90.『ハァ!?』
結婚・・・!?人間じゃないだろうから実年齢は分らないが見てくれは少女に突然求婚されて、脳が思考停止した。
『あら・・・お嫌でしょうか?。顔の造形は気を遣っているので多少の自信はあるのですが・・・。ソルフィは汚れた女ですから・・・仕方ないですわね。
でも、私はあの父の魔力を多少は受け継いでいるので、便利な女だと思いますわよ?』
驚いている僕らに、フフフと可笑しそうに微笑む少女。
『ちょちょちょちょちょちょ・・・ちょっと待ったああ!!』
『そんな事、許さないよ!』
剣士千歳ちゃんとエルフ千尋ちゃんが、抗議する。
『あら・・・何か?』
『お兄さんと結婚だなんて・・・!私が許しません!駄目です』
『許さないよ!』
二人とも断固、この少女が『僕』の嫁になるのを拒否している。
先の光景で、家族になる云々の話をしていたんだ。この二人は『僕』の事を意識している。将来の事も含めて、だからなのだろう。
『貴女達は、勇者様の婚約者なのですか・・・?』
『こんやく・・・しゃっ!!』
『ふえっ!?』
少女の質問に二人は狼狽する。
『そ・・・その・・・婚約してる訳じゃないけど・・・』
『じゃ、婚約の予定が無いのですね。都合良いですわ。』
『駄目っ!絶対駄目です!!』
怒りのあまりか握っていた大剣をぶんぶん振り回す剣士千歳ちゃん。『僕』は危ないから止めなよと言って片手で剣士千歳ちゃんを止めた。
『・・・お兄ちゃん、絶対、私の・・・私達・・・の家族になる人なんだから、誰にも渡せないよ!渡すもんか!!』
エルフ千歳ちゃんも光り輝く弓矢を両手で持ちながらプルプル怒ってる。それをまた片手で『僕』止める。
『・・・お兄さん、お兄ちゃんって・・・貴女方、勇者様のご兄弟ですか・・・?。髪や目の色から見て、兄弟には見えませんけど。』
『それは・・・私達が血縁を超えた魂の家族だからです!私達はずっと一緒です!とにかく、お兄さんは誰にも渡しません』
『あ・・・ははは・・・』
ぎゅうと剣士千歳ちゃんは、僕の体に抱きつき、そして、それに追いかけるようにエルフ千尋ちゃんもぎゅうと僕に抱きついた。
『・・・なあ、君、どうして、僕と結婚なんてしたいんだ?。僕に一目ぼれしたからとかそういう訳じゃないんだろう?』
僕が少女に聞くと、少女は、また微笑み
『それはですね、勇者様と結婚して血縁になれば、何事も都合が良いからです。魔王を倒した時点で勇者様は世界で最強の人物になります。
ソルフィは、何だかんだで世界を荒廃させた魔王の娘なので、魔王に迫害された者に命を狙われるかもしれませんし、ソルフィを担ぎ上げようとする輩も出てくるかもしれません。
そこで世界の救世主たる勇者様の妻という、世界で絶対正義的な身分を手に入れれば、こんな僻地で隠れ住むより、堂々と世間で生きられるなと思いまして・・・』
少女の見る僕の目がゆらりと光り、微笑みに邪悪さが滲んだ。
『・・・そんなの、打算的過ぎるよ・・・』
エルフ千尋ちゃんが、ぼそっと少女に反論した。
『あら、まだまだお若いのですね、エルフの弓使いさん。でも、ソルフィは打算でここまで生きてこられましたのですよ?打算的な結婚も悪く無いと思います・・・
それに、勇者様は、見た所、下衆な人物では無いので、もしかしたら、打算じゃない付き合い方も出来るかもしれませんわよ・・・?』
微笑んだまま少女は言う。
エルフ千尋ちゃんと剣士千歳ちゃん、そして少女の間にばちばちの視線の火花が見える気がした。
『・・・・・・あの~~、悪いんだけどさ、僕、もしかしたら、魔王を倒したら、元の世界に戻るかもしれないから、僕の嫁さんになっても仕方ないかもよ・・・』
そんな空気の中『僕』は間抜けた事を言う。
『えっ?』
『一応、この世界に召還されたのは、魔王を倒す為にだったからね。もしかすると、元の世界に戻るかもしれないし、戻されるかもしれない。僕も今後の事は決めてない。
だから、君の求める旦那の役割は出来ないかもよ?』
『・・・そ、そうなのですか・・・?今の勇者様なら、魔王を倒して、この世界最高の権力を得れる事は出来て、好き放題な事出来ると思うのですが・・・それでも?』
『うーん・・・わからない。まっ・・・とにかく未定という事で・・・』
『僕』がそういうと、少女はしょんぼりとした様子で肩を落とした。先から、人間ならざる雰囲気の少女が、見かけ相応の挙動をした気がする。
『駄目だよ!お兄ちゃん!!ずっと私達と居てよ・・・!ねっ!!』『お兄さん、私達とこの世界で暮らしましょうよ。お願いします!』
『僕』に抱きついていた二人がぎゃあぎゃあと言いながら、『僕』の体を揺さぶる。『僕』は二人をまあまあと言いながら落ち着かせようとしているが、落ち着く様子は無い。
『・・・・・・ふーむ、なら、鍵を渡す条件として、元の世界に戻らないも追加するというのはどうでしょうか?』
少女は閃いたという表情で言った。
『『『えっ?』』』
僕ら3人は、一斉に少女の方へ視線も傾ける。
『そうすれば、勇者様は元の世界に戻れないでしょうから、剣士さんとエルフさんの欲求とも一致しますわ。ソルフィは、勇者様のお嫁になりたいですが、ソルフィは側室で構いませんので・・・』
『ええええ・・・・』
『僕』は困り果てた様な声を絞り出していた。
『うーん・・・どうする、チトセさん?』
『そうですね・・・側室なので、私達の邪魔にはならないでしょうし・・・』
『なら、決まりだね』
エルフ千尋ちゃんと剣士千歳ちゃんは、二人でなにやら、相槌し、
『『よろしくお願いします、ソルフィさん』』
と二人で頭を下げた。
『ちょっ!!チトセちゃん!!チヒロちゃん!!』
『はい、不束者ですが、よろしくお願いします・・・勇者様・・・いえ・・・』
突然の二人の裏切りに困惑している『僕』に少女は、『僕』の手を握り、
『・・・お二人を見習って、貴方を名乗るとしましょう。よろしくお願いします・・・お兄様』
と少女は、『僕』を見てさも愉快そうに微笑んだ




