3.Rebirth(再誕) Pt.3
放課後、直ぐに最後の悪あがきをしようと荷物をまとめたのだがオッドの方が早かったようだ。
「おっしゃ!じゃあ俺んちいこうぜ、」
物凄い楽しそうな顔で肩を組んできた。
私はこの面倒くさいかまちょを突き放して、バックを持った。
はあ、やっぱりか。
せっかくの努力は、徒労に終わった。
そうして二人でオッドの家へと向かう。
何故かヒューヒューという声(?)が聞こえた。
くだらないと思った。
そういうのも含め遊ぶのは正直言って、面倒くさいのだ。
「今日もまた遊ぶだけじゃないの。」
歩きながら、そう私は呟いた。
「何言ってるんだよ、今日は君がいなきゃ成立しないんだから。今日ぐらいきてよ」
彼の真剣な顔を久しぶりに、いや初めてみた。なんか不思議な感じだ。
「そう。」
「おん。」
私は考えていた。
何故、余計にとってつけたような前世の記憶があるのだろうか?
オッドが語っていた理論だと、其処だけが、どうしても分からなかった。
そして私は本当に、今の自分が本当と言えるのか。
何かが違う。
「あ」
しばらくの沈黙の後、オッドの家についた。
いつも通りだが、それにしても大きい。流石、世界一有名な一家である。
そして一週間振りに私は、オッドの家に入る。
「お邪魔します。」
すると、オッドの姉のディープ・プロフェットが出迎えてくれた。
紺色の長髪と、スタイルが綺麗な美人である。
今日は黒ドレスを着ていた。いつも通り綺麗だった。
隣からうぽっ、という声が聞こえたと思ったが多分空耳だろう。
背もオッドと同じで、顔もやはり美形で女性としては、完璧。その一言である。
「あら、いらっしゃいーーー!会いたかったわ。」
そう言って、恒例のハグをした。
胸があたる。大きい。どうしたらこんな胸が手に入るかよくわからない。
柔らかいのは確かだが、ちょっとキツい。
まあ、なんとなく私も言えない気がするが…
「お久しぶりね、2週間振りよー!」
「?、そうですね。」
彼女の嬉しそうな笑顔に、私もすかさず笑みを返す。
何か語彙力がおかしかった気がしたが、気にしないことにした。
それぐらい私のことが好きなんだろう。
「おっとこうしちゃいられない、お茶を用意しなきゃ!」
こうしていつも彼女はメイドでもないのに自分でアールグレイを用意していく。
前に彼女から、
『この家は使用人をあんまり雇ってないのよね〜。スパイの可能性もあるし簡単に人を信用すると、痛い目にあうからね。
そもそもこの家自体機械が全自動で管理されてるし。』と言われた事がある。
そしてそのまま彼女に私とオッドはついていった。
玄関を上がってから15m先、そこに応接間がある。
とはいえ、会議室のような簡易的な物ではなく、お洒落な感じのカフェという場所である。
それにそのカフェという場所もこの世界にひとつだけである。
ここでは、珈琲、様々な種類のお茶、ココア、ラテという飲み物が飲める。
前世の記憶にもあったが、たしかに美味い。
その他にも新種の飲み物が追加されるらしい。
ここまでくるともう笑うしかない。
なにも出来ない私とは違うなと、思った。
ということは、この一族の中、もしくは関係者に同郷の人がいるかもしれない。
もしそうなら、いつか会ってみるのもいいかもしれない。
しかし、魂と一緒にある本当の記憶がないうちは、あまり話す事もなさそうだった。
「はーい、いつものどーぞ〜〜」
そう言って、彼女はいつものを用意してくれた。
「私は用事があるから、二階へ行ってくる〜
なんかあったら呼んで頂戴。」
ドアの閉まる音。
「そこで今日なんで家の呼び出したかっていうと、」
いきなりやけに真剣な面持ちでオッドが話しかけてきた。
本日2度目だ。
少し嫌な予感がした。
「今日は君の中の魂を目覚めさせようと思う。」
「え?どういう事?」
久しぶりに疑問を他人に露わにした。
「じつは俺の仮説には穴があってね。」
そして彼の得意げモードが発動する。
「マイロ。君の魂の記憶って完全にない訳じゃないんだよね?」
「その通りよ。」
「その記憶がありながらも、君は存在を示せてない。何故だと思う?」
「さあ、本当に魂が気薄過ぎるとか?」
「まあ最初は僕もそう思ったんだ。しかしだ。魂には今まで証明できなかったところがある。」
