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その猫の

作者: ぼっち。

はじめまして。ぼっち。です。『。』が多くて申し訳ございません。私はよく物書きをしている者なのですが、よく没になったり、納得のいかないものがあるときっぱり書きやめてしまいます。だがしかし、最近ちょいと勿体無いと思い、何か良い方法はないかと考え、考え、考えた末、超ーーーーー短編でもいいから最後まで書き上げようと思いました。あんまり完成度の高いものではありませんが(汗)

定期的に没案の物語を書き上げていきますので、もしよければ目を通していただければ幸いです。

 年に一度の長期休暇ということで、私は栃木県のあるカフェテリアに訪れた。そこは初めて来た店であるのにも拘らず、どこか懐かしさを感じさせる(とてもおしゃれとは言えない、古臭い)店であった。

 曇天の空の中私はそこに赴き、戸を開け店内に入る。戸を開くとチリンと音を立てて、そこは私を迎え入れてくれた。

 店に入るとそれは私を変な気持ちにさせた。決していかがわしいものではない。

私の気持ちを変にさせた正体、それは音楽だった。店内音楽が店の風情を破壊している。なんてふざけた音楽なんだと私は腑に落ちない気分のまま、日当たりの良い席を選び座った。気持ちを整理させるのに少々の時間を要したが、メニュウを凝視し私は颯と頼む品を決め店員を呼んだ。

 店員を呼び出してからしばらく待っていたが、来る気配はなかった。客は人っ子ひとり姿はない、のに忙しいのだろうか。それとも単に私の呼び出しに気がついていないのだろうかと思い、私は厨房付近まで呼びに足を運んだ。呼んでもこず、終いには客に足を運ばせるなんてなんてふざけた店だと私は心の中でプンスカとしていたが、厨房付近、厨房内を見渡しても誰もいないようだ。私は呆れてため息を吐いた。

カフェテリアは静かなイメージはあるが、これはあまりにも静かすぎて少し気味が悪かった。私の耳に届く音は、ふざけた店内音楽と自分の吐いたため息だけだった。

ちょっとこれは困ったなと思いながら私は、元いた席に戻ろうと足を動かすと、カウンターテーブルの端に一匹の猫がいた。

 あまりにも急だったため、私は驚き『うぇ』と声をあげてしまった。我ながら情けない声が出たもんだと恥じ、誰もいない空間を一周見渡した。

そんな不可解な行動をとる私を一瞥し、呆れたように笑ってきたので私は少しイラッとし、何だよもうと猫に向かって吐き捨て、元いた席へと歩いた。途端私は後ろめたさを感じ、猫のいる方へ立ち止まり向き直り、また席へと歩き、向き直り。

私は、あの一瞬心に感じた後ろめたさの正体が何だったのかを考えたが、よく分からなかった。

それより猫に遊ばれているような気がして腹立たしかったので私は元いた席に戻り、乱暴に鞄を持ち上げ、戸を押し開け、来た道を横行闊歩した。振り返ることはしなかったが、最後まで彼女の視線だけは感じ取れた。

 目を覚ますと、私は自分のベッドの上で寝ていたらしい。鮮明に私は昨日の記憶を掘り起こした。気がつくと私の目からは涙が溢れていた。

 バンバンと乱暴に扉を叩き、真希は「早くしなさい」と言い放ち下の階へ降りて行った。

そうか、今日は母の告別式だったね。と思い出すと私は黒のネクタイをキュッと締め、再び昨日の記憶を思い出した。自然と口角は上がっていて、意気揚々と玄関を出た。外は雲ひとつない快晴であり、どこか清々しい気持ちのままセレモニーホールへと足を運んだ。

「きっとあの人はそういう人だ」と呟き、私は今度あのカフェテリアに行こうと心に誓った。


※真希 私の配偶者。妻。


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