二つの力の融合
呪術師たちの呪詛が村を覆い尽くし、ナタリーの結界が限界を迎えようとしていた。村の生命力が奪われ、地面はひび割れ、植物が枯れていく。このままでは、村全体が滅びてしまう。ナタリーは、もはや泉の力だけでは対処できないと悟り、禁忌の箱に眠る「古の力」を呼び覚ます覚悟を決めた。
ナタリーは目を閉じ、意識を鉱山へと向けた。泉の清らかな波動と、古の箱から響く荒々しい波動が、彼女の身体の中で激しく衝突する。それは、魂が引き裂かれるかのような、筆舌に尽くしがたい痛みだった。しかし、ナタリーは諦めなかった。村人たちの悲鳴、そして母の面影が、彼女の心に力を与えた。
「私は…この村を守る…!」
ナタリーの心からの叫びが、泉と古の力の間に架け橋を築き始めた。清らかな泉の光が、荒々しい古の力を包み込み、ゆっくりと融合していく。ナタリーの身体から放たれる光は、これまで見たことのない、虹色に輝く波動へと変化した。その波動は、清らかさと破壊力を併せ持つ、まさに「二つの力の融合」の証だった。
呪術師たちは、ナタリーから放たれる未知の波動に、わずかな動揺を見せた。彼らの呪詛は、その波動に触れるたびに霧散し、効果を失っていく。
「何だ…この力は!?」
呪術師の一人が叫んだ。彼らは、ナタリーが泉の守護者であることは知っていたが、古の力まで操るとは予想していなかったのだ。
ナタリーは、融合した力を解き放った。彼女の手から放たれた虹色の光の波が、村を覆う呪詛の紋様を次々と打ち消していく。大地に走っていたひび割れが塞がり、枯れかけていた植物に再び生命の色が戻った。村人たちが避難している教会の中からも、安堵のため息が漏れる。
しかし、呪術師たちは簡単には引き下がらなかった。彼らは、自らの身体から血を滴らせながら、さらに強力な呪詛を放ち始めた。彼らの背後に、おぞましい形相の影が立ち上り、村全体を飲み込もうと迫る。それは、彼らが自身の命を削ってまで発動させた、最後の抵抗だった。
ナタリーは、その巨大な影に対峙した。彼女は、融合した力を最大限に集中させた。虹色の光が、巨大な影と激しくぶつかり合う。村中に響き渡る衝撃音と、光と闇の激しい閃光。ナタリーの身体は、限界を超えて力を引き出し、激しく震えていた。
「お嬢様!」
執事が叫んだ。彼は、ナタリーの力が限界に達していることを感じ取っていた。
ナタリーは、最後の力を振り絞り、自身の全ての「希望」を虹色の光に込めた。
「この村に、絶望は許さない!」
ナタリーの声が、影の波動を突き破り、呪術師たちの心に直接響いた。彼らは、その声にわずかに怯んだ。彼らの力を支える「絶望」が、ナタリーの「希望」によって揺さぶられたのだ。
虹色の光が、おぞましい影を完全に貫いた。影は悲鳴を上げて霧散し、呪術師たちは力を失い、その場に倒れ伏した。彼らの身体からは、淀んだ呪詛の力が消え去り、ただの疲弊した人間としてそこに横たわっていた。
村に再び静寂が戻った。ナタリーは、その場に膝から崩れ落ちた。執事がすぐに駆け寄り、彼女を抱きかかえる。
「お嬢様、もう、大丈夫でございます」
ナタリーは、朦朧とする意識の中で、執事の言葉を聞いた。村は、守られた。
夜が明け、村には清々しい朝の光が差し込んでいた。教会から出てきた村人たちは、荒らされた村の様子に驚きながらも、全ての異変が収まっていることに安堵した。彼らは、何が起こったのか完全に理解してはいなかったが、ナタリーが再び村を救ってくれたことを直感していた。
呪術師たちは、力を失い、もはや村に害をなす力は残されていなかった。彼らは村から追放され、二度と村に近づかぬよう警告された。
ナタリーは、泉へと向かった。泉の水は、二つの力を融合させた彼女の新たな状態を反映するかのように、これまで以上に輝きを増していた。彼女は、泉の守護者として、そして古の力の番人として、完全に覚醒したのだ。
しかし、二つの力を融合させたことには、まだ知られざる代償があるのかもしれない。そして、「虚無の徒」の本当の目的、そして彼らの根源が何であるのかは、まだ謎に包まれたままだった。ナタリー・ローズの戦いは、まだ終わっていない。彼女の「統合された貌」は、これからどんな運命を切り開いていくのだろうか。




