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心臓を失ったアンドロイド

 浮遊都市フューシャデイジーの端の方には人があまり立ち寄らないスクラップ場がいくつかある。


 それは何故か。これは浮島のこれまでの歴史と関係しているらしいのだ。


 浮島の地面の下には大きな天空樹の琥珀があり、その琥珀のお陰で浮いている。

 しかし、調節用の魔導具が出来るまでは、たびたび島が傾いてしまっていたりと暮らしていると何かと不便だったらしい。


 もし傾いた島でペンを落としてしまったら? 

 恐らく外まで転がり続けて、最悪は空の下まで落ちてしまうという事なのだろう。無論、転がるのはペンだけではないのだから、それは困る。


 だから昔の人は傾く浮島のバランスを取るために不要な重いモノを置いていた。それで島のバランスを取っていった結果、スクラップ場が出来たらしい。


 という、意外と力技な解決方法だったのだ。


 そして今もこの場には大きくて重そうな金属ゴミが大量に積まれている。


 俺の近くにはゴミを入れる巨大な金属の容器がひっくり返って転がっている。その上にノヴァが立ちキョロキョロと周囲を見渡していた。


「ふむ、中々面白い場所ではないか」


 ノヴァはスクラップ場の写真を取って楽しんでいる。


 実はこのスクラップ場に行く際、イースも興味があるかどうか聞いていたのだ。

 その時、丁度ノヴァが他の浮島の写真を自慢しに戻って来たのである。


 ノヴァはスクラップ場に興味津々で結果、俺とイースとノヴァの三人で来たという訳である。


「ノヴァ、この場所は危ないから気をつけ……」


 ガラガラがっしゃんと金属の崩れる音とイースの悲鳴が聞こえてきた。


「あの様にか?」

「あー……うん。俺ちょっとイースのとこ行ってくる」


 崩れたであろう方向へと駆け足で向かう。

 多分この辺りだったと思うが。


「イース、手は必要かー!」

「いや、ええ! 離れとってくれ!」


 その直後、少し離れた金属の山が崩れる。


 崩れた金属の山から出てきたイースは両腕がドラゴンになっていた。その手には折り曲がってぐしゃぐしゃ金属板がある。


「ええもんみっけた。これでグラフォの翼の鎧つくろか」

「グラフォに鎧?」


 グラフォには鞍があれば良いかと思っていたが。

 ……しかし、ライバルは空の王者であるドラゴン達でもあるのか。


 全て回避することを考えているとはいえ、火の粉が掠ればグラフォの翼が焼けてしまうからな。

 後で魔術で回復出来るものの、負傷はレースでは時間のロスにもなるし、何よりグラフォに怪我をさせたくない。


「鎧……良いな。作るならカッコいいのにしようぜ! あと丈夫で、なるべく軽く出来るか?」


 イースはそのぐしゃぐしゃの金属板をドラゴンの手で挟み合せ、紙の皺を伸ばすかの様に軽々と金属板をまっすぐな板にした。


「鎧の形状を決めて加工した後、肉抜き穴の追加と魔術の陣を刻めば軽くなるはずやで」

「グラフォにあった形を作るって事だな。それじゃあグラフォと……」

「のう、レスト」


 ふわり、とノヴァが空を歩いて降りてくる。


「どうしたんだ?」

「壊れたアンドロイドを見つけたぞ。探しておるのだろう?」

「本当か!?」


 上から写真を撮っていたらたまたま見つけたらしい。

 アールはアンドロイドの頭部があればなんでも良いと言っていたから頭部だと嬉しい。


 しかしそれを使って何をするのかは詳しくは教えてくれなかった。あまりに怪しすぎる。人探しだけだからと言われて一旦納得したものの、人でいうと生首だぞ。回収したら、何をするのかきちんと聞いてから頭部を渡そう。


「故障したアンドロイドのパーツなんてよう見つけれたな。捨てられるなんてほぼ無いやろうに」

「妙な形で捨てられておったのだ。アレは目立つ」

「? 妙な形?」


 見た方が早いとノヴァに連れられる。


 ***


 辿り着いて見た物は。


「……なんだこれ」


 不自然に丸められた壊れたアンドロイド達だ。恐らく四体のアンドロイドが泥団子の様にガッチリと丸く固められていた。


「ドラゴン娘が出てきた時に金属の山を崩したであろう? その影響で他の山も崩れての。中に埋まっていたコレが上から見えたのだ」

「意図的に丸めたみたいやな」

「つまり丸めて山に埋めて隠した……?」

「なんちゅうか……怪しげな匂いがぷんぷんするな」


 イースは固められたアンドロイドをひとつひとつ慎重に外して並べていく。


 頭部だけでなくボディまでもほぼ全て損傷が激しいものばかりだったが、一体だけボディも頭部も比較的綺麗な形を保ったアンドロイドがいた。

 この個体だけ他と比べてボディが頑丈なようだ。


 しかし、動かない理由は見てすぐにわかった。


「……胸が、空いておるぞ。治せぬのか?」


 ノヴァが喉をつっかえながら苦しさを堪えた声を出した。

 そのアンドロイドは胸がぽっかりと空いていたのだ。


 その姿はエクリプスのあの横たわる姿と重なっていたのだった。

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