花の神殿の姿
「祓いの最中にっ、ギャリエラ様が、倒れたらしい!」
よろよろと立ち止まり、彼は今にも倒れそうな上体を膝に手をつき支えて息をつく。
しん、と静まり返った後、不安が伝播するようにざわめきが広がっていく。
しばらくして、男の後ろからひとり女性がやって来る。不安そうな表情をしながら駆け足で男を追いかけてきていた。男の叫び声を聞きつけてやって来たようだ。
「ねぇ。貴方、さっき神殿付近には近づくなって神殿の騎士さまが言っていたのと関係してい……どうしたの?」
男性は声をかけて来た女性をチラリと見やった。かと思えば、目を開いて喉から小さく悲鳴を上げる。目線の先は女性ではなかった。
彼女のすぐ側だ。視線は彼女の背後から脇腹付近に移っていた。
何が見えたのか、視線を移せば見えたモノがすぐに判明した。
女性の側にひらひらと舞う一匹の黒い蝶。黒蝶が見えたのは彼女がやって来た方向からだ。
それも一匹だけじゃない。男や彼女が歩いて来た方角から更に数匹の黒蝶がひらひらと舞い踊っている。
ほんの少しの時間で徐々に徐々に増えていく黒い蝶。一体どこからやって来たのか。
誰かが空を指差した。
指差す先を仰ぎ見る。神殿のある上空。青く澄んだ綺麗な空だ。いつも見る以上に美しい風景だから、そんな中で出来た黒い染みは非常に目立つのも無理はない。空に黒い染みが出来ていたのだ。まるで黒いインクがじわじわと滲んでいるように見える。
見つめる間も徐々に広がっていく黒い染みに俺はじっと目を凝らす。
すると、小さな染みの集まりが空を黒く染めている。
「まさか、あれは……黒蝶……か?」
小さな黒い集合体。何度も瞬きを繰り返して確認する。するとひとつひとつの動きが羽ばたきをしている事に気づいた。何度も見た事のある動きである。黒蝶が見える人ならすぐ気づく。
しかし周囲に居る人々のほとんどが何も見えていない様子だ。多くが不安そうな表情のまま首を捻り、周囲の様子を伺っていた。
見渡す人々の数人だけが目を見開いて空を見上げている。ある人は驚きの表情で、ある人は恐怖で全身をこおばらせていた。
黒蝶の見えない人々は空を見上げる人の反応で何かあったようだと戸惑っている。
俺は足を動かし、軽い準備運動をしながらアールとスワン、そして雷獣に告げる。
「少し神殿を見に行ってくる。皆待っててくれ」
俺は返事を聞く事なく、足で道を蹴り上げて駆けて行く。
花の神殿の場所がどこにあるのかは確認していない。けれど場所は一目瞭然だった。黒蝶が舞い散って居る場所へと向かえば良いのだ。
心配なのはノヴァが花の神殿の方へと向かって行ったことだ。未だに帰ってこない。
「視界が黒蝶しかいねぇ……!」
徐々に数が増え、町中を埋め尽くしてしまう程だ。
「……っ」
「大丈夫ですか!」
ひと気は無いが、外出している人は数人存在していた。そんな中で、道の真ん中でひとりしゃがみ込んでいる人物も存在していた。
「少し具合が……っ!?」
たどり着いた直後、俺は女性に群がる黒蝶を蹴り散らす。俺の足は光を放ち、黒蝶へとまっすぐ叩き込まれる。すぐに黒蝶が消え、蹲った女性は肩が軽くなったとぽつり呟き、立ち上がる。
「ありがとうございます!」
「花の神殿はこの方角で合ってるか?」
「ええ、この道をずっとまっすぐ進んでいったら着きます」
「助かる。ありがとう」
急いで向かったその先にはとんでもない光景が目に飛び込んで来た。
「何だあれっ……!?」
黒蝶の塊があった。建物ひとつ分を埋め尽くす黒蝶の群れが目の前に現れたのだ。
あまりにも多くの黒蝶で埋め尽くされている為、どんな建物なのか、壁の色すらわからない。
黒蝶の塊の建物付近には騎士が立っており、黒蝶を払いながら周囲に近づくなと告げていた。
それだけで気づいた。
「待て……あれが花の神殿……!?」
町を埋め尽くす程の黒蝶が舞い散っていたのは黒い蝶であった。
いつのまにか、なろうのページ?(なんて言うか分からん)のレイアウト?めちゃ変わってますね!
(投稿ページだけなんかな?)
ともあれ進捗はいつも通りヤバいので頑張ります!
(本業が今忙しめでいつも以上にヤバいです。年度末だしね!)
現在は140字くらいなので、金曜は徹夜の可能性ありますね!
目指せ!土曜投稿(`・ω・´)!




