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83/121

83.「目の前で写っている風景は、暗転し、また別の風景が映し出された。」

どこかの草原、僕と剣士千歳ちゃんは、1メートルぐらいの大きさのスライム状の軟体生物と戦っていた。


剣士千歳ちゃんは、スライムに斬りつけるが、その刃はスライムに通らず、逆にスライムにどつかれて反撃を受けてしまう。


『あ・・・あうっ!』


『チトセちゃん!!』


制服に皮製の鎧を着込んだ『僕』も剣をスライムに突き立てる。突き刺さった剣は眩く光り、スライムは爆発四散した。


『・・・や・・・やった・・・。・・・これは、僕がやったのか・・・?』


『はい。勇者様の異世界人に秘められた特別な魔力です。・・・お見事でした。』


剣士千歳ちゃんは、感心したかの様に言った。


『・・・特別な力・・・?。そうか、これが、王様が僕を召還した理由だね?』


『・・・・・・はい。でも、これは勇者様の持つ力のほんの一部分です。異世界人の魔力は資質に個体差がありますが、我々普通の人間が持つ微小な魔力とは比べ物にならないぐらい


膨大な魔力が潜在されていてそして、魔力を使い修行すればするほど、開放されてゆくと聞きます。貴方はもっともっと強くなれますよ』


『僕が・・そんな力が・・・』


『僕』は自分の手を見て、にぎにぎと握る開くを繰り返している。


『はい・・・それにしても、何です?そのチトセ・・・というのは、私にはチトセスという名前が・・・』


『ああ・・・ごめん、こっちの世界じゃチトセスなんて変わった名前で・・・だから僕らの世界風の呼び方で呼ばせてもらったんだ・・・駄目かな?チトセじゃ・・・』


『勇者様の世界風の名ですか・・・良いですね。チトセとお呼び下さい』


剣士千歳ちゃんはにこりと微笑んだ。


『・・・チトセちゃんは、いくつだい?』


『齢ですか?17になります』


『そうなんだ、チトセちゃんは立派だね。こんな化け物に自分から果敢に立ち向かったり、僕みたいなおっさんに礼儀を持って接していたり、


僕が君ぐらいの歳じゃ、もっと情けない17歳だったよ』


『・・・えっ・・・?そうなんですか。』


『そうそう、うちの会社の新卒の女の子より人が出来てるよ』


『・・・そ、それは・・・有り難うございます・・・!!』


ぽやっと顔を真っ赤にして剣士千歳ちゃんは照れた。かわいい。


『でも・・・』


剣士千歳ちゃんは、少し、顔を鬱ろげにし、


『私は、騎士失格ですよ。こんなスライム相手にすら、遅れをとってしまっています。ちゃんと修練は積んでいて、騎士なら容易く倒せるはずのに・・・私は立派では無いです・・・。』


残念そうに、答えた。


『・・・チトセちゃん・・・』


『僕』の言葉に、騎士千歳ちゃんは、ハッと表情を変えて、口を開く。


『・・・あっ・・・!いえ、申し訳ありません、こんなしみったれた事を言って・・・!騎士としては無能の私ですが、それでもこの世界に不慣れな勇者様の補佐役は勤めさせて頂ますので・・・!』


『チトセちゃん!』


そんな剣士千歳ちゃんに『僕』は剣士千歳ちゃんを制止して聞いた。


『・・・どうして、そんなに騎士である事に拘るんだ?、この使い捨て同然の魔王討伐に同行するのも騎士としての手柄云々なんだろう?』


『僕』の質問に剣士千歳ちゃんは少し考え


『・・・はい・・・、数十年前、私の一族は他の有力騎士家との権力闘争に敗れて、冤罪の汚名を着せられ、ある者は死罪、ある者は追放され、権勢を失いました。


数々の騎士団長を輩出し栄華を極めた我が一族も、この国に残ったのは目立たない分家の一つだった我が家だけです。そして父も戦死して、後は母と妹だけとなりましたから


私はどうしても、家を再興させたいのです!魔王を打倒して!!!」


剣士千歳ちゃんは、ぐっと!拳を握り締めて、『僕』の目を見る。その目には怒りと決意に満ち溢れていた。


『・・・そ・・・そうかい・・・』


そんな剣士千歳ちゃんに『僕』はちょっと引いたかの様な反応をする。


『・・・あっ・・・すいません・・・。私、何か、自分の事言うのに、舞い上がってしまいまして・・・申し訳ありません。


ええと、魔王を倒せるのは勇者様ですから・・・、私は、きっちり勇者様の補佐をさせて戴きます。』


ふかぶかと頭を垂れる剣士千歳ちゃん。その姿は、どこか哀れに見える。


『・・・良いんだ、チトセちゃん・・・。頭を上げてくれ、』


『僕』は剣士千歳ちゃんの頭を上げさせた。


『・・・なあ、チトセちゃん、君、先に言ったよね?修行する程、魔力は開放されていくと、そして、異世界人の僕と比べる程でもないけどチトセちゃんみたいな普通の人でも微小な魔力を持っているって


じゃあ、僕と同様に、チトセちゃんだって、修行すれば、きっと強くなれるんじゃないかな・・・?』


『・・・理屈ではそうなのですが・・・無理ですよ。今まで修練を重ねた結果がスライムに遅れを取っているのですから・・・』


剣士千歳ちゃんはしょぼんとうな垂れる。


『じゃあさ、一緒に強くなろう。僕も君も。僕の力も凄いかもしれないけど、僕の同じ様な異性人が魔王に挑んで敗れているんだから、僕だけの力じゃ無理と思う。


だから、一緒に強くなろう。強くなって・・・騎士として、僕の旅を助けて欲しい・・・・・・ね?』


『僕』がそう言うと、剣士千歳ちゃんは、顔を大きく驚きに歪ませ、そして、ゆっくりゆっくり柔和な微笑みを浮かべて


『・・・はい・・・。私の・・・私の騎士としての力を必要として戴けるのなら、喜んで貴方にこの剣を捧げたいと思います。』


と言って、自身の剣を僕に見せて、そして、笑顔のまま、ほろほろ泣き出したのだった。


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