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ナタリー•ローズ  作者: 徳田新之助
聖なる泉の守護者
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古の力





村に平和が戻ったかに見えたが、ナタリー・ローズの「聖なる泉の守護者」としての新たな使命は、彼女に新たな試練をもたらそうとしていた。泉の力は、村のあらゆる変化をナタリーに感じさせ、その中には、遠くから忍び寄る不穏な気配も含まれていた。


ある夜、泉での修行中、ナタリーの脳裏に、かつてないほど鮮明な映像が浮かび上がった。それは、見知らぬ男たちが村の外れにある廃れた鉱山に集い、何かを掘り起こしている光景だった。彼らの顔には貪欲な笑みが浮かび、その手には、古びた地図が握られているように見えた。泉の囁きは、それが村の地下に眠る「古の力」を狙う者たちの企みであることを告げていた。


翌朝、ナタリーは執事にその内容を語った。執事の顔には、すぐに緊張の色が走った。


「鉱山でございますか……。そこには、ローズ家が古くから封印してきたものが眠っていると伝えられております。奥様も、決して近づかぬよう、強く申されておりました」


執事の言葉は、ナタリーの予感が単なる夢ではないことを裏付けた。村の地下には、泉の力とは異なる、しかし同じくらい強大な「古の力」が眠っている。それは、村の均衡を保つためにローズ家が代々守り続けてきた、もう一つの秘密だった。


ナタリーはすぐに、村の古文書を再度調べ始めた。鉱山に関する記述はほとんどなかったが、古い挿絵の中に、奇妙な紋様が描かれた石の箱のようなものが描かれているのを見つけた。その紋様は、ナタリーのフラッシュバックした映像の中で、男たちが手にしていた地図に描かれていたものと酷似していた。


「この紋様は、何ですか?」


ナタリーの問いに、執事は深く息を吐き出した。


「それは、『禁忌の箱』と呼ばれるものの紋様でございます。村の伝承では、その箱を開けば、村に大きな災いをもたらすと伝えられております」


「災い…?」


ナタリーは訝しんだ。泉の力と、禁忌の箱の力。二つの「力」が村に存在するという事実に、彼女は改めて自身の使命の重さを感じた。


その日の午後、村では奇妙な病が流行り始めた。健康だった村人たちが、突如として高熱を出し、意識を朦朧とさせる。原因は不明で、医者も治療法を見つけられずにいた。泉の囁きは、この病が鉱山での不穏な動きと関係していることを示していた。男たちが掘り起こしている「古の力」が、村の地下水脈を通じて、病として顕在化しているのかもしれない。


ナタリーは、病に苦しむ村人の姿を見て、心が引き裂かれる思いだった。彼女は、昼間の天使の貌で、庭で育てたハーブを調合し、病人の元へと届けた。ハーブは一時的な痛みを和らげはしたが、根本的な治療にはならない。


夜、ナタリーは泉へと向かった。泉の水は、病の流行を反映するかのように、微かに濁っているように見えた。


「泉よ…教えて。この病を止めるには、どうすればいい?」


泉の囁きは、病の根源が鉱山にあることを、より明確に伝えてきた。そして、禁忌の箱に眠る「古の力」が、村の生命力を吸い取り始めていることも。


ナタリーは知った。禁忌の箱の力を完全に制御するためには、泉の守護者である自分が直接介入し、その力を再び封印しなければならないことを。しかし、それは大きな危険を伴う。古の力は、泉の力とは異なる性質を持ち、扱い方を誤れば、ナタリー自身をも飲み込む可能性があるのだ。


「私が行かなければならない」


ナタリーの決意は固かった。村の平穏を守るため、そして病に苦しむ人々を救うため、彼女は未知の「古の力」と対峙する覚悟を決めた。執事は、危険を顧みないナタリーを案じたが、彼女の瞳に宿る揺るぎない決意を見て、静かに頷いた。


「かしこまりました。私も、お嬢様にお供いたします」


古の力が目覚めようとしている。ナタリーは、その力を巡る新たな戦いに身を投じようとしていた。彼女の「統合された貌」は、この試練を乗り越えることができるのだろうか。そして、村の未来は、ナタリーの手に委ねられようとしていた。

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