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月見と神隠し

 一風変わった景色が見える町並み、メイズロータス。

 建物は木造で、その色合いは派手に塗られているものが多いのが特徴的だ。ブルーローズは景色に白と青が多く、ここメイズロータスは赤が多い。


 町の通路は縦横で綺麗に区切られており、ひとつひとつの道が広い。その広い道の両脇には不思議な模様の垂れ幕の旗が幾つも立てられている。


 垂れ幕の隣に立って見た時は、俺の足首から頭の上までと、かなり長さがある。

 頭上には様々な柄の提灯が幾つも連なっており、ひとつひとつが水で満たされているようだ。


 不思議な町並みを見渡しながら、ノヴァの案内でやって来たのは一軒のこじんまりとした喫茶店だ。


 喫茶店店内に入ると、ノヴァと似たような服装の女性店員さんに案内され、入り口から一番遠くの席へと案内される。


 メイズロータスにやって来ているのは、俺とアール、スワン、ノヴァと雷獣だ。


 スワンは席に着くなり店員と何かを伝えている。


 アールはぐるぐる巻きになった本体を椅子の上に置き、鎧の右腕が本体の上に乗って一言。


『狭い』

「はは、すまぬが暫しここで待っておれ」

「あぁ、アールの件は頼んだ」

『出かけるのだな! どこへ向かうのだ?』

「雷獣よ、そちもこの場で待っておれ。この先は余以外は立ち入る事が出来ぬ場所でな。姿を見せただけでも警備の者達に刃を向けられるであろう」

『そ奴らを薙ぎ払えば良いのだな!』

「おい、落ち着けって!」


 興奮したように雷獣は天井近くまで飛び上がりバチバチと雷を鳴らして回る。

 そんな雷獣を見たノヴァは顎に手をやり、考えるような仕草をしてから大きな声で雷獣を呼ぶ。


「ふむ……雷獣よ!」

『む?』


 近くの人々のテーブルの上を散らしながら雷獣は即座に席まで戻ってくる。そんな雷獣へノヴァは手を招く。


「これを預かっておいてくれ」


 ノヴァは顔を隠していた面を外し、雷獣へと手渡した。

 ノヴァがつけている仮面は顔を隠すためのものだと、俺たちに道中言っていたはずだが……


「それってさ、顔を隠すためのものだろ? 預けて良いのか?」

「はは、コレが寧ろ必要になるのでな」


 顔が通行証代わりになるのだとノヴァは片目を閉じて笑って見せた。

 自然な笑みとほんの少しの仕草だけにも関わらず俺はそれを見た瞬間、時が止まったように感じた。


 その途端、近くに座っていた客の数人が持っていたグラスを落として割り、或いは机に額をぶつけた。反応があったのは老若男女問わずだ。


 ……顔パスじゃなくて色仕掛けで通れてしまいそうだ。


「……そのままだと目的地までの道中も騒ぎになるんじゃないか?」

「ふぅむ……認識阻害の魔術を強めておくかの」


 騒ぎの隣では雷獣がいつも以上にバチバチと強めの雷を放っていた。


『儂が着けても良いか!?』


 仮面を受け取った雷獣は大喜びだ。踊るように店内を駆け巡った後、某人間の体の真ん中辺りに仮面を装着した。

 どう見ても腹あたりにしか見えない位置だ。


「そこが顔だったのか?!」

『どこからどう見ても人の顔であろう! それ以外に何に見える!』

「……雷だな」

『人の何をどう見たらそこまでの棒人間になる?』


 アールは呆れた声で椅子の位置を調整している。

 雷獣の返事からして、どうやら人の外見を真似て世間に馴染もうとしているらしい。


「はは、不在の間なら好きに使って構わんよ」


 雷獣の様子を微笑ましそうに見ていたノヴァは行ってくると一言静かに告げて去って行った。




 ノヴァが店の外へ去って行ったのを見届けた後、座ってゆっくりと待つかと席に座って気づいた。何か違和感があるのだ。


「行ったか……ん?」


