共に作り上げる
ブルーローズのまんじゅう屋から浮島の修理場へ、俺は爆速で移動して修理場の一室に飛び込む。
そこには散らかった部品やらを片付け中のイースと、怠そうに寝ているアールだけだった。ノヴァは居ないので、またどこかに散歩に行ったのだろうか。
そして、テスさんの姿もどこにも無い。
「っ!? もう帰ったのか?!」
「ついさっきな。ゴーランと帰ったで」
「ぐ、間に合わなかったか……!」
ついさっきか。悔しすぎる。
まんじゅう持ち帰り24個入りセットを渡そうと思って急いで準備したのに。
まんじゅう入り持ち帰りの箱は、空気が湿気っていたせいか、それともまんじゅうが温かいせいか、少したわんでいた。中身は……うん、美味い。
「アールも来てたんだな」
「おう、ちょっとナ」
「そこの求人広告のチラシとペン渡しとったで」
「求人広告?」
君も浮島の運航の担い手になろう!
デカデカと書かれたシンプルな文字とデフォルメされたドラゴンが火を吹いてレンチを持っているイラストが描かれている。
アールは何故これをテスさんに??
「ボクが渡したのは宇宙一貴重な注文書ダ」
「これが注文書?」
「えぇ……アールさんサラッと嘘つくやん」
デフォルメのドラゴンはかっこいい。それだけの裏が白い広告だった。
うぅむ、どう見ても注文書ではない。アールの発言だから嘘じゃないだろうし、アールの救世主としての仕事だろうか?
「まぁいいや。テスさんの様子はどうだった?」
「最初に比べたら随分落ちついとったで。スクラップ場におった他のアンドロイドを気にしとったな」
「……そっか」
一緒にいたアンドロイド達は家族か友人か、親しい間柄なのだろう。
「本当に騎士に言わなくて良かったのかな。あんなにぐしゃぐしゃにされた原因とかあるだろ?」
「まぁ本人が言わんといてくれ言うてんねんやったら——」
「ヤメロ」
アールが俺たちをジロリと睨んでいた。
「絶対に言うなヨ」
釘を刺すような強い口調に驚く。
「えっと、何で?」
「テス本人に聞ケ」
「言いにくい事なのか」
テス本人はちょうどついさっき帰ったところだ。次に会う時はレース会場でライバルとしてだろう。
イースに心当たりは無いかと目配せするが、イースは首を横に振っていた。
「何やろ? アンドロイド特有の理由なら僕は知らんねん」
「そっか。でも意外だな。イースは包丁作って売ってたりするから、アンドロイドと関わり多いだろ?」
「会うアンドロイド全員に毎回、共作頼まれてみ。逃げて隠れたくなるで」
「イースは共作するのは駄目なのか?」
「アンドロイドとの後継機の共作は何十年と拘束される事になるんや。要するに子孫作ろうや、って誘いやからな」
「そんな意味があったのか。……え、じゃあ俺とグラフォの防具作りは……」
「それは無関係やで」
俺のグラフォの防具作りは問題ないらしい。
あ、そういえばビルノアの片翼はテスさんが帰ってきたので、任せられる。
えっと、つまり。イースと俺はグラフォの防具作りとレースの訓練に集中すれば良いということか。
「イース」
「なんや?」
「勝てるモノ作るぞ」
「当たり前やろ」
俺はイースと拳を合わせ、普通に力負けしたのだった。




