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ナタリー•ローズ  作者: 徳田新之助
聖なる泉の守護者
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覚醒、そして選択





「聖なる泉」の守護者としての真実を知ったナタリーは、迷いの中にいた。自身に宿る強大な力、そして両親が背負ってきた重い使命。これまでの行動が全てその宿命に導かれていたとはいえ、改めてその全てを受け入れることは容易ではなかった。しかし、子供たちの笑顔、神父の信頼、そして村の穏やかな日常を守りたいという揺るぎない思いが、彼女の背中を押した。


ナタリーは、執事に案内され、深い森の奥へと足を踏み入れた。足元には、苔むした岩や、倒れた大木が横たわっている。日の光も届かぬような鬱蒼とした森の中を、ひたすらに進む。やがて、彼女たちの目の前に、古びた石碑が現れた。苔に覆われ、一部が欠け落ちたその石碑は、ナタリーの記憶の中にあるものと寸分違わぬ姿だった。そして、その奥には、清らかな水が湧き出る小さな泉が静かに佇んでいた。


「ここが、『聖なる泉』でございます、お嬢様」


執事の声が、静かな森に響く。


ナタリーは泉の前に跪き、そっと水面に手を触れた。ひんやりとした水が指先を撫でる。その瞬間、泉の中から、淡い光が湧き上がり、ナタリーの全身を包み込んだ。同時に、彼女の脳裏に、これまで封印されていた記憶が洪水のように流れ込んできた。


母親が泉の力を操り、村を救う姿。泉の声を聞き、未来を予見する光景。そして、ローズ家が代々、いかにしてこの村の平和を影から支えてきたか、その全てが鮮明に蘇った。彼女の「夜の顔」は、泉の力を無意識に引き出し、村の脅威を排除しようとする本能的な反応だったのだ。そして、その冷徹さは、力を制御し、的確な判断を下すために必要な、守護者としての覚悟の表れでもあった。


光が収まると、ナタリーはゆっくりと立ち上がった。その瞳には、かつての迷いはなく、澄み切った決意が宿っていた。彼女は、もはや二つの貌を持つ少女ではなかった。昼の天使の優しさと、夜の守護者の冷徹さ。その両方が、今、ナタリー・ローズという一人の人間の中で、完璧に融合していた。


「執事。私、ナタリー・ローズは、この『聖なる泉』の守護者としての使命を受け入れます」


彼女の声は、森の静寂に響き渡り、清らかな響きを持っていた。


しかし、その決意の裏には、新たな課題が隠されていた。泉の力は強大であり、闇雲に使えば、村に混乱をもたらしかねない。ナタリーは、その力を完全に制御し、真の意味で村の守護者となるための道を歩み始める必要があった。


その日以来、ナタリーは、日中はこれまでと変わらず孤児たちの教育に情熱を注ぎ、村人たちに優しい笑顔を向けた。しかし、夜になると、彼女は執事と共に泉を訪れ、泉の力を感じ取り、自身の内に秘められた能力を磨いていった。時には、泉の声を聞き、遠く離れた場所で起こる村の小さな変化や、未来に起こりうる危険を予知することもあった。


泉の力は、彼女の感覚を研ぎ澄ませ、村のあらゆる情報が彼女の元に集まるようになった。それは、人々の心の声であり、大地の囁きであり、時には未来の予兆でもあった。ナタリーは、その膨大な情報を整理し、村の平和を守るために、最も適切な選択を下していく。


ナタリー・ローズ。天使のような優しさと、冷徹な守護者の顔を併せ持つ少女は、今、その両方を自身の内に統合し、真の「聖なる泉の守護者」として覚醒した。彼女の物語は、村の新たな時代を告げる序章となるだろう。そして、彼女がこれから出会うであろう、新たな試練と、その「力」が導く運命とは。

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