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異世界にいかない色戦争  作者: やうやう
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色なしの旅

 俺は無色遥(むじきはるか)。19歳の大学生だった。


 なぜ過去形かというと大学というものがこの世からなくなってしまったからだ。どうしてこうなってしまったのか俺も詳しいことは分からない‥。だが、全ての原因は"モンスター"が世界に現れたことにある。

 モンスターに襲われて3年‥世界は、すっかり異世界のようになってしまった。異世界といっても心躍るようなファンタジーの世界ではなく廃墟と荒野にモンスターがあふれる世界だ。

 俺は、16歳の時モンスターから殺されかけていたとき助けてくれた仲間"黒"を皆殺しにしたモンスターに復讐するために強さを求め旅している。




 「はぁ!」


 グサッ!


 レッドリザードの心臓に剣をつきたてる。


 「キシャァァア!」


 少しのたうちまわったがすぐに動かなくなった。


 「やっと死んだか‥。それにしてもここらへんは雑魚しかいないな。」


 この辺りじゃボスのレッドリザード以外に経験値になるようなモンスターはいないしもう違うところに移動するか。まあ移動しようにもモンスターに都会も田舎も占領されて、自分が今どこにいるのかもいまいちわからないんだが。おそらく今いるのは東京の品川あたりなのだろうか‥。


 「おい!お前!レッドリザードはどこいった!」

 

 青いバンダナを腰に巻いた男が慌てた様子で詰め寄ってきた。


 「倒したよ。ついさっき。」

 

 青いバンダナか‥


 モンスターが現れたこの世界で戦うと立ち上がった人たちをまとめた4人の先導者がいた。いつからか先導者達それぞれがまとめ上げている4つの組織を"色"で分けるようになっていた。色は、青・赤・白・灰の4つである。


 「はぁ?ふざけてないで見てないか教えろ!」


 切羽詰ってるのか明らかに不機嫌そうだな‥。


 「仕方ないな‥ ほら、これ見ろ。」


 そう言ってレッドリザードを倒したと記されたログを見せる。


 初めてモンスターを倒すとステータスが表示されたモニターのようなものが目の前に出現する。俺も最初見たときは目を疑った。それからは自分で見ようと念じると自分のステータスや持ち物を見ることができる。また、倒したモンスターの記録も見ることもできる。本当にこういうところだけは異世界っぽいな‥。


 「!?ま、まじか‥。でも他の仲間はどこいった?」


 「ああ、1人で倒したよ。」


 「そんな訳あるか!お前何色だ? 見た目じゃわからんが。」


 確かに俺の身につけている装備・服は全て黒色だ。全て黒の仲間からもらったものだ。昔だったらこんな厨二病っぽい格好は絶対嫌だったのにな‥。

 

 「"黒"だ。」


 そう。俺は黒だ。たとえ俺1人だけだとしても。


 「黒?聞いたことないな。まさか色なしか?」


 色なしというのは、どこの色にも属していない者のことを指す。ゲームでいうところのソロプレイヤーのようなものだが、モンスターとの戦いなど危険が多いこの世界では組織に属し、パーティーを組むのが常識だ。


 「知らないなら色なしってことで構わない。これ以上用がないならもういかせてもらうぞ。」


 「ちょっと待て!ステータスを見せろ。上に報告しないと怒られちまう。」


 「はぁ‥。仕方ないな。ほらよ、これでいいだろ。」


無色遥 レベル28

体力250 魔力60 攻撃力95 守備力78 速さ90


 体力はモンスターに攻撃されると削られる。0になるとどうなるかわからないがおそらく死ぬだろう。魔力は精神力とでもいうのだろうか。俺もまだよくわかっていないが、ステータスが見れるようになってから感じれるようになり、使いすぎると体力が減るのとはまた違った倦怠感がある。


 「‥なんだこのでたらめなステータスは!?レベル20以上なんてリーダークラスでしか聞いたことがない‥。」


 だろうな。モンスターに襲われてから戦うという方針になったのは最近の話だ。戦闘員もレベル5前後がほとんどだろう。最初から戦っていたのは俺達黒とリーダー達くらいなものだろう。


 「お前らのリーダーなんてすぐに置いていってやるさ。じゃあまたな。」


 「お、おう。」


 無駄に時間を取られてしまった。この辺りに人型の強力なモンスターがいると聞いてきたのだが‥。やはりただの噂だったか。


 どうして俺が強いモンスターを求めているかというと強いモンスター倒すと強力なスキルを手に入れることができるからだ。


 スキルというのは、モンスターを倒すとごく稀に手に入るもので身体能力を強化するものや火の魔法を使えるようになるものまで様々だ。魔法なんてとても現実とは思えないが、モンスターがいる今はモンスターに対抗する唯一の手段と言っていい。