「それは何?」
私の疑問は増えていく。
「魂の強さだ。何故かというと、魂はあらゆる次元にリンクしてる存在であり、次元では時の概念、物質の法則を変える力を持っている。
逆に言えば、魂が強い生物や個体は現世界への干渉力が強いために自分に必要な物をその力で集めることができる。って事だ。」
「それで?」
「結論からいうと、君の魂は今眠っているんだよ。」
「何故そう思うの?」
「転生できるほど強い魂が、平々凡々な人間になるかい?さっきも言ったけど魂が強いというのは現世界への干渉力が強い。
つまり自分の望んでる物が手に入りやすくなるんだよ。
そして、前世で望んだ物を手に入れる事ができるんだ。」
「うん。」
「それと、前に言った様に特に強い魂ほど、生前では珍しいユニークな存在であるという事も考えてると、絶対にそんな魂が平々凡々を望むはずがないんだよ。
もしもう世界に誕生したくないという魂があったら、そもそも転生しないだろうし。」
「だから、私の魂が何故に気薄なのか。なのね、」
「そう、多分眠ってる意外考えられないな。」
「あなたがいうんだから多分そうよ。」
「じゃあ、どうする?」
「まあ、私が生まれて始めて興味湧いたし。面倒くさいけど、やってみてもいいかな。」
「わかったよ。ツンデレさん」
「うるさい。」
オッドは立ち上がった。
オッドは何処か暗くもあり、高揚感もあるような表情をしていた。
「じゃあ、ついてきて!」
そして二人で応接間を出て、廊下を歩く。
しばらく歩くといかにも何かありそうな階段が見えてきた。
「ちょっとまってて。」
と言い、階段の床に指を当てた。
すると、直後に反対側の何もない壁に穴が空いた。
「その中に入って。」
言われた通り、入った。
「ここからは僕の裏の顔だ。まあ、転生者の中でもごく一部にしか知らない顔だ。」
唐突にそう言った。
そして壁が元通りになり、周りが暗くなる。
突然光がついた。
魔法なのか、な。
そこには、超広大な研究施設的な物が広がっていた。
「ここは魂理学研究所。ここで僕は魂、世界と次元の関係性を研究している。」
なるほど、面白い。
今更だが彼は想像以上に優秀そうだ。
「今の所、こちらから魂への多少の干渉が可能になった。というのが今までの成果だ。だから僕は魂へのある程度の正しい知識と理解が得られた。」
「なるほど。」
「おー、にやけたw初めてマイロがにやけたのをみたわw」
「まあね?」
「実はこうなったのも、前世でひたすらかっこよく、頭よくなりたいと願った結果であるからねw」
「へー。」
それはどうでもいい。と思った。
「それで、魂への干渉の仕方だが……もしかしたら、君はこの世に戻れないかもしれない。」
え。そうなの。
しばらく沈黙が続いた。
「どうしてよ。」
「魂への干渉、それには莫大なエネルギーが必要になる。
ましてや魂の覚醒はもっとだ。君がエネルギーの不足分を補う為のものとして、
消えることになるかもしれない…」
「わかった。」
「え?はあ?」
「それで、いいから。」
「っちょっ、マイロオマエ!マジでいってんのか!?」
「私の本来の生きる意味。
私は、何故生きてるのか。
私はそれをずっと探してた。
もしこれがそうだとしたら、今までの私は、報われる事になる。
そうじゃなくても、決して無駄にはならない筈。
というより、どうでもいいのよ。私の事なんて。
もし今のままが続くのだったら、ここでいっそいなくなればいいのよ。」
誰にも言ってなかった本音を言わせてもらった。
何かスッキリした気がする。
そして、オッドはというと泣きそうになってた。
そう、それがわからない。
何か目に入った時以外しか、私は涙を流した事がない。
何故、人間は泣くのか。
何故、にんげんは笑うのか。
何故、人は怒るのか。
何故、ヒトは愛するのか。
「……わかった…じゃあ手を出して。」
「両手?」
「うん。」
両手を彼の手に預ける。
彼の手が震えてる。
「それじゃあ、はじめるよ。」
彼の手の震えが、収まった。
そして、目の前が真っ暗になる。
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THX.