 すぐに気づいた。この場に居る人の数が足りないのだ。

 先ほど出て行ったノヴァだけじゃない。

 一緒に来ていた筈のスワンが見当たらない。

 さっきまで座って居た筈の椅子には誰も居ない。


「スワンはどこに行ったんだ?」

『ん』


 アールがかちゃかちゃと指を鳴らして指した先は酒樽だ。


「酒樽?」


 テーブルほどの高さの大きな樽がひとつ机の近くに置かれて居た。


 その樽の中から不思議な音が聞こえて来た。


「……ゴ」

「……ご?」


 ごぼり。


 酒樽の中に見覚えのある布が浮いてくる。

 何度見ても、スワンが着ていた服に見える。


 ざぶり、と酒樽の中から顔を出して来たのはスワンだった。


「ぷぅ、良い酒だ」

「……ゆっくりで良い。口から飲まないか?」


 スワンは樽の縁に肘をかけてペロリと唇を舐めて喜んだ。


 それを見て居た近くの席の男二人が俺たちに声をかけてきた。


「良いねぇ。月見はそう来なくちゃなぁ」

「月見?」

「ほら、見てみろ。今日も月がくっきりとよく見える」


 二人の男が仰ぎ見るその空には、大きな黒い月が浮かんでいた。


 町中に縦横無尽にかけられた提灯の隙間から、隠れる事なくはっきりとその姿を浮かび上がる。日中は空が明るいから、まるで空に大きな穴が空いているようだ。

 空に浮かぶ穴の様な黒い月は縁をよくよく見れば黒い粒が群がって動き回っている。その動く黒い粒は月から6つの線を作り出して空を6等分にして地上まで伸びている。そのうちの一筋はこの町の近くにあるようだ。場所はノヴァが向かった方向に近いようだ。


「今日も相変わらずのお月さんだ。大きくも小さくもなんねぇ」

「飲み過ぎだろ。上ばっか見て、次に神隠しにあっても知らねぇぞ」

「俺だったら、すぐに歩いて帰って戻って来てやるよ」


 二人の男はすでに出来上がっているようで酒で顔を赤らめ、ジョッキの中身を煽って、お互いが豪快に笑いあっていた。


「お前さんも気をつけろよ」

「神隠しって何かあったのか?」

「ここ数年の事さ。月見中に人が消えてるってこの町じゃ大騒ぎになってな。まるで神隠しだ」

「1度目は消えてもある日突然ふらっと戻って来るんだ」


 行方不明者は足元がおぼつかない状態でひとり歩いて帰って来るらしい。


「でもな、みーんな口を揃えて"覚えてない"って言うんだよ」

「覚えてない? 歩いて帰って来たんだろ?」

「それが夢うつつってやつなんだよ」


 神隠しから帰って来た者たちは、ふらふらで目を開いているが意識は無い。直後に聞き取りをしても、どうやって帰って来たのか分からない。その上神隠しにあった事すら覚えていない。


「こないだ帰ってきた奴は町の外で座り込んでたぜ」

「でもなぁ、帰ってくるだけだったら良かったんだが……帰って来た奴らの様子がおかしいんだよ。働き盛りの若い奴が随分と歳を取っていたりな」

「そうそう、健康が取り柄だって体力自慢してた奴が神隠しにあったはな、帰って体調が悪いってずーっと顔を真っ青にしてたぜ。今じゃ寝たきりだって噂だ」

「それって真逆じゃないか、居なくなった間に何かあったんだろ?」

「それが不思議な事に、調べても何ひとつ出て来ないんだってよ」


 魔術を使用して体調の悪い原因を調べても何も出て来ないのだという。


「原因が分からないのは厄介だな。そうだ、さっき一度目だとか言ってなかったか?」

「あぁ、一度神隠しにあった奴は二度目もあるんだよ……ただし」

「ただし?」


 男はジョッキの酒を一気に飲み干して告げた。


「二度目は確実に帰って来ない」


 苦い顔を誤魔化すようにして。

予告書いてなかったですね!?!?


徹夜です!

頑張って書きますね!


既に若干寝落ち気味ですが!!!!

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