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第零話 オシマイ
悔いばかりの人生だった。
掃いて捨てるほどの失敗や後悔が、ほんの少しあったであろう成功を塗り潰して絶望色に染め上げていた。
小中高と虐められ、優しくされたという理由で恋心を抱いていた少女と死別し、返す宛のない借金を背負い、まさしく人生は詰んだのだ。
いま俺は、手元に残った千円札と小銭を叩いてホームセンターで荒縄を買い、帰る場所も無いため廃ビルに忍び込んでいた。
そこで、この『音無祐希』というクソ人生の幕を下ろそうとしている。
――本当にそれでいいのか?
きっと幻聴だ、ここには誰もいない。
そう自分に言い聞かせ、荒縄で作った輪に首を強く締め上げさせる。
(どうか次の人生では、人並みの人生を送れますように)
居るかもわからない神に、心の中でそう吐き捨てた。