表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

一応落着ってことで

 鳥肌が立って心臓が跳ね上がった。怖くはない。緊張してるけど頭の何処かは冷静に戦闘の進捗を分析してる。

 剣を取ったリースマンさんは滅茶苦茶強くて、魔法の腕も合わせて隊員達をリードして闘ってた。

(凄いよリースマンさん!かっくいい⁉)

 一人称が「爺」な穏健な人だとは思えなかった。

「リースマン氏は以前から強くて有名な方だぞ」

「へ?」

 素直に感心してるとフー師が言った。

「市議に推薦されたり、高い役職での誘いがあるのに全く応じぬのだ」

 全然知らなかった。肩車してもらったりカードゲームで遊んでもらった記憶ばかりだから、偉そうな役職は結び付かないよ。

「そろそろ行くぞ」

 私はトンファーの握り具合を確かめた。フー師は流星錘を軽く振るった。

「よいか、連中は誰もが暗殺者として無辜の民を殺している。怯んではならん、遠慮もするな。分かったか?」

「はいフー師」

「よろしい」

 フー師の合図で私達は戦場に突入した。


 グリットに華を持たせる為の闘いをしていたら、何処かで蜥蜴人だ、って声が上がった。

「ならば皮膚は硬いな。こんな北に珍しい」

 蜥蜴人は変温っていう特色を残してて北での活動は厳しいんだって。フー師の言葉通り皮膚を硬化させた半蜥蜴人には刃が効かなかった。切り付けられても怪我をせず、剣を振るった方が硬い衝撃に手を押さえて蹲る始末だ。

「トンファーで殴る方が効果がありそうだな。さて」

 蜥蜴人の怪力で飛ばされた隊員をフー師と二人で受け止める。

 奴は数人と組んで女性を守って闘ってた。容貌や体形は人間だけど皮膚が爬虫類の物で、半透明に硬化して美しい緑色してた。

 守られてるのは身体の凸凹の差が大きくて露出度の高い女性で、何となく動き難そうな感さえある。その彼女はまた背の低い、身体の何もかもを大小の円柱で作られたゴーレムを庇ってる。

『あのゴーレムがクリストフォルスだ』

 耳元でダンテさんの声がして、殺意が一気に沸点に達した。

「退がれ⁉私が闘う⁉」

「待たんかネーナ⁉」

 トンファー両手に半蜥蜴人の懐に飛び込んで剣をバカ力で折ったものの、私より数段武術に優れてたから蹴られて吹っ飛ばされた。

「バカ者が⁉だから私と連携しろと言っておるのだ」

 軽くフー師にはたかれた。

「すいません。でもこれ位どうってことないです」

「当然だ。しかし奴の手を潰したのはよくやった」

 それは意識になかった。短時間で治るだろうけど、利き手をやられて得物が持てなくて体術で凌いでる。

(今の内だ⁉)

 フー師には申し訳ないけど身体が勝手に動いた。

「だから勝手に動くなというに!」

 師の言葉は素直に聞いておくものだって実感した。闘い慣れた半蜥蜴人は体術も得意だったんだ。致命傷になりそうな強い蹴りを避けたら、左手で握った剣を突き出されて串刺しにされそうになった。

「バカが⁉」

 オラーツ氏が割って入ってくれなかったら死んでたよね。

 だからってフー師の方に飛ばさんでも。「バカ者⁉」って今度は拳骨喰らっちゃった。

「加勢してくれるんですか?」

 そのままやっちゃって下さいよ、お願いしま~す。

「通りすがりだ」

 素っ気なく行っちゃって、代わりみたいに半蜥蜴人が向かって来た。

 半亜人の撃退は私の仕事だけど、クリストフォルスがいるなら私がぶっ殺したい。誰にも渡したくない。

(冷静になれネーナ)

