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第三章 ハジメとツヴァイバッハ 5

「う、うーん」

「どうやら、目を覚ましたようだな」

 ケインが目覚めた時、横には隊長が立っていた。

「た、隊長?」

 一気に目がさえたケインは、背筋を伸ばして立ち上がった。

「隊長、無事だったんですね」

「無事じゃない!」

 隊長は、ケイン頭を小突いた。

「お前まで捕まってどうする!」

 隊長の言葉を聞いたケインは、自分が今いる場所が牢屋だと気が付いた。壁は剥き出しのコンクリート、照明は裸電球一つだけ、窓はなく鉄製の扉に小窓がついているだけの粗末な牢屋だった。

 隊長がヘルメットをかぶっていないのを見て、ケインは自分もヘルメットがないことに気付いた。多分、敵に取り上げられたのだろうとケインは思った。

「隊長、フィルさんたちはどうしたんですか?」

「二人は、どこか別の牢屋にいる。もう二日もここから出られないから、それ以上は判らない」

 隊長の言葉に、ケインは驚いた。

「二日? 僕は一体何日寝ていたんですか?」

「ほんの一晩だ。そんなに長く寝てないぞ」

 もし、隊長の言う通りなら、腑に落ちないことがあった。

「それじゃあ、隊長は昨日はマーライガーに乗っていないのですね? 実は昨日、僕とハジメが……」

「ハジメだと? お前、あいつを連れて来たのか?」

 隊長は、ケインの胸倉をつかんだ。

「す、すみません。他に頼れる相手がいなかたんです」

 隊長が手を離すと、ケインは床に倒れた。

「ハジメについては、今はどうしようもない。まずはお前の話を聞こう」

 昨日あったことを、ケインは隊長に話し出した。アイアンホエールがマーライガーに襲われた話を聞いた隊長は、自分の考えをケインに話した。

「どうやら、俺達の最も恐れていたことがまた一つ現実になったようだな」

「最も恐れていた? まさか、搭乗者の登録変更ですか?」

 確かに、それが出来なければケインをアイアンホエールから運び出すのは不可能だった。そしてそれは、敵が古代文明の研究でノヴァに先んじていることを意味していた。

「すると、敵の正体はトライランドかツヴァイバッハですか?」

「ああ。ここはツヴァイバッハの秘密基地だ。一番嫌な相手に潜水艦を奪われてしまった」

 工業技術でツヴァイバッハに一歩遅れているノヴァは、これによって更に水を開けられるかもしれなかった。

「それにしても、ハジメは一体どうなったんだろう?」

 あの状況では、ハジメもツヴァイバッハに捕まった可能性が高かった。ケインは、自分のせいで巻き込まれたハジメを心配した。


 ベッドの上で眠っていたハジメは、誰かに体を揺すられた。

「ハジメ、ハジメってば」

「うーーん」

 ハジメは、うっすらと目を開けた。よく見ると、それはミーコウだった。

「わっミーコウっ!」

 ハジメは、ベッドから跳ね起きた。その時はおっているシーツの先を踏んでしまい、ハジメは転倒してしまった。

「いたたた」

 おでこを押さえたハジメは、自分が帽子をかぶっていないことに気付いた。

「あっ! おいらの帽子が無い!」

「そんなの、この牢屋に来た時から無かったわよ」

「牢屋だって?」

 びっくりしたハジメは、部屋を見回した。

 屋根のあるベッド、金色に輝くシャンデリア、絹のシーツがかぶせてあるテーブル。狭いことと窓が無いことを除けば、ハジメのいる部屋は牢屋には見えなかった。

「ここはね、ツヴァイバッハの秘密基地よ」

「秘密基地?」

「そうよ。あたしはね、あいつらにさらわれて来たのよ」

 ミーコウは、この一週間に何があったのかハジメに話し出した。


 ハジメがゼロマルで旅立った次の日、ミーコウは車で学校に向かう途中で大型トラックに襲われた。トラックの体当たりで車は横転し、ミーコウと運転手が車から出た所をツヴァイバッハの特殊部隊が取り囲んだ。運転手は殴り倒され、ミーコウは力ずくでトラックに連れ込まれてしまった。

 トラックの中でミーコウは薬をかがされて眠ってしまい、目が覚めた時ミーコウはツヴァイバッハの秘密基地にいたのだ。

 基地の格納庫にミーコウは連れてこられた。そこには、ハジメやケインが乗っていたのによく似ている潜水艦があった。

 ミーコウを取り囲んでいる兵士たちの中から、リーダー格の男が歩み出た。

 ツヴァイバッハ特殊部隊の黒い軍服を着ている男は、二十代前半の外見に金色の長髪をなびかせていた。

「君は、あの潜水艦が動き出した所を見たんだね? さあ、起動方法を教えるんだ」

 ツヴァイバッハの情報網は、ミーコウがゼロマルの起動を目撃していたことをつかんでいたのだ。

「どうした、早く言いたまえ」

 男は、高圧的な態度でミーコウに命令した。


「それで、あたしは潜水艦に名前をつければ動くことを教えたのよ。正確には、船体に接触しながら名前をつけるそうだけど。そうしたら今度は機密を漏らさないためとか言って、あたしをここに閉じこめたのよ」

 ミーコウの話を聞いたハジメは、ショックを受けた。ハジメは、ミーコウに向かって頭を下げた。

「ごめん! おいらのせいだ」 そんなハジメに、ミーコウは優しく声をかけた。

「頭を上げなさい、ハジメ。あなたのせいじゃないわよ」

「でも、おいらミーコウ泣かしたし、おいらがゼロマル動かさなきゃミーコウ捕まらなかったし、それからそれから……。とにかく、ごめんっ」

 ハジメが泣き出しそうな顔になっているのを見て、ミーコウはハジメを抱きしめた。

「ハジメは、優しいね。あたし、嬉しいの。またハジメに会えて」

「ミーコウ……」

 ハジメも、ミーコウの背中に手を回して抱きしめた。

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