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第五話 属性と武器

 俺たちはいつの間にか、周りを狼の群れに囲まれていた。

「ここで、真打登場ってね!」

 こちらに寄ってくる松下先輩が、余裕な笑顔で言う。

「それじゃあ、真打に任せて見学でいいですか?」

 長三郎が、その笑顔に食いつく。

「その槍じゃあ、狼と戦えないのかしら?」

「まさか。松下先輩の古典的な武器よりは使えますよ」

 すると堀田先輩が、

「古典的ねー」

と、つぶやく。

 武器としては別物だが、俺が使っている剣と堀田先輩が使っている打刀は火属性、長三郎が使っている槍と松下先輩が使っている薙刀は土属性というのが一般的な組み合わせだ。

 堀田先輩がつぶやきたくなったのは、内戦後に剣や槍を使う人が増える傾向になっていったことから古臭いと言われたことを悩ましいと思ったからだろう。

 ちなみに霞の短刀は風属性、穂見月の杖は水属性だ。

 つまり部隊編成を決めた人は、四属性の釣り合いがよくなるように考えてやっているのだ。


 ガルルーー!!

 一匹が突っ込んでくる。俺は問題なく避けたが、もう少しで接触しそうな距離だ。

「隼人! ボーっとしてるんじゃない」

 松下先輩の言う通りだ。堀田先輩の気持ちなど考えながらやれるほど、俺は器用じゃない。

 そんな松下先輩は、体右半分を後ろに引き狼の攻撃を避けると、斜め下から刃を上にして掬い上げるように簡単に狼の体を切った。

 半回転した体に比べると左右で留めた髪はあまり動いていないが、綺麗にしなっていた。

 堀田先輩も松下先輩も狼を倒しながら少しずつ前に進んでいて、狼たちは飛びつく距離が十分に取れず攻撃の機会がないようだ。

 俺と長三郎の方は、かわすばかりで攻撃に参加しているとはいえないが、足を引っ張っているわけでもない。

 だがやはり、一番弱そうな穂見月が狙われる。一匹のずる賢そうな狼がかなり回り込んだのか、思わぬ方向から穂見月に襲いかかるのだ。

 俺は焦るが、先輩たちは残り少ない狼を片付けている。霞が近くにいたから任せたのだろう。

 俺もそうなりたい。先輩に信用されたいからかと聞かれると確信が持てないがである。

 霞は、穂見月の前に立つ。

 それは狼と穂見月の直線上で、霞にとってかわすことができない位置取りだ。狼は進路を変えず霞との勝負を選んだようで、牙をむき出しにして霞に噛み付こうとする。霞は左の短刀を前に出し狼の牙を止めると、右手の短刀を回し順手にし、狼の首の横にそれを刺す。

 狼は沈黙すると、パタッと地面に落ちた。

 生き残りがどれぐらいいたかは分からないが、狼たちは引いたようだ。


 車のとめておいた場所まで戻り乗り込めば、思ったよりも長い戦いになったとどっと疲れが出る。

 それでも一年の俺たちは免許がないので、運転することを先輩から頼まれることはない。

「堀田先輩、熊も狼も普通じゃありませんよね」

 走り出した車の運転をしている堀田先輩に聞いてみる。

 雪だるまや案山子は完全におかしいとしても、初めて見たとはいえ熊も狼もそう感じるからだ。

「そうだね。神の祝福を受けたのは、人間だけじゃないのかもしれないね」

 神の祝福か……。

 いろんな伝承や比喩で言われることはあるけど、詰まるところ属性力のことだよな。生まれた地域や生活環境で変わる微々たる力だけど、誰もが持っている力。

 今では神から生活するために与えられた力と言われている属性力も、時代と共に段々薄れ意味がなくなってきているという話なんだけど。

 でも、この武器や防具も属性力が関係していて、戦っている相手までも属性力に関わりがあるのなら、その話は間違っているということなのか?

 堀田先輩は想像で答えたのか、知っていてとぼけているのか分からないけど、どちらでも変わらないと思い、それ以上聞くことはしなかった。

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