遭難したんですか?そうなんですよ
青い空に青い海そして白い砂浜!背後には南国風の森
まさしく絶景だ。
遭難していなければだが。
彼の名前は佐藤和也女顔のごく普通の男子高校1年生だ。
電車に乗って高校へ向かう途中寝ていたが、起きたら訳の分からない砂浜にカッターシャツ姿で横たわっていた。
全く意味がわからない!そもそも遭難なのか?夢ではないのか?。
地団駄を踏みながら頭を抱えて苦悶する。
夢ではなかろうか?と拳で顔面を殴打した。
が顔を殴れば当然痛い。
どうやら現実であった。
しばらく途方にくれていたがズボンのポケットに茶色い封筒があるのに気づいた。
「よかった!何か分かるかもしれない!」
嬉しさのあまり1人で大声で喜んだのもつかの間であった、内容のとんでもなさに驚愕した。
(拝啓 転生者へ)
私は神である!この度手違いにより、列車事故にで君は死んだのだ!これは事実である。
本来は輪廻転生を行い人やその他動物へ生まれ変わるが、今回は我々の不手際であるのでこの度能力を付与し異世界で人生を続行してもらう事になった。
この世界は魔法などの諸君の世界で言うファンタジー的世界なのだ!常人では生きられない、能力を使いたい時はイメージをしなさい、君の能力は《フリーマーケット》だ。
生きろ!諦めるな!。
「いや諦めるかよ!てかフリーマーケットってなんだよ?アレか?メ◯◯リ的なフリマアプリの事なのか?」
彼の友達がよく利用していたので知っていた。
「うわっ!」
目の前には半透明な板のような横長のタブレット端末のような物が浮かんでいた。
様々な品が表示されて0円という表示が左下にあった
「これの事か?しかし今の所持金は0円という事か?まぁしかし色々あるな?」
横に商品を流しながら見て行くと興味深いものが売っていた。
「流木が売っているな売れるのか?そもそも」
値段は三百円だが実態はただの木である。
不思議であったが食品も売っていたので買うべく、その辺に砂まみれで転がっていた、漂着物の貝殻や木を売りに出した、彼は現代っ子であるので初めての機械を使いこなすなど造作もない。
「貝殻5枚を300円っと」
そこら辺にある物を金銭で渡すのは理解し難いが他の商品を基準に値段をつけていく。
その時であった、貝殻が消えていたのだ。
ふとタブレット端末に目をやると所持金が300円と表示されていた。
「さて 何を買おうか?腹が減ったな」
ここで目が覚めて1時間ほどだろうか。
漂着物を集めた働きと若さもあり空腹であった。
[焼き鳥缶詰 2つ300円 プルトップタイプ]
僥倖である、つい先程貝殻が売れたのだ。
「やった!死なずに済む!」
購入をタップし暫したつとパラパラと何処からか粉が集まりやがて固まって缶詰になった。
「やっぱりここは元の世界じゃないんだな明らかにファンタジーだし」
封筒の件もありドッキリか何かだとどこかで思っていたが現実でありドッキリではなかった。
「戻れないなら暮らすしかないのか?てか今は何時なんだ?」
現在時刻は不明だが太陽の位置から察するに12時ほどと理解した。
「ヤバいな、どこかにシェルターを作らないと!」
彼の家はクソのつくほどのド田舎でイノシシがよく出没していたのだがそれより気になる事があった。
「ゴブリンみたいな化け物に襲われたら大変だ武器も要るな!」
急ぎ金策をすべく辺りの漂着物を撮影しては値段をつけていく。
彼が狙うはテントとナタや斧等の武器である。
ちなみに日本刀や火縄銃はそもそもレプリカしかなかった。
辺りの物に値段をつけてしばらく果物や貝を探していたがどんどんと日が落ちていく。
砂浜に帰って確認してみると所持金は3万円ほどになっていた。
「よし、これなら足りるはずだ」
こうして1万円はテントに、1万4千円はナタに使い残りで食糧の缶詰と日記をつけるべくノートと鉛筆と消しゴムを買った。
「ここから先どうしていこうか?」
テントを立ててる最中に稼いだ金で買ったライターと麻縄で火をつけて起こした焚き火の前で座り込んで途方にくれた。
「ここがどこでそもそも人がいるかも分からない、それにもう周りには売れそうな流木や貝殻はもうないどうにか手を打たないとこのままでは飢え死にだ」
陽が完全に沈むまでの間にナタで枯れ木を切りながらオレンジ色に染まる海を見ていた。
その日彼は缶詰で腹を膨らませると早々に寝た。
「朝か、現実なんだな」
ナイロン製のテントの中で目を覚ました。
寝心地はお世辞にも良くはなかったが昨日の作業の疲れは少しはマシになった。
「今日は海岸沿いを移動しよう」
最早この場所での生活は不可能であったので移動を決めたが他に人がいるかもしれない事に賭けた。
外に出ると朝が上り始めていた、現在時刻は6時だろう。
「朝食にしよう、それから片付けよう」
バナナを4本食べ終えると早々にテントと食糧等を付属品の袋に収納し、残りの薪は売りに出した。
「さて行くか」
袋を肩にナタを腰のベルトに挿すと砂浜を歩き始めた。
どこまで行ってもヤシの木と青いビーチと白い砂浜、景色に変化がまるでない、こうして6時間歩き続けた。
目の前に岩場が現れた、巨大な岩山であった。
30メートルほど岩場を岩壁沿いに進むと裏側が見えた。
「あれは山じゃないか、登れば周りの民家が分かるかも」
思い立ったらすぐに動いた、駆け足で走って行く。
茂みをナタで切り開き前へ前へと進み行く。
山とは言え実質丘のようなものである、頂上は直ぐに着いたが。
「人家の一つも見えないなクソが」
木の上から下を見れば一面の森と夕焼けに染まる水平線の海しか見れないのだからその落胆ぶりは半端なものではなかった。
「ともかく無人島から脱出すべき事は確実だな、方法を考えないと」
その日は丘の頂上でテントを張り寝ることにした。
次の日の事であった
テント辺りに成っていた赤いリンゴのような謎の実を食べたのちテントから這い出て海を見た。
「帆船だ!それもクソデカいじゃないか!戦列艦か?」
山の上から見下ろすと昨日は影も形もなかったはずの巨大な木造帆船が停泊しているではないか。
「こうしちゃ居られない!荷物をまとめないと!」
いつ出航するか分からない以上救助を求めるべく大急ぎで荷物をまとめて丘を駆け下りる。
「早く行かないと…!」
走る 走る 足を動かし腕は木切れやトゲで擦り切れ血がにじみ出る、呼吸は荒れ肺が痛い。
「おーい!助けてくれー!」
実際には10分程であったが1時間にも感じた。
呼吸が荒れ返事も辛い中希望の声がする!。
「人だ!、おーい」
人影が見える!助かった!。
安堵したのも束の間力が入らない、砂浜へ倒れ込んだ
「おい!大丈夫か?」
目がかすみ気が遠くなってゆく。
「船医を呼べ!早くしろ!遭難者だ!」
何者かに抱き抱えられる
「船医殿!早く来て下さい!こっちです!」
「待ってくれ、老体を走らせるなど非情だな」
「おい!しっかりしろ!目をあけろ!」
「顔色がおかしいです、毒のある物を食べたのかも」
声を聞きながら赤い木の実が怪しいと思ったが伝える間もなく意識を失った。