明日なき世界
こんな世界でどう生きれば良いんだ。
死なない事が、良いことでは無い。
終わりなき世界に救いなど無い。
20XX年一人の男が禁忌を犯し、世界は衰退(変化)した。
人類は、終わりを失った。
人類が不老不死を得てから数千年、技術の進歩は凄まじく10世紀程進んだと言われてる。
進んだ技術のお陰で今や、世界の幸福度は9割を超えていて、全人類の幸福度100%は時間の問題となっていた。
とまあ‥ここまでは、表向きの話。
実際の所は、どんなに頑張った所で幸福度が100%になる事は無い。
なんでかって?
当たり前の話だが、俺を含め残りの1割は今の人類の状態に対して良い感じと思えてねぇ。
確かに、今の人類は大きく成長したんだろうだが、精神面は衰退したと俺は感じている。
特にそう感じたのは、痛みを感じなくなってからだろう。痛みを忘れた人類は他人に対する気遣いを忘れた。
不老不死になる前からそういう奴はいただろうと言うが、そんな奴は少数だったさ。
それが今では、多数を占める様になっちまった。
そんな状況にも関わらず、世界政府は何も対策をしねえ。
挙げ句の果てには、人類はさらなる進化を遂げたと抜かしやがった!
俺はあの宣言の瞬間、世界を信用できなくなった。
丁度、その頃からだったかな。世界にあの薬が蔓延する事になったのは。
不老不死に対して不満を持つ連中は、死(終わり)を求めた。そんな雰囲気が蔓延してるからこそ、そんな薬ができちまったんだろうな。
実際死ぬ事はできないが、その効果は絶大だったよ。
あの痛みを感じた事により、俺は自分が生命を持つ人間だと思い出せたんだ。
だが政府も馬鹿じゃない。
その薬の効果を知るや否や、販売人や製造者達を捕縛しようと警察組織を総動員したのさ。
結果的に言えば、再び俺達はただ存在するだけの者になった。
政府の行動は速かったさ、抵抗する間もなくあっという間に鎮圧された。
俺達の明日(希望)は死んだんだ。
この世界はあの日から、明日を無くした。
こんな世界で俺達はどう存在するべきなんだろうな。