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第3話

一時間後、閉店前に自分は退勤し、自宅へ帰った。結局、あの後、店長に呼ばれ、明日の業務について話を聞かされた。鍵の事を忘れてしまい、持ち帰ってしまった。

(明日、朝一でサービスカウンターに持っていこう……)

 短い髪を掻きながら、玄関前に着くと、三つ隣の部屋の玄関前に女性と男性警察官二人が居た。何か事件かなと思いよく見てみると、警察官に隠れて、女性が一人居たが、私はその女性に覚えがあった。

「では、どこで無くしたか分からないのですね」

「えぇ……朝の時点では持っていました」

「話からして、職場か帰宅途中に寄った店の可能性が高いですね。遺失物届を書いていただきますので、署まで来ていただけますか」

 聞こえてくる話からして鍵のことだろう。

「あの~すみません……」

「あなたは?」

 声尾を掛けると警察官が自分のことを聞いてきた。

「このアパートに住む者です」

「あなたはあの店の……」

 女性は自分のことを覚えてくれていた。

「もしかして探しているのはこの鍵ですか?」

 女性に鍵を見せた。

「あー!! これです!! このキーホルダーが目印です」

 やはり、この鍵は女性のものだった。

「では、見つかったようなので、私たちはこれで」

 警察官二人は去っていった。

「自分も失礼します」

「本当にありがとうございます。まさか、店員さんが同じアパートの住人だったとは驚きました」

「自分、必要な時以外は外に出ないので」

「私も最近、引っ越してきたもので。よろしければお礼に夕食でもいかがですか」

「う~ん、せっかくですし、よろこんで」

「ではお入りください」

「失礼いたします」

 ここに越して五年が経過したが、初めてのご近所付き合いだ。

「散らかっていますが、どうぞ」

女性の部屋は、ぬいぐるみや絵本でいっぱいだった。

「あっ、それですか。私、保育士をしていまして、よく子どもたちに読み聞かせています。そのぬいぐるみは手作りなのです。一つ一つ手作りで誕生日に渡すようにしているのです」

「紅茶を淹れましたので、ごゆっくりしてください」

 女性はそう言って、エプロン姿で料理を始めた。



「ご馳走様でした。お料理、ご上手なのですね」

「うふふ。久々に誰かと一緒に食べました。このワイン、美味しかったです。こんなに美味しいワインを取り扱っているなんて、良い店ですね」

「ありがとうございます。そのワインは結構人気が高いです。いつもは一人で飲んでいたので、こんなに楽しく飲んだのは久しぶりです」

「それ以上に、美味しそうに食べていましたね♪」

「自分もここまでまともな食事をしたのは久しぶりです。いつもはコンビニ弁当やカップ麺。時々、パン一枚で済ませることもあります」

「そうなんですね」

「あぁ、申し遅れました。三〇二号室の大山です」

「三つ隣の方だったのですね。私は中村です。よろしくお願いします」

「すみません。中村さんがレジに向かった後に鍵に気づいてお渡ししようとしましたが……。その……何と言ったらよいか……」

 緊張しているせいか思っていることをうまく言葉にできなく、詰まった。

「それ以上、おっしゃらなくて大丈夫です」

「すみません」

「そう言えば、大山さんは女性用の店内服を着ていましたが、女性でよろしかったでしょうか?」

「女性です。よく男性と間違われるので、慣れています。中村さんはご結婚なされているのですか。指輪をしていますが……」

「指輪をしていますが、独身です。昔、恋人がいたのですが、まぁ振られました。大山さんに似てカッコいい方でした。最後は別の男性を見つけて結婚しました。その元恋人としていたお揃いの指輪です」

「それはお気の毒に……。自分も同じことを経験しました。相手は女性でした。とても明るく良い人でしたが、最後はこれ以上 付き合えないとバッサリと振られました。その後、自分よりカッコいいからと彼氏から悪口を言われ、振られたこともありました」

「お互い、辛い経験してきたのですね。お互い、気が合いますね。これからもご近所同士、お会いしませんか」

「喜んで。家族とも友人と会いたくなくて、遠くの場所、このアパートに引っ越してきました」

 言葉では言い表せない、この気持ちは自分なら知っているはずだ。

そう、この気持ちが『恋』であると。

 そして、この人は今まで出会ってきた人とは違うと。

 今まで嫌だった自分をありのままに受け入れられる機会かもしれない。

 外面も大事だが、内面もまた大事。今まで辛い思いをした分だけ、これからも幸せになりたい。

 この人と……共に。


ひとまず、ここまでになります。

続きを書きたいとは思いますが、気長にお待ちいただけますよう、よろしくお願いします。

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