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 ダンティル様とアンナリセル様がわたくしの到着を待っておりました。


「ダンティル様。いかがなさいましたの?」


「私の馬が、彼女に怪我を負わせてしまったかもしれぬのだ。しかし、彼女はこれ以上のエスコートを望まぬようだ。

ここからの付き添いを頼めぬか?」


『王子殿下のエスコートを望んでいらっしゃらない?』


 わたくしは驚きを隠し笑顔を作ります。


「かしこまりましたわ。

アンナリセル様。おみ足は大丈夫ですか?」


 ダンティル様から視線を動かしますと、キラキラした深青の瞳でニッコリと笑っていらっしゃいます。

 なぜかドキドキしてしまい、その視線から逃げるようにダンティル様の反対側から背を支えました。


「ベティーネ様……。わたくしの名前を……」


 これはわたくしの不覚でした。授業も始まっていないクラスメートのお名前を許可なく口にしてしまうなんて。


「まあ、ごめんなさいね。まだ名乗っていないのに。このような状況ですから、赦してくださいね」


「いえ、いえ! わたくし、ベティーネ様に名前を知ってもらえているなんて嬉しくて!」


 アンナリセル様はお怒りではないようでホッといたしました。


「ふふふ、クラスメートではありませんか」


 わたくしはダンティル様の婚約者として、警備のためにクラスメートのお顔とお名前は記憶してございます。お顔も存じあげない方をダンティル様に近づかせるわけにはいきません。


「そうか、クラスメートなのか。では、そなたの荷物とベティの荷物はこちらで運んでおこう。学園への説明もしておくから、無理せず、ゆるりと様子を見て戻ってきてくれ」


「「はい」」


 わたくしとアンナリセル様はダンティル様にお辞儀をして保健室へと向かいました。


〰️ 〰️ 〰️


 保健室で保健師からアンナリセル様にお怪我は無しと診断を受け、教室へ戻ることにいたしました。


「災難でしたわね。でもお怪我なさっていらっしゃらなくて何よりでしたわ」


「本当に災難に会うなんてびっくりですよね。まさか馬車じゃなく馬が襲ってくるなんて」


「え?」


 まるで馬車なら襲われても当然のようなお話ぶりです。


「遅刻しそうな時間だと一人になってしまって馬車に轢かれそうイベントが発生する恐れがあったのでみんなと同じ時間に寮を出たんですよ。まさか私一人を轢くために馬にするとは」


「イベント? ……ダンティル様が馬でいらっしゃることはご存知でしたの?」


 ここは全寮制ですから徒歩通学が当たり前です。


「ダンティル殿下は入学式の報告に昨日王城へ戻っていたのですよね?」


「え? ええ。そうですわ」


 ダンティル様は新入生代表のお言葉もなさいましたし昨日は入学式だけだったことを考えれば、ダンティル様が王城へお戻りになるだろうことは予想できることなのでございましょう。

 わたくしは婚約者でございますので存じておりましたので、どこまで予想ができるものなのかはわかりかねます。


「はぁ。保健室への付き添い。ベティーネ様にしていただいて本当に助かりました。ダンティル殿下にされていたら、授業初日から針の筵ですよ」


「針の?? 何ですの?」


「あ! クラスで居心地が悪くなるってことです。ベティーネ様という素晴らしい婚約者がいらっしゃる殿方と保健室で二人きりになったなんて噂になったら睨まれて当然ですから」


「え? わ、わたくし?」


「はいっ! ベティーネ様に嫉妬のようなツラいお気持ちを持っていただきたくありませんし、ベティーネ様に誤解されるのも嫌ですし、ベティーネ様に嫌われるのは泣きたくなります!」


 アンナリセル様はダンティル様よりわたくしのことを考えてくださっているようです。


「あの……わたくしは理由もなくアンナリセル様を嫌うことはありませんわ」


「本当ですかっ!? よかったぁ。

これからもダンティルとは近寄らないようにしなくちゃ」


 アンナリセル様の呟きは後半は聞き取れませんでしたが、教室に着いてしまいお話は終わってしまいました。


 しかし、空席の状況にびっくりしてしまいました。

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