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「だってね、綺麗だしかっこいいし。嫉妬かなって思っても気高くて凛々しいのよ。

アンナリセルを階段から落とす時なんて『貴女がいなければみんなが幸せになるわ。地獄にならわたくしも一緒にいってさしあげるわ』って! マジ惚れちゃう! 自分で罪を犯しても女の子たちの心を救おうとするのよ」


 リセルは興奮状態です。


「夕方の大階段で後ろから夕日がステンドグラスの壁を照らして、ベティーネ・メルケルス公爵令嬢をキラキラと輝かせるの。そしてゆっくりと降りてきて『さようなら。あちらでお会いいたしましょうね』って悲しく微笑んで肩を押すのぉぉ!」


 リセルが悶えるように体をブンブンと振ります。


「そ、それって、主人公は大丈夫なんですの?」


「その時一番好感度の高い男の子が偶然下にいて助けてくれるのよ。みんなが平均だったら、メイン攻略対象のダンティルね」


「平均?」


「そ。ハーレムルートはないから平均ならダンティルとゴールインね」


 想像を絶するお話のようですわ。


 わたくしはハタと思い当たることがありました。


「ねえ、リセル。貴女もしかして……。

ち、違うのよ。それが悪いってことではないの。愛にはいろいろな形があるって聞いたことがあるし。

でもね。わたくしには、その、リセルのお気持ちに答えられないっていうか…その…」


「やっだぁ!! 違う違う。あははは。

私だって、恋人や旦那様としてなら男性が好きだよ。

そうねぇ。ベティーネ・メルケルス公爵令嬢に憧れているって表現が近いのかなぁ。

アイドルとか推しとか言ってもわからないよね?」


「わ…かりません…わねぇ……。

と、とにかく、わたくしを恋人にしたいというわけではないということね?」


「うん!! でも、見た目は一番好きっ! その少し釣り上がった緑青の目も、しっとりとした銀髪も、優しげな笑顔も、本当に好きっ!」


「まぁ………」


 今度はわたくしが顔を赤くしてしまいます。


「だけど、今は性格も大好き! これからもお友達でいてね」


「もちろんよ」


 わたくしたちは冷めた紅茶で乾杯をいたしました。


 それから数日。

 わたくしは帰り支度をして廊下へ出ました。鞄を持って玄関へ向かいます。


 玄関前の大階段へ来た時、下からリセルが上ってくるのが見えました。


「リセ………」


 私はハッとして後ろを振り返りました。そこには夕日に照らされたステンドグラスの壁が……。


『強制的に私の知っている出来事が起こることが多いのも事実なの』


 リセルの言葉が頭を巡ります。


 リセルはきっと四人を同じくらいの友達だと思っているはずなのです。そう、平均に。

 ならば、彼は近くにいるのでしょう。


 わたくしはこれまでに無いほど大きな声で叫びました。


「ダン!! 走ってぇ!!!」


 わたくしの声に気がついたリセルが上を向きます。その瞬間、わたくしの後ろから有り得ないほどの風が吹いたのです。


「リセルぅ!!!」


 わたくしは手を伸ばしましたが届くわけもなく、リセルは真っ逆さまに落ちて行きました。


『ドン!』『ドン!』『ドサッ!』


 階段の下で大きな衝突音がしました。


 わたくしはホッとして手摺に体を預けました。


「「いててて……」」


 リセルの下にはダンティル様とエリアウス様がいらっしゃいます。

 ダンティル様がリセルを抱き止め、勢いに負けそうなところをエリアウス様がお支えし、衝撃力を減少させて三人で床へと落ちたのです。

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