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第三十五話 謎の声①

 祭壇のある場所から出ようと向き直ったとき、どこからか聞こえてくる。風の音のように頼りなさげに響くそれは、明らかに声のような抑揚が感じられるものであった。

「こっち、だよね?」

 穂見月がおかしなことに壁の方を見ながら言うので、俺はそこに近寄り岩を覗き込むように観察する。すると、複数の岩が重なっていただけで隙間があると分かる。

「もしかして」

 そのまま体を横にして入っていくと、その先にも道があると確認できる。岩が重なって一枚の壁のように見えたが、この部分は突き出す岩々が道を狭めていただけで左右に縫っていけば進めるようだ。

「ダメだよ。任務は終わったんだから戻るよ」

 堀田先輩は割り切って言う。しかしその声に恐ろしさはなく、むしろ悲しみに打ちひしがれているかのような寂しさを感じるので気になってしまう。

「明らかに声のようですし、もしかしたら人がいて助けを呼んでいるのかも知れません。少しでいいから見に行きませんか?」

 人がいるような気がしたわけではなかったが、先に行きたいために詭弁で言ってしまう。そして堀田先輩の回答を待たずに進むと、穂見月もついてくるのでなし崩し的に全員で進むことになる。

 俺たち一年だけなら命令を無視して好奇心で行ってしまうこともあるだろうが、堀田先輩と松下先輩が無理に止めてこないのは先ほどの戦いで余裕があったから目を瞑ってくれているのだろう。


 道がまた広くなり、歩きやすくなったと思っていたらすぐに大きな空洞に出る。そこは一本の道が真っ直ぐ伸びているのではなく、直線的な面を持つたくさんの岩が巨大な直方体を作り、並んでいたり積み上がっていたりと塊を構築している。よく見ると壁沿いは高く、中央部には塔のような塊もあるので、積み上げられたのではなく無い部分が崩れていったのかもしれない。

 そんな積みあがった岩の上面は平な部分が多く、渡り歩くことができたので跳ねるように進んでみることにした。


「しかし、暑いですね」

 洞窟で外気の影響を受けにくいのだろう。冬であることを忘れるぐらいかなり暑い中をポンポンと進んで行く。

「ほんと、しかも蒸すから服がへばりつくし。だけど空気に流れがあるからこの熱、どこかから流れ込んできているんだろうね」

 松下先輩が言うように空気に流れがあるのだから、道は行き止まりではないということなんだろう。

「そういえば化け猫と戦ったとき、線のように涼しい風を感じたんですけど」

「それは、この風とは違うわね。あのネコ、水属性のようだったからそれで感じたんじゃないのかな?」

 俺は属性を感じることなどできなかったが、水属性で涼しくできるのなら穂見月に涼しくして欲しい……、いやこの際、松下先輩でもいいんだが。

「? 何? 隼人」

「いえ、松下先輩。それより」

「うん」

 その時! 話を遮る、低く短く詰まるような声が聞こえてくる。それは、俺たちを呼び止めたやさしい声とは違う。男性が戦っているのか襲われているのか、苦し紛れに叫んでいるような声だ。


「あっちのようだな」

 長三郎に続いて岩を渡り歩いていくと、下に見覚えのある男数人が案の定巨大化したネズミに囲まれている。だがその男たちはほとんど倒れており、まもなく全滅になるところであった。

「待って!」

 堀田先輩の言葉よりも早く、俺は岩の斜めになっているところを何とか滑り降りる。

「河田!」

 そこには、剣を支えに片膝をつき、倒れないで粘っている河田がいた。

 キュゥーーー!!

 ネズミたちはむさぼるように、降りたばかりの俺にまで襲いかかってくる。

「ちょっと大きいからって! 化け猫に比べれば十分の一もないのだから!!」

 俺は声を上げ、積極的に踏み込み剣を振る。

 当たった!

 数はいるが、これなら簡単か。そう思ったのだが、傷を負ったネズミは倒れない。

 考えてみれば盗賊団をここまで追い込んでいるのだから、新しい武器を持っていても俺がサクサク倒せるわけがなかったのだ。

「おりゃ!!」「はい!」

 長三郎と霞も滑り降りてきて一緒に戦うが、ネズミも一体一体が粘り強く戦うので数が減らない。防具の残り属性力を考えて松下先輩も回復のため降りてくる。

「松下先輩、あのネズミ。体の回りが赤いので出血でもしてるのかと思ったら」

「ええ、今度は火属性のようね。針ネズミならぬ、火ネズミってところかしら。隼人の剣じゃさっきみたいに威力が感じられないかもしれないけど、攻撃力は上乗せされているのよ」

 松下先輩も来たので崩れないとしても、倒すには火力が足りない。このまま長引けば、俺たちも全滅しかねない。

 ここで、登れないと帰れないからと待機していた堀田先輩も、穂見月が下りるのを助けながら下りてくることになる。

 堀田先輩も加わり戦線を押し上げていってると、後ろから波状の光りが広がってくるのが見え肌でも感じる。思わず、その波の出所を辿ってしまうと穂見月が弓を構えていた。大きな弓や可愛い袴にばかり気が行っていたが、腰に担いでいる左右に少しはみ出す横長の円柱から、その光りは広がっているようだ。

「まさかあれが経由装置なのか?」

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