『カザマンス紀行詩』
『マリマの詩』
神よ
あなた様に差し上げた
我が王の腕
あなた様から頂いた
その琥珀の眼
王に乗り移った鎮魂は 時を待っていつか炎を吐く
その残された一つ眼を
虹色の眼に変える時
神と王とは結ばれる
悠久のカザマンス川は
高低緩急 瑠々と流るる
【カザマンス・FORTH/殺戮と滅亡34~洞窟はオペラ・ガルニエ】より
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『ンバイの歌』
ある日 暑い太陽
二人の兄弟が旅を続けた
やがて飢え疲れた弟が
「一人で行ってください。
腹が減っては動けない」
兄は願いを受け入れた
茂みに隠れ
切り取った腿
瀕死の弟に与えた
兄は自分の肉を切り取って
私を助けてくださった
これからはあなた様の下僕として
子孫に至るまで
それが 偉大なる王 スンジャタ・ケイタ王
【カザマンス・FIRST/静かなる内戦14~ファル】より
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『セレール族の詩』
乾いた大地 赤い土
月の光は ブビンガの木芯を貫き
根を張った
ここはルーガ
セレールの大地
パーニュはためくその風は
万物全てを神にする
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『マンディンカ族の詩』
王の城壁
崩れぬ土壁
民が作りしその城は
神の如しのマンディンカ
おう!
我らがカザマンスの川よ
悠久の時を刻みたまえ
流れは永遠
神の道へと続くのだ
【カザマンス・THIRD/奴隷の行方48~甲板の上の大合唱】より
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『霊媒師ムルの詩』
大いなるカザマンスよ
水はどこに流れ
木の実をどこに運ぶのじゃ
この世のあらゆる万物よ
我に教えたまえ
この地は誰が救うのじゃ
どなたがお導きになられるのじゃ
太陽なのか
月なのか
大地を覆う雲なのか
賢者ライオン
空を舞うトゥーカンなのか
草原に根差す大木か
ジョラ族の民を
お救いくださる全ての神よ
お教えください
【カザマンス・FIRST/静かなる内戦18~ムル】より
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『ファル王の詩』
我らは獣と花と生きている
息をするもの差などない
月と戯れ 星と遊ぶ
太陽と話し込めば
肌は黒くなるのだ
この褐色の肌は
お天道様と友達の証
自慢の肌だ
雨が降れば泥を捏ね
風が吹けば
鳥と共に両手を広げ
歌うのだ
太古から皆 友だ
【カザマンス・FORTH/殺戮と滅亡65~ファルの歌】より
純文学・連載中の「カザマンス」
少しアレンジしてお送りいたしました