 スキルには使用者との相性がある。相性がよければ魔力消費が減ったり発動時間が早まったりする。スキルの使用するには念じる、声に出すなどがある。一度手にすれば魔力消費なしで身体能力が上昇したままというスキルもある。



 無駄足だったことに落胆しながらも、さらなる強いモンスターを求め歩みを進めようとしたその時。

 

 「‥レッドリザードを1人であんな簡単に倒すなんてすごい‥。」


 じー‥


 ‥廃墟の影から物凄い視線を感じる。


 「そこから見てるやつ!姿を見せろ。今出てくれば危害は加えない。」


 「!?私、敵じゃありません!」


 すると全く予想外の出来事に警戒態勢を解いてしまった。


 「‥お前は何色のものだ?誰に指示されて俺を見ていた?」


 なんと姿を現したのは中学生くらいの女の子だった。綺麗な黒髪で整った顔をしている。パーカーとジーパンで部屋着っぽい格好をしている。まあ今の世界では服装に気を遣っている人なんてそういないだろう。生きれればそれだけで十分なのだ。


 「兄さんが俺に何かあったら、あなたを頼れって‥あと色ってなんですか‥?」


 ‥とぼけているようには見えないが色を知らないなんて、どうやって生きてきたのか気になる。


 「本当に知らないのか?どうやって生活してきたんだ?」


 「コンビニとかスーパーから調達して‥。でももう食料も水も尽きてしまって‥。」


 「なぜ君のお兄さんは俺を知っている?」


 「私もあなたのことは知らなくて‥。自分のことを黒って言ってる人を見つけろって。」


 「!?黒を知ってるのか!?お兄さんの名前は!?」


 ついに手がかりを見つけた!


 「黒のことは知りません。兄の名は黒崎灰(くろさきはい)です!」


 俺はその名前を聞いて絶句した。


 「は、灰さん‥。」


 「兄さんを知ってるんですか!?」


 「ああ、知ってるよ。モンスターに襲われそうだった俺を助けるだけでなく育ててくれた人だ。」


 「じゃあ兄さんがどこにいるか知りませんか!?」


 君のお兄さんは死んでしまったんだ。この時そう言えなかったことを俺は一生後悔することになる‥。


 「俺も知らないんだ。俺も灰さんを含めた仲間を探してる。」


 「そうですか‥。あの‥足手まといになるのはわかっているのですが、‥ついていってもいいですか‥?」


 大人しそうな子だな。たしかに気持ちはわかるが、こんな幼い子をモンスターと戦わせるわけにはいかない。


 「それは無理だ。危険すぎる。灰さんに会ったら君のことを伝えておくよ。ここは危ないからここから1番近い青の支部まで送るよ。」


 支部とは青・赤・白・灰の色がそれぞれモンスターを駆除し、管理しているこの世界で唯一安全と呼べる場所だ。それぞれの色のリーダーはそれぞれの色の本部を直接治めているらしい。


 「本当にお願いします!モンスターとだって戦えます!」


 連れていく気はなかったが今思えば灰さんの妹とわかればリーダー達に狙われることになる‥。だがそれも隠しておけばいいだけだし‥。


 しばらく悩んだ末、彼女の答えで決めることにした。


 「君のお兄さんは死んでしまっているかもしれない。あと俺についてくると本当に死ぬかもしれないぞ?それでもいいのか?」


 「はい!承知の上です。」


 目に全く迷いがない。俺にはこの子を説得することはできないだろう。


 「わかった。だが、俺とついてくるからには絶対守ってみせる。」


 すると彼女はクスッと微笑んだ。


 「ふふっ、兄さんの言った通りです。」


 「何が?」


 「絶対守ってくれる、です!」


 俺は一生、灰さんには勝てない気がする‥。


 「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね!私は黒崎灰の妹の黒崎朱莉(くろさきあかり)です。よろしくお願いします!」


 「無色遥だ。こちらこそよろしく黒崎さん。」


 「どうして名字なんですか!兄さんもいるんですから朱莉でいいです。」


 「わかった。改めてよろしく朱莉ちゃん。」


 握手をしようと手を出したその時。


 「きゃぁぁぁあ!」「うわぁぁぁ!」


 「「!?」」


 女と男の悲鳴が聞こえてきた。俺と朱莉ちゃんは顔を合わせて頷き、悲鳴が聞こえた場所に急いで向かった。








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― 新着の感想 ―
[良い点] ファンタジー要素を現代でというコンセプト良いですね。 [気になる点] テーブルトークの経験があると、ドラゴンは「凄い・強い・カッコイイ」の代名詞なので脳内補完は容易いですが、そうでない人だ…
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