 今度こそフー師と連携しなきゃ。

 半蜥蜴人の手が治って利き手で剣を振るう。自分のは折られたから、乱戦で落ちた誰かのものだ。

 長めの鎖の流星錘をフー師は巧みに操った。全幅の信頼をおいてたから顔の横を通っても気にならない。接近してトンファーを振るう私に当たることは決してなかった。

 美しい緑色の皮膚は硬くて、産まれて初めて手加減を一切せずに殴れた。相手の動きも早かったから半分も当たらなかったけどね。

 身を沈めて足を蹴ってやったけど、脚が折れるかって激痛が走って後悔した。バカなことしたよ。俊敏な動きがトンファーにはいるのに。

 奴はフッと嗤って隙を見せた私を攻撃しようとしたけど、フー師の流星錘が正確に目を狙って阻まれた。

 渾身の一撃を首筋に叩き込んだけど巧みに力を逃されて威力は半減した。それでもよろけたとこにトンファーの連打を叩き込む。流星錘の鎖が奴の脚に絡んで、フー師だけでなく二人の隊員も力を合わせて奴の脚を掬った。逆らわず転がされて逆に鎖を掴んで振ったんで三人は軽く飛ばされた。

 そのまま逆さまに立ち上がった奴の足が顔面に入った。

「女子の顔にぃ!」

 鼻血出ちゃったじゃないか。もう一度剣を折ってやろうとして失敗。

「ネーナ、使え!」

 リースマンさんが剣を放ってくれる。

 トンファーは失えない。脇に挟んで剣を受取り横に一閃させる。硬かったけど半蜥蜴人を切断させられた。

(クリストフォルス!)

 奴の生死よりクリストフォルスに意識は向かってた。

 半蜥蜴人に手間取ってる間に、ダンビエ先生が凸凹女を捕まえててくれた。先生も壮絶な闘いを繰り広げたんだろう両者共に身体の方々から血を流してた。

 魔法陣の描かれた紙と正確な呪文で円柱ゴーレム=クリストフォルスは女を解放した。

「またか!どうしたってこの閉鎖空間から逃れることは出来ないんだよ」

 そのはずだった。よろける女を私は走ってって捕獲した。ゴーレムに手を伸ばすと大地から小さな塀が現れて阻止される。

「逃げてあなた⁉」

 〔必ず助けるから〕

 閉鎖空間の端にまた別の魔法陣を貼り付ける。呪文を唱えると小さな穴が空いて脱出されてしまった。

「まさか、俺の閉鎖空間が⁉」

 ダンテさんが驚愕してる。

 逃がすまいと幾本もの魔法の《綱》が伸びたけど、奴は転移の魔法陣を取出して消えた。

「畜生――っ」

 女子にあるまじき汚い言葉を叫んじゃった。だって滅茶苦茶悔しくって堪らなかったんだもん。



 一件落着ではある。

「真紅の兄弟団」なんて名乗ってた、アマーリエ講堂の火災の実行犯は殲滅された。首領の女は身重だったけどかなり名のある暗殺魔法師で、ギッティ先生とイスメトとオラーツ氏が生捕りにしたんだ。彼女の口から様々な情報が明るみになるだろう。クリストフォルスは逃がしたけど恋人は捕えられた。

 私としては恋人を囮にしてクリストフォルスを誘き寄せて首を捻じ切ってやりたかった。恋人に隠れ家を吐かせて乗り込んでもいい。そんな少女の儚い願いはどれも叶わなかった。

「私まだやれます!精一杯頑張りますから。ねぇ先生、可愛い教え子のお願い、聞いて?」

 両手を胸の前で組んで精々可愛くしたんだけど、ギッティ先生に効果はなかった。

「色々不足してるねぇ」

 なぬ!

「ネーナ、身体をもっとこうしなッとしならせないと」

 助言してくれたダンテさんはクラリッサに蹴られた。

「もう本当にダンテったら。人んちのお嬢さんに悪い事教えちゃダメ」

 小さくて夜風になびく細くて少ない髪に肉が多めのギッティ先生は柔らかく叱った。イスメトだけが傍にいてオラーツ氏の姿はない。お礼したかったんだけどな。

「お願~い先生、クリストフォルス見つけ出してぶち殺そうよう」

 可愛くお願いする私を、兄ちゃんが複雑そうに見守ってた。

「あ、兄ちゃん怪我無かった?ニクラスも怪我無い?」

「おう、可愛い妹の為に兄ちゃん達は頑張ったぞう」

 そうにこやかに答えてくれたのはニクラスだった。

「どうしたの兄ちゃん?顔色悪いよ。やっぱ兄ちゃん優しいから辛かったんでしょ?私のこと案じてくれるのは嬉しいけど、これからこういうことは私に任せてね」

「ハハハ」

 笑ってくれたけど声が乾いちゃってる。大丈夫かなぁ。だから止めとけって言ったのに!

