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浮遊都市フューシャデイジー

 人の流れにのって、俺とイースは転移陣へと進む。これから転移する先は浮遊都市フューシャデイジーだ。


 転移が発動するまでのほんの少しの待機時間、念のために手に持っていた書類を再び確認する。


「これと……これで、よし! 申請書類に抜けは無し! 後は抽選に当たるかどうかだな」

「そこばっかは運よなぁ」

「当選しますように!」


 手で書類を挟み、目を閉じて念じる。

 確か現時点でも倍率はそこそこ高かったはず。

 頼む……まんじゅうがいっぱいいっぱいだからギリギリなんだ……当選しますように。


 ……あ、もし出店出来たら通りすがりのドラゴンとかも見れるだろうか。差し入れのまんじゅうとか出来るんじゃないか?

 撫でさせて貰えたりとか……いやいや、今からそんな邪な事を考えていてはいけない。アールじゃあるまいし。


 そんな事を考えていると、転移陣の魔術が発動したのだろうか。目を閉じていても空気が変わったのを感じた。


 しっとりした潮の匂いから、カラリと乾いた草の香りが鼻をくすぐる。


 目を開く。周囲はドラゴン、ドラゴン、ドラゴンドラゴン。全てがドラゴン。


 施設内は既にレースイベント一色となっていたのだ。


 出入り口にはドラゴンの等身大オブジェクトがお出迎え。


 あちこちにあるお土産屋さんはドラゴンで溢れているのが遠目でも分かるし、飲食店もドラゴンにちなんだ飲食物が販売されていた。


 頭上の垂れ幕には"レース開催まで63日!"とデカデカと表示されている。


 壁にあるパネルにはドラゴンが三、四頭が横並びで我先にと飛ぶ迫力ある写真が映し出されていた。


「ドラゴンが飛んでる写真がいっぱいあるぞ!」

「ドラゴンだらけやな」


 この風景を目に焼き付けるように前も後ろも、上も下も、あちこち観察する。


「そいや、レスト。昨日はあんま乗り気ちゃうかったやん。良かったんか?」

「アールが怪しかっただけだから、大丈夫だ」

「それはそう」


 イースもそれを感じていたのか何度も頷く。


「聞いてもアールが何を企んでるかは分からなかったけどさ。まんじゅう大量消費の良いチャンスだから出店は良い案だろ? 何よりレースも見れるし! ドラゴンがレースするんだぞ! 飛び交うんだぞ!!」

「君ドラゴン好っきゃなぁ……」

「イースも観るだろ? 開催まであと二ヶ月くらいだよな! 今のうちに吹き飛ばされない様に体幹鍛えて……」

「いや、どんだけ近づくつもりやねん!?」


 興奮する気持ちを抑えられない。転移陣の施設に大量に置かれたパンフレットとチラシをとりあえず各種一枚ずつ手に取る。


「ちょ、ちょっとちょっとレスト君? 取りすぎちゃうか?」

「だって全部違うデザインだぞ! ほら!」


 チラシにはドラゴンとその騎士が躍動感溢れる姿で紙に大きく載っている。カッコいい。


「おすすめは第101回目の優勝者と第127回目の優勝者のドラゴンだ……カッコいいだろ」

「あー……うん。どれどれ……ええやん。まぁ僕なら……第118回優勝者のドラゴンが好みやな」

「分かる、良いよな。第118回の優勝ドラゴン種はブレスが一番強い竜種で体格が良いのが特徴だ。このドラゴンは特に手足が太くて他の選手をパワーで押し切ってゴールしたんだ」

「そんなんいつ調べたんよ」


 出店の申請書類を作成している時に調べていた。気づけば朝になっていたのだから時間が経つのは早いものだ。


「……にしても、チラシの写真。えらい撮影上手いんやな」

「あぁ、それぞれ最高のワンショットだよな。特にさ特にさ。この第131回のさ。斜めから撮った写真、最高だよな」

「羽で隠れた胴体内の炎が見えるのがええんやろ?」

「そう! そうなんだよ!!」


 チラシ置き場の前でうっかり話し込んでしまい受付時間が迫ってしまっていたのに日が暮れかけてようやく気づく。


 早くいかないと。出店の申請は何故か今年だけ対面での申請なのだ。


 去年はデバイスからでも申請出来たのに少し不便だ。でも仕方ないか。


 人が多く集まる時に出店したいからな。


「今年は竜騎士だけじゃなくて、冒険者の参加も認められたんだってさ! ドラゴンがいっぱい飛ぶなら観客もいっぱい来るだろうな。ドラゴンはかっこいいし」

「"今年はなんと、勇者パーティーの一人、竜殺しの竜騎士パージュ・テレスが参加! 更に冒険者も参加可能です! ふるってご参加下さい"ね……こりゃ稼ぎ時に違いないわなぁ」


 まんじゅうは美味いから人の多いところで熱々に焼けば……おっと、考えただけで涎が止まらないな。


 俺たちは足早に申請場所へと向かったのだった。

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