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 マジラウル様とカルラッテ様が仲睦まじくなられたのは児童書がきっかけだそうです。わたくしは早速アンナリセル様にそのご本をお借りしてお部屋のソファで読んでおります。


「はぁ。尊いわぁ」


 アンナリセルさまの呟きにわたくしは読んでるご本から目を離し頭を上げました。いったい何が尊いというのでしょうか。


 ……………彼女の視線は…………わたくしに向いておりました。


「いかがいたしましたの?」


「お気になさらないでくださいませ。私、ベティーネ様のご尊顔をこんなに近くで独り占めできているだけで至高の時間なので」


「っ……。そ、そうですのね……」


 アンナリセル様はお茶をしてお帰りになりました。


 こうしてアンナリセル様はいつの間にかダンティル王子殿下とその側近様とその婚約者様とお友達になっていったのです。


〰️ 〰️ 〰️


 そして三年生もすでに三学期、卒業式間近。


 リセルと出会う以前、紳士淑女として弁えたお付き合いをと考えていたことが大きく、エリアウス様とイルザリット様を含めたわたくしたち四組は婚約者同士としてよそよそしかったようです。

 しかし、リセルとお友達になってから婚約者とお話する機会も多くとてもお親しくできるようになりましたの。


 本日のランチもわたくしとカルラとゲルダとリセルの四人でいただいております。


 お食事が済むとカルラとゲルダは図書室へ行かれました。


「あれ? 今日はダンティルたち来ないね?」


 王子殿下のダンティル様に呼び捨てを許可されているご令嬢などリセルだけですわ。

 わたくしは……そのぉ……秘密です。


「本日は男性四人でお話合いがあるらしく、ダンティル様の寮のお部屋にいらしてるわ」


「へぇ。卒業式のサプライズかな? うふふ楽しみだね」


「これもすべて『愛の恵み手』リセルのおかげよ」


「ベティ! その名前止めてよ。本当に恥ずかしい!

私はただ、強制的に巻き込まれるイベントを歪曲解釈させるように動いただけなんだから」


 後半の呟きはあまり聞こえません。リセルは時々俯きながらこうして呪文を唱えているのですが、何度聞き返しても誤魔化すのです。


 わたくしはリセルの手を握りました。


「リセル。お願い。そろそろ教えて。

貴女を振り回し苦しめ悩ませているのは何?」


「ベティ………」


「わたくしは何もできないかもしれないけど、貴女が何でも吐き出せる友人になりたいわ。

でも、貴女を見ていればわかるの。その何かはわたくしに大きく関わることなのね? だから貴女はわたくしには相談できず、一人で頑張ろうとなさるのね?」


「ち! 違うよっ! ベティにはすごく助けられているの。ベティの優しさや心配りが私の空回りを修整してくれるのよ」


 わたくしはリセルを助けられたと思っていないので首を傾げます。


「すっごい馬鹿らしい話、すっごい失礼な話、すっごい信じられない話。

聞く?」


 わたくしは極上と言わしめる笑みを浮かべて頷きました。


「私にはね、前世の記憶があるの。正確には前世で読んだ絵本の内容についての記憶ね。私、たぶん転生者っていうのかな?

ゲームっていう絵本を一生懸命に読んでいる私は黒目黒髪で美人とは言えない顔立ち。自分の顔立ちとその絵本の内容だけ覚えているの」


『てんせいしゃ?』


 わたくしは狼狽えたことを顔に出さず視線を外さず聞き入ります。


「この世界の誰もが必死に生きているのに、私の記憶の絵本の出演者だって失礼な話でしょう?」


「貴女は今、わたくしたちをただの出演者だとは思っていないのではなくて?」


 リセルは泣き笑いのように顔を歪めました。

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