表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

彼と彼女の現実

 二人は知っていた。

 現実はこんなものではなかった。



 私は思った。

 彼はそこまで私を見ていなかった。私を置き去りにして、色々な人と遊んでいたのだ。

 その挙句に、

「あの子はかわいい」

 とか

「恋がしたい」

 と言いはじめたのだ。私がいるのに。

 私という存在は彼にとっての何でもなかったというのか。

 私にとっての彼はこんなにも大切な人なのに。

 頭を撫でてきたときも、私はわん介と同じように撫でてきたね。

 ペットかなんかだったのだろうか。私は。



 僕は思った。

 彼女は僕を強制してきたのだ。

 何かあると連絡を求めてきたのだ。

 僕の中では線引きしているつもりだった。

 けれども、彼女と僕の価値観は違うということが欠落していたのだ。

「あの子はかわいい」も「恋がしたい」も本気では言ってなかった。

 でも、彼女は本気でなくとしてもそれを許してはくれなかった。

 僕の中で君は間違いなく特別な存在だった。

 けれども、彼女にはそれは伝わることはなかった。

 僕は間違っていたのだろうか。



 二人は知っていた。

 こうして最初は小さかった綻びは徐々に大きくなってきたということを。

 やがてそれは取り返しのつかない綻びとなったということを。

 ラインでの喧嘩が多くなり、気づけば隣にいるときも喧嘩をしていた。


 彼は、就職を機に上京することになった。

 彼女は、この地にとどまることを決めた。

 それが合図だった。

 彼の荷物は全部あっちに送ることになった。

 最後に二人を見たのは、玄関だった。

「じゃあね」

 と彼は言うと

「じゃあね」

 と彼女は言う。

 あっさりした別れだった。

 それから二人はお互いを見たことはなかった。


 なのに、どうして今日。

 夢に出てきたのだろう。

 しかも、あんなにもきれいな出来事だけ。


 ああ、そうか。

 二人は気づいた。


「こんなにも、あなたのことが好きだったのか」


 雪が降る街、降らない街。

 お互いに場所は違えど空は一緒だった。


 二人は思わず窓から空を見上げた。


「さよなら」


読んでくれた人に最大限の感謝。

良ければ、レビュー書いてくれたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