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喋るうさぎと私  作者: ニート女
第一章 毎日三食好き嫌いなく。
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1話

 スマホでセットした目覚ましの大きな音で目を覚ました。窓を開けて大きく鼻から息を吸うと近くに植えられた金木犀の甘い爽やかな香りと朝のひんやりとした空気が鼻腔を通って寝惚けた頭を覚醒させる。


「おはよう、りんちゃん」


 グッと伸びをして、ベッドの横に置かれたケージに向かって声をかけた。

 窓から差し込む太陽光に眩しそうに目をぱちぱちさせながら此方を見つめるのは、3年前から飼い始めた灰色ミニウサギのりんちゃん(メス)である。


 

 母の遺言のひとつ、毎日三食好き嫌いなく食べること。



 朝は母がご飯派だったため、私も自然とご飯派となった。

 つやつや炊きたての真っ白なお米。

 ふわふわで、あつあつで甘くて、マヨネーズとお醤油のかかった目玉焼きとウインナーによくマッチしてべらぼうに美味しくて。

 夜は母が夜勤でいなくて、昼は私が学校に行っていて、顔を合わせることが少なかった私たち。

 家族揃って一緒に食べる唯一のご飯だったからだろうか、なにより「朝ごはん」の時間が大好きだった。

 

 それが一人になった今は、タッパーに入った冷凍の昨日の残ったべちょべちょなご飯をレンチンしたものに納豆をぶち込んだだけのヤケクソ納豆ご飯。

 すみません、お母様。私は開始早々にして貴方との約束を破っています。


 対してケージの中でもぐもぐと口をさせているミニウサギのりんちゃんは高級なスーパープレミアムチモシーと、これまたお高めなペレット。

 飼い主あるあるだよね、ペットの方がいいもん食ってるみたいなことは。

 この後に食器を片付けて洗濯物を干してメイクをしてりんちゃんのお水を替えてなんてやってたらあっという間なので、タッパー納豆ご飯をかっこんで少しでも時間の消費を減らす。


 母が亡くなってから気付いた。家事は殆ど母がやってくれていたから朝ゆっくりできていただけということに。亡くしてからそんな簡単なことにやっと気付くなんて、私はとんだ大馬鹿者だ。



「行ってきます」


 母の写真立てに手を合わせてから、ケージの中にいるりんちゃんに声をかけて家を出る。向かう先は勤務先のうさぎ専門店「ハレノヒ」だ。



 

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