「捕まえるのは好いけど殺しちゃダメなんだよネーナ。重要な情報が引き出せないからね」

 大きな負傷をした隊員を治癒魔法でダンビエ先生が治してる。完治はさせないで動ける程度にして後は自身の治癒能力に任せるんだ。

「ムム、それを言われちゃった」

 念押しされる前にやっちゃいたかったんだけどな。

「クリストフォルスは暗殺集団の一員じゃないから、本腰入れた追跡はされないだろうね。ダンテの閉鎖空間のお陰で逃亡に成功したのは彼だけなんだから」

 それに対してはダンテさんは大いに不本意そうだった。得意の閉鎖魔法が突破されて、解明の為にもクリストフォルスを捕えたい気持ちは同じだった。

「魔法陣の一部だけしか見えなかったんだ。全部読み取れてたら対抗策も考えられるのに」

 一度見れば覚えちゃう記憶力だもんね。

 どうにか協力してやれないか頑張ったけど、ギッティ先生もダンビエ先生もフー師も許してくれなかった。

「ネーナ、私情を交えるな。これは公式な討伐だ。(わたくし)にしてはならぬ。それより今回の反省をするぞ」

 叱られて、反省会ではフー師の指示に従わなかったことをこってり絞られた。上官の指示に従わない亜人は追放される恐れがあるのをすっかり忘れてた。悪い傾向だ。

「お疲れ様ネーナ」

 記者を連れたグリットとにこやかに労わり合う。感心したことにこの記者達は乱戦の中でもグリットの側を離れなかった。

「お見事でしたネーナさん。討伐を無事終えた心境を語って頂けますか?」

 女性記者に訊ねられた。

「ええぇ心境って言われてもぉ、怖くて無我夢中でぇ、フー師やぁ多くの方々に助けられてぇ、なんとか蜥蜴人を倒せたんですぅ。ありがとうございますぅ。マルガレーテ皇女殿下なんかぁ、すっごく凛々しくてぇ、人間の格が違うっていうかぁ、そういうのビンビン感じちゃいましたぁ」

