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『とこしえ坂』  作者: 血反吐P
終章
22/22

エピローグ


夏休みが終わり、教室に活気が戻ってきた。


 蝉の声が鳴りやんで、風が少し涼しくなってきた頃。




 生徒たちは、何事もなかったようにそれぞれの机に着き、


 先生の「おかえりなさい」の声に笑いながら応えていた。




 誰も、気づいていないようだった。




 




 一番後ろの窓際、空席がひとつあることに。




 




 それが、もともと誰の席だったのか。


 名前を思い出せる生徒はいなかった。


 担任も、出席番号の飛び番号に対して、特に何も言わなかった。




 




 「……誰か転校したっけ?」


 「え、そんな話あった?」


 「いや、最初からあの席空いてたような……」




 




 そんな会話が一瞬だけ交わされて、すぐに忘れられた。




 まるで、そこに“誰かがいた記憶”が、最初からなかったかのように。




 




 その日の放課後。


 校舎の裏、ちょうど坂が始まるあたりで風鈴がひとつ、風もないのに揺れた。


 音は、からん、と一度だけ鳴り、すぐに静かになった。




 




 その音に気づいた生徒が、一人、立ち止まった。


 スマホを見ていた手を止めて、振り返る。




 




 ──誰かが、自分を呼んだ気がした。




 




 でも、そこには誰もいなかった。


 風も、影も、名前も。




 




 その生徒は首を傾げてから、何も言わずに歩き出した。




 




 




 そして、誰ももう──




 「早瀬まどか」という名前を、口にすることはなかった。




 



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