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第三章 ハジメとツヴァイバッハ 1

 ハジメがノヴァ海軍の秘密基地に捕らえられてから、一週間が経過していた。しかし、ノヴァ海軍はハジメをどうするか、まだ決定していなかった。今の所ハジメはおとなしくしていたので、結論を急がなかったのだ。

 『偏西風』の隊員たちはノヴァ軍人であり、ハジメだけに関っているわけにはいかなかった。もっとも、『偏西風』は秘密基地に所属する秘密部隊だから、その任務は通常の軍隊より範囲が制限されていたのだが。

 今日の『偏西風』は、軍事演習として模擬戦を行っていた。ハジメに翻弄された反省から、今回は四隻全てが演習に参加していた。

 隊長の潜水艦をマルコ、フィル、ケインの三人で追い詰めるのが、今回の演習の内容だった。

 追う側の三隻は特殊能力を使わず、特殊能力を解除出来ないマーライガーは信号を発しながら逃げていた。

「あれ? 何か来る」

 演習をしていた海域に侵入して来た船に最初に気付いたのは、フィルだった。

 演習を行っている海域は、元々軍用で民間の船は入れない場所だった。しかも、『偏西風』の演習中は、軍艦も入ってこないはずだった。

「隊長、どうします?」

「全員、エンジンと超音波レーダーを止めて、海底で停止しろ。基地から巡視船を出して、追い払ってもらう」

 隊長がそう言うと、マーライガーからの信号もとぎれてしまった。ケインたちの三隻も隊長の指示に従って停止した。

 基地と連絡をとった隊長が通信を切ると、全てが沈黙した海底で隊長の潜水艦だけが海上の様子をうかがっていた。

「一体、どこの船なんだ?」

 そう思いながら、隊長はレーダーを見ていた。その時、突然侵入者が攻撃して巡視船が破壊された。

「敵だ!」

 そう悟った隊長は、ただちに隊員達に命令を飛ばした。

「演習は中止だ。全員、急いでその場を離れるんだ」

 四隻の潜水艦は、急発進した。


 その頃ハジメは、牢屋にいた。

「なんだなんだ?」

 慌ただしくなった基地の様子で、ハジメにも異常事態が来たことが判った。


 ニューノヴァを真上に向けたフィルは、敵の動きに注意していた。

 まだ、スクリーンに敵の姿は映っていない。潜望鏡に内蔵されているレーダーだけが頼りだった。そのレーダーが映していた敵影が、水中に潜った。敵の動きに驚いたフィルが、隊長に連絡した。

「敵も、潜水艦です!」

 フィルは、船体を水平に直した。敵を追おうとした時、突然レーダーが白一色になり、スクリーンも真っ白になった。

「一体どうしたんだ?」

 フィルがそう思った瞬間、ニューノヴァが揺れた。揺れは小刻みで、それでいて力強かった。

「うわあっ!」

「どうしたフィルっ?」

 ノイズに音声がかき消されて、隊長とフィルの交信が途切れた。続いて、隊長たちの船内のスクリーンが全面真っ白になった。

「な、何が起き……」

 ケインが言い終える前に三隻の潜水艦を衝撃が襲い、船体が揺れた。

「うわあっ!」

 ケインは、アイアンホエールのコントロールが出来なくなり、隊長達と連絡をとりたかったがそれすらもかなわなかった。

 小刻みで強力な揺れは、数秒間続いた。揺れが収まった後、スクリーンは再び海底を映した。今の揺れのせいか、船体がきしんで不気味な音をたてていた。

「一体、何だったんだ?」

 呆然とするケインに、隊長からの通信が入った。

「間違いない。敵の正体は、古代文明の潜水艦だ」

 隊長の言葉は、ケインがもっとも恐れていたものだった。

「起動方法を、他の国も突き止めたとゆうのですか?」

 一体どこの国の潜水艦なのか、トライランドかそれともツヴァイバッハ?

 ケインは、背筋が寒くなった。

「マルコ、ケイン、ここは一旦退くぞ」

 隊長の言葉に、マルコが反発した。

「逃げるんですか、隊長!」

「今回は、ハジメの時とは違うんだ。敵の能力も全く判らない。今の揺れも、敵の仕業なのかどうか見当もつかないんだぞ」

「しかし、フィルを放っては行けません!」

 シーコメットは、全速力で発進した。

「ケイン、俺はマルコを追う。お前は、基地に帰れ」

 隊長のマーライガーが、動き出した。

「隊長、僕も行きます」

「駄目だ! アイアンホエールの能力は、海上から敵を攻撃するための物だ。水中戦は、アイアンホエールの能力が半減してしまう」

 隊長はそう言って、ケインを制した。

「しかし、隊長……」

 ケインが隊長に何か言おうとした時、再び衝撃に襲われて船体が揺れ出した。

「隊長ーっ!」

 ケインの叫びは、短かった。今度の揺れはケインの全身を震えさせた。ケインは、体中がしびれて気絶してしまった。


 ケインが目覚めたのは、数時間後だった。海底に横たわったアイアンホエールの中は、照明が消えて暗闇が支配していた。

「どうした、アイアンホエール?」

「現在、全機能の三割が停止しています。早急な修理を必要とします」

 スクリーンは消えていたが、レーダーと通信機は生きていた。ケインは、隊長達に呼び掛けた。

「隊長、どこにいるんですか? フィル、マルコ、返事をして下さい」

 しかし、返事は全く帰って来なかった。レーダーにも、潜水艦らしき姿は見えなかった。

「隊長ーっ!」

 ケインの悲痛な叫びだけが、船内にこだましていた。

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