 何故そんな目で見るグリット。あんたを褒めてんでしょうが。

「これからもこういう捕物への依頼があると思うのですが」

「私なんてぇ足手纏い以外のぉ何物でもないですよぉ。バカ力なだけなんだしぃ」

 暗殺集団討伐で新聞が大賑わいした当日、グリットはわざわざその台詞だけ抜取って、スヴェンとガブリエラの前で私の真似を披露しやがった。

「可愛さが似てないよ、全然足んないグリット!」

「ごめんなさい、私あんなにウザく出来ないの。中々イラッとしたわ」

「何ですと!」

 自分だけ蚊帳の外だったガブリエラはとても腹を立ててた。

「わたくしだけ除け者にして許せませんわ!どうして教えてくれませんでしたのスヴェン」

「答え分かってるでしょ。何が何でも参加しようとするのが目に見えてたからですよ」

「当然でございましてよ」

「ああ!なんて好戦的な女達なんだろう」

 理性的で暴力を好まない、それがスヴェンの好いとこだよ。

「私は違うよスヴェン。亜人がいたから参加させられただけなんだから」

 そこんとこハッキリさせとかないとね。


 校長先生の計らいで新聞はギムナジウムで無料で配られて、みんな一様にホッとしてた。

 ようやく終わったって息を吐けたんだ。ずっと休んでた人達もギムナジウムに戻って来た。


 その日からまた「ありがとう」祭と贈り物攻勢が始まった。

 ギッティ先生達の参加は先生達の要請で報じられなかったから、甘い物をせっせと先生の下に運んだ。

「うわあうわあ今日もたくさんあるねぇ。ありがとう全部貰うよこれからのもね」

「はい、お持ちしますね」

 可愛い雑貨はフー師も受取ってくれたけど、ニクラスんちもリースマンさんちにもお菓子はもう断られちゃってる。

「クリストフォルスは何でわざわざ暗殺集団と一緒に居たんでしょう?」

「悪霊が去った郭公の抜け殻は、呪物になるってダンテは言ったよね。覚えてる?」

「はい」

「厄災として機能せずに亡くなったらどうなるか、アルヴェルティーネの墓を掘り返して確かめたかったんでしょ。もしかしたら呪物になるかもしれないしね。実行を暗殺集団に依頼するのに協力取引を持ち掛けた、ってところかなぁ」

「また遺体を狙うでしょうか?」

 ひたっと先生は私に視線を置いた。

「死者の秘密を暴こうとしたら、儂とダンテで作った罠に粉微塵にされる羽目になるよ。だから墓は暴かせてもいいって答えたんだけどねぇ」

 誰にだろう?それは置いといて、

「ありがとうございます。でも何所に逃げたんでしょう?何所かの隠れ家だって解ってはいるんですけど」

「彼はね魔法師としての禁忌を色々破っちゃってるからねぇ。しかもとっても悪い言い訳の効かない行動して、多くの人を不幸にしちゃってる。だから一魔法師として赦せないのよ儂だって。気付いてると思うけどオラーツともう一体の使い魔に追わせてる」

「先生、やっぱりクリクリの奴はサクッと(やっ)ちゃいたいです。エエ、あいつだけは金輪際赦せないですから。見付けたら私にも教えて下さい」

「クリクリって…お止しよ。人生これから長いんだから、赦せないのはあいつだけにならないよ。保証するって身が持ちませんって。第一ヘルダーリンはどうなんだい?バーデンは?」

「ダントツでクリクリだけど、そういえばそういう名前のすかし虫や便所虫がが居ましたね」

「あああ、もうそこまで行っちゃってる」

「もうネーナったら!そういう後ろ暗い相談はギッティ先生にせずわたくしになさいな。貴女の仕業だと悟られることなく、実行出来る方法を考えて差上げてよ」

「それは嬉しいけど、ガブリエラは巻き込みたくないよ」

「わたくしを弱者だと勘違いなさってるでしょ!今度除け者にしたらネーナでも赦しませんわよ、学友で戦友で心の友なのですわわたくし達」

「怖い怖いガブリエラ。ネーナそういう相談は止めようよ、ね。ダンテさん何とか言ってやって下さい」

 スヴェンはなだめに掛ってグリットも頷いた。

「そうよ、スヴェンは我慢強くて理性的だから、そんな相談してたら大人達(公の機関)に相談されてしまうんだから聴かせちゃダメ。ライムントの始末には私も一枚噛ませてもらうわよ」

 予想通りヘルダーリンは戦闘中に部下に仕掛けさせたんで、庇ったヴァルターが怪我したんだ。乱戦中に巧みに仕掛けたんで、公にしても今のグリットの立場では「皇女の言いがかり」になる可能性が高い。そりゃ悔しいよね。

 軽口を叩いてたけどみんな私の変化に気付いてた。獅子人の血を引くと侮辱され喧嘩を売られてもひたすら我慢していたネーナが、獅子人の力を使うことを恐れなくなったと。

 後日知ったんだけどそれで絶交したりするんじゃなく、私が間違えない様に友達でいようって思ったんだって。友として人生の最後まで見届けようって。


 もしかしてスヴェンを決心させたのはこの会話だったのかもしれないな。



 シュメルツァー家からはヴァルキュリャのブレスレットが贈られた。魔除けの純銀で作られててほろりとした。これが終わったんだって私に教えてくれたから、返したりせず有難く腕を通させてもらった。グリットも畏れながらと同じ物を贈られてて、お揃いって見せ合いッこした。グリットは王冠で飾られた女戦士(フラズグズル)で私が強き者(スルーズ)なんだよ。


