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封鎖を探せ

 町中にはどこに視線を向けても黒い蝶が飛び交う。道ゆく人の何倍もの数の黒い羽ばたきが目の前を羽ばたいていた。


 花の神殿に大量に群がる黒蝶が周囲に溢れかえっていた。


「こんな数、どっから湧いてきたんだよ!?」


 しかしながらそんな異常な景色に、ほとんどの人々が気づかない。


 黒蝶は実体のない存在だ。見ることが出来る人は一握り。しかし例え見えていたとしても、魔力で出来た黒蝶に触れられはしないのだ。


 見える視界がほとんど黒で染まる中、花の神殿の前にいる騎士が声を張り上げる。


「神殿から離れろ!」


 近づくなと住民達へ指示する騎士は腕を振り指示を出す。騎士の腕にぶつかる黒蝶はすり抜けて羽ばたいてゆき、あるいは腕に溶けて魔力が染み込む。


「ち」


 騎士は腕に消えた黒蝶を苦い表情でちらりと視線を向けるものの、すぐさま振り切り住民の避難を優先させた。


 住民達は困惑しながらも指示に従い町の外へと駆け足で向かう。


 そんな人々のそばにも黒蝶がひらりと近寄って来ており。


「——」


 俺にとって目に見える距離など、ないに等しい。

 黒蝶に近づき蹴り上げる。

 黒い蝶が魔力となって霧散する。


「きゃ!?」

「うわっ?!」

「悪い! 怪我はないか?」


 ふらつく女性の手を取り、驚く男性がそのまま走り去って行くのをちらりと見送る。


 そして俺はすぐさま花の神殿へと駆けた。


 風が頬を掠める。

 俺が触れた黒蝶は霧散して空気に溶けていった。


 花の神殿の前に立っていた騎士は黒蝶で姿が見えなくなっていた。

 俺は騎士に向かって、いや花の神殿の黒蝶に向かって蹴りを叩き込む。


 その一瞬で黒蝶が一斉に空気に霧散し溶けてゆく。


 大量の黒蝶からその姿をあらわした騎士は開けた周囲に驚いた様子だ。


「……黒蝶が、消えた……?」


 騎士の頬は黒蝶に触れたのか、魔力の色があちこちに現れていた。見えてはいても触れられないから対処が出来なかったのだろう。


 しかし黒蝶を消せたのは騎士の周囲に群がっていた分だけ。


「っ、流石に全部は消せねぇか!」


 いくら黒蝶を消したといえ、花の神殿に群がる黒蝶の数は変わらなかった。


 しかし数は変わらないものの、黒蝶の動きに流れがあると分かった。

 ぐるぐると神殿の周囲を渦巻く黒蝶は上から流れて来ているようだ。花の神殿の上空には黒い黒蝶の群れがまるで一筋の線の様に降りて来ている。


 花の神殿と一筋の線で繋がっているモノは一目瞭然だった。


 それは空に浮かぶ黒い月だ。


「まさか、これだけの黒蝶……月から流れて来ているのか!?」


 神殿に群がる黒蝶を握りつぶし、蹴り飛ばしても焼け石に水でしかない。


 それでも何もしないよりはマシだった。視界を埋める黒蝶を消していた時だ。神殿そのものから僅かな振動を感じた。直後、それは大きな振動となり、神殿に群がる黒蝶が一斉に霧散する。


 するとようやく花の神殿の全貌が明らかになった。


「何だ……神殿の壁が抉れてる……?」


 そして瞬時に神殿の壁に細長い布がひとつ、抉れた壁の上をくるりと巻きつけられた。


 すると、上から流れ降りて来た黒蝶は長細い布を嫌がるようにして上へと戻り、あるいは数匹が四方八方へと逃げていく。


「これは、アールの巻かれた布と同じ?」

「ふむ、ご明察。予備を持っておいて正解だったのう」


 神殿の入り口から一歩出て来たのは先ほど離れたばかりのノヴァだった。


「ノヴァ、無事だったか!」

「いや、ちとまずくてな。そこの抉れた壁は見えるか?」


 ノヴァは手を複雑に組み上げ長い布を握ったまま、花の神殿の壁を示した。


「あそこに封鎖と呼ばれる大きな鎖があったのであるが……見ての通り盗まれておるのだ」

「壁の抉れた場所にあったのか。……今封鎖は何処にある?」


 俺の言葉にノヴァは目を見開いた後、豪快に笑った。


「ノエル殿は中で、余はここで待っておる。封鎖は通常の鎖より大きく、更に触れればすぐにわかる」


 封鎖は黒蝶から神殿を守るものだ、とノヴァは言う。


「了解した」

「必ず見つけて来てくれ。頼んだ」


 どうやら悠長にしている時間はないらしい。ノヴァの握る布には既に魔力の色が付着し始めていた。


 上空から流れ降りる黒蝶を背に俺は町の中へと駆け出した。

3/30(土)の投稿はお休みします。


次回は4/6(土)に投稿予定です!

体調を整えて続きを書きますね( ¨̮ )!

応援よろしくお願いします!!


(追加2)コロナ陽性でした。土曜の7:00は過ぎてしまうかも知れませんが、4/6に出来る限り書いて投稿します。よろしくお願いします。

もう少し待ってください!!!!!

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