリーは、執事と共に村の鉱夫たちの家を一軒一軒訪ねていた。彼女は、鉱夫たちの苦しみに深く耳を傾け、彼らの抱える不安や不満を真摯に受け止めた。そして、泉の癒しの力で、病状が特に重い鉱夫たちの苦痛を和らげた。ナタリーの温かい手が触れると、鉱夫たちは僅かながらも楽になり、彼女の優しさに涙した。
「私たちは、あなたを信じます、ナタリー様」
鉱夫たちの言葉が、ナタリーの心に温かい光を灯した。彼らの「信頼」と「希望」が、ナタリーの力を増幅させているのを感じた。
伯爵邸では、長老たちが伯爵の言葉に揺れていたが、ナタリーから真実を聞いていた何人かの若い鉱夫たちが、伯爵邸の門前に集まり、自分たちの病が炭鉱によるものであることを叫び始めた。彼らの言葉は、長老たちの心を強く打った。
ナタリーは、村人の「信じる心」と「希望」が、伯爵の暗躍を打ち破る最大の武器となることを確信した。彼女は、村人たちと共に立ち向かう決意を新たにした。伯爵は、村の団結という思わぬ抵抗に、焦りの色を濃くしていく。このままでは、彼の悪事は完全に白日の下に晒されるだろう。ナタリーと村人たちの「光」が、伯爵の「闇」を確実に蝕み始めていた。




