第四章 ハジメとミーコウ 3
ハジメはミーコウと一緒に、ゼロマルに乗り込んだ。
「ゼロマル、動けるか?」
「動力系統、電気系統、全て異状なし。航海に支障は無い」
ゼロマルと会話しているハジメの肩を、ミーコウが叩いた。
「ねえ、ハジメ。誰と話してるの?」
「ミーコウには聞こえないんだったな。おいらは、ゼロマルと話してるんだ。テレパシーを使ってな」
テレパシーと聞いて、ミーコウは驚いた。
「そうか、この帽子でゼロマルと話してるのね。だから、ヘルメットがケインたちには必要なんだ」
初めてケインを見た時、誰と会話しているか判らなかったが、これで納得した。ケインは、潜水艦と会話していたのだ。
「どうだミーコウ。キャプテン・サンダーがテレパシーで魔女と会話したのは、本当の話だったろう」
ミーコウは、ハジメの言葉に呆れた。
「あなた、それが言いたくって、ゼロマルがテレパシーを使えるのを今まで黙ってたんでしょう。ハジメ、テレパシーが本当にあったからって、魔女もいるとは限らないじゃない」
「いるさ。きっとおいらも魔女に会ってみせる」
ハジメは、自信を持って答えた。そして、潜望鏡を覗いて外を見た。
「ゼロマル、マシンガンを出せ」
ハジメの命令で、ゼロマルの艦首からマシンガンが出現した。ツヴァイバッハの兵士がうろたえている姿が、潜望鏡に映った。
「ていっ!」
ゼロマルのマシンガンが火を吹いた。威嚇射撃なので弾は一発も当たらなかったが、効果はあった。兵士たちは我先にと逃げ出し、格納庫からはいなくなった。
「サンキュー、ハジメ」
ケインはゼロマルに向かって手を振ると、アイアンホエールへと走り出した。隊長たちも、自分の潜水艦に向かった。
隊長は、マーライガーに搭乗すると通信機のスイッチを入れた。
「こちらマーライガー。全員応答しろ」
「シーコメットのマルコです。無事搭乗しました」
スクリーンに、マルコの姿が映ったのを見て、隊長はうなずいた。
「フィル、ケイン。搭乗したか?」
しかし、隊長への返事も無しにアイアンホエールとニューノヴァは動き出した。
「お前ら! 起動させるのはまだ早い!」
「隊長! あれを見て下さい!」
マルコに言われて隊長が格納庫を見ると、フィルとケインがそこにいた。
「何っ? あいつら、乗っていないのか?」
ハジメからの通信が、隊長の所に来た。
「隊長さん、恐らくあれはツヴァイバッハの潜水艦の特殊能力だ!」
「何だって?」
「あいつは、他の潜水艦を操ることが出来るんだ」
「そうか、だから無人の潜水艦が動き出したのか。うわ!」
マーライガーが、勝手に後退を始めた。
「と、止まれ!」
隊長の命令で、マーライガーは停止した。隊長は、ひたいの冷や汗をぬぐった。
「ふう。搭乗者の命令が優先されるが、気を抜くとマーライガーも操られるのか」
隊長は、マーライガーの入り口を開けた。
「マルコ、俺はケインを収容する。お前はフィルを乗せろ」
フィルは、急いでシーコメットに向かって走った。しかし、ケインはアイアンホエールに向かって走った。
「やめろ、ケイン! 無茶だっ!」
隊長が叫んだが、ケインは止まらなかった。ケインは、さん橋から勢いをつけて跳んだ。しかし、アイアンホエールには全然届かなかった。
「ケイン! ステップだ!」
ハジメはゼロマルの腕を出して、ケインの前に突き出した。ゼロマルの腕に着地したケインは、両足で踏み切って跳んだ。
「アイアンホエール! ハッチを開けろっ!」
ケインは、空中で命令した。アイアンホエールの入り口が開き、ケインはそこに飛び込んだ。入り口が閉まると、アイアンホエールの動きが停止した。
「こちらアイアンホエール。無事取り戻しました」
スクリーンに映ったケインの顔を見て、ハジメとミーコウは互いの手を叩いてはしゃいだ。
「やったなケイン!」
ハジメとケインは、親指を上げた拳を突き出し合って笑った。
「全く、冷や冷やさせやがって」
隊長は、そう言いながらもケインの思い切った行動に内心感心していた。
「つい、こないだまではケインはああゆう奴では無かったのにな」
ケインが変わったのは、やはりハジメのおかげだろうと隊長は思った。
「あの小僧、じゃなかった、女の子には他人にはない何かがある」
隊長は、ハジメに感謝したくなった。
ゼロマルが、ハジメに話し掛けた。
「ハジメ、ケインは助かったのだな」
「ああ、ゼロマルのおかげさ」
「そうか。私はケインを助けたのだな」
「そうだよ、ゼロマルが助けたんだ」
「これが、助けるとゆうことなのか」
「助けるってこと、ゼロマルにも判ったんだ。良かったな」
ハジメは、にっこりと笑った。そこへゼロマルが、ハジメに危機を伝えた。
「右舷の潜水艦が、魚雷の発射準備に入った」
スクリーンを見ると、確かにニューノヴァがこっちに向いている。ハジメは、慌ててケインに連絡を取った。
「ああ、判っている。僕からもよく見える」
「なあ、隊長さん。ニューノヴァを壊しちゃっても、いいかな?」
ハジメに尋ねられて、隊長は悩んだ。このままだと、ハジメがやられてしまうが、古代文明の潜水艦は惜しかった。だが、隊長には考えている時間は無かった。
「ハジメ、ニューノヴァへの攻撃を認める」
「た、隊長」
フィルは何か言いたそうだったが、隊長の気持ちを察してか、それ以上は言わなかった。
「フィル……」
隊長はうつむきながら、心の中ですまないと思った。
ハジメは、マシンガンの標準をニューノヴァに向けた。
「当たれ!」
魚雷が発射される瞬間に、マシンガンが艦首に命中した。弾丸が魚雷に命中し、ニューノヴァの直前で大爆発を起こした。爆発に巻き込まれたニューノヴァは、大破した。
「あーーー」
ニューノヴァの最期を見て、フィルは言葉が出なかった。