 帝都から両殿下の編入に合わせて編入して来てた貴族生徒達の大半が、期末を待たずに帝都の学校に帰ってった。不愉快な連中が居なくなるのは大歓迎だけど、そんなこと出来るの?ってガブリエラに訊いたら「蛇の道は蛇ですわよ」って答えられた。

 期末を待たなかったのはスヴェンもで、もうほんの僅かのことだっていうのに専攻を政治学に変えちゃったんだ。

 普段から穏やかで聞き手に回ってばかりだったけど、更に口数が減って物思いに沈むことが多くなってた。話を聴いて私は直ぐにスヴェンを捕まえて問い質した。

「爵位を貰うって決めたの?意思は尊重するけど敢えて言わせてもらうね。そんなのスヴェンに似合わないよ」

「僕もそう思うよ。けど決めたんだ。君がずっとこの街に住める様にするって。家族で薬局を続けられる様にするって、その為に出来ることを何でもしたいんだ」

「そんなの私の都合じゃん。将来どうなるか分かんないし」

「そうだよ。でもその都合が変わったとしても未来が開ける街であって欲しいし、賢い友や強い友に守られるだけの無力な存在でも居たくない。パワーゲームで転がされるだけの駒で居たくないんだ。僕の周りでそんな人も出したくない。だから僕に出来る事を全力でするよ」

「人のことばっかり考えて、スヴェンらしいっていえばらしいけど、ギッティ先生が私に言ってくれたんだ。私には私の為の人生があることを忘れるなって、大切なたった一度の人生を誰かにくれてやったりするなって、だからスヴェンにも自分の人生を大切にして欲しい。自分の為に使って欲しいよ」

「はは、ギッティ先生は善い事言うね。大賛成だ。僕はね、その通りに生きるんだよ。人の為みたいに見えるんだとしたら大間違いだ。僕は僕のしたい様に生きるんだから」

 爽やかに笑ってくれるじゃないか。

「よくよく考えてのことだとは思うけどさ。専科を変えるのは大学からでもよかったじゃない」

「同じギムナジウムじゃないか。薬学研究部も辞めないし毎日会えるよ」

 そう言って笑った癖に中々会えなくなった。自由都市連合の人達の姿も頻繁に見る様になって、時々会えても凄く遠い存在に感じられる様になってた。

「グリットは政治学取らないの?」

 衣更えが終わって随分暑くなって、もう直ぐ今年度も終わろうって昼休みに、あれやこれやをグダグダ考えながら訊いた。

「私は元から才能があるし実際に見て来たから要らないわ。それに私が政治に興味を示すのは余り良くないのよ」

「あ、そっか、色々あったもんね。…うん、色々あったなぁ」

 しみじみしてしまった。

「あらあらネーナったらお年寄りの様ですわよ。どうなさったの?」

「そうそう、似合わないわよ」

「何だと~!年頃の乙女が物思いに耽ってるのが似合わないですと?」

 自分でも似合わないって分かってるけどさ。

「…スヴェンに会えないのが寂しいなって。同じ薬学部だったからガブリエラより一緒だったんだよ」

「ほほほ、それを聞いたらスヴェンが喜びますわ。でも本当に今は忙しくさせられていますの。大学はどうしても帝都になりますから、周囲が様々詰め込みたがっているのですわ」

「スヴェンも真面目だもの。だからこちらから押しかけて晩餐を一緒にしたりしてる」

「兄妹だもんね。羨ましい」

「だったら連れ出しちゃわない?連中スヴェンの才能が予想以上だったから、詰め詰めに詰め込んでるの。でもあの調子じゃ幾ら何でも保たないわよ」

「え?いいの?」

「面白そうですわね。わたくしも参加しましてよ」

「やるでしょネーナ?」

「やるやる!いつやる?」

「次の休みに。じゃあ計画を立てるわよ。護衛達を出し抜いてやるわ」

 私達は入念に楽しんで計画を立てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