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80.「■■■~♪■■■■~♪」

少女は僕の腕に抱きつきながら、上機嫌に歩く。


僕らは、城に向かって城下町を歩いていた。


「おいおい、歩きづらいって、そんなに抱きつかないでくれ・・・って、うわっ!」


僕が少女の顔を覗き込んだ瞬間、少女はキスをしようとしてきたので、慌てて少女の唇を手で塞ぐ。


「■■■~!■■■~!!」


「何だよ・・・そんなに、僕とちゅーしたいのか・・・?」


僕が聞くと少女はこくんこくんこくんと激しく首を縦に降った。


「・・・モテモテだなあ、僕は・・・」


貞操観念が激薄の少女に呆れながらも、片手に持つ、鞘に収まった剣を見る。


それにしても、この剣、軽い。100均のおもちゃ売り場にある、中身すかすかのプラスチックの剣のオ

モチャの様に軽い。


しかし、それで居て先の木製の椅子を豆腐みたいに斬ったあの切れ味、控えめに言ってJRPGのゲームに出

てくる伝説の剣が如きマジックアイテムだ。


まるで選ばれた勇者にでもなってしまったか。


・・・・・・漫画ゲームでありがちな展開だが、案外、そういうものかもしれない。


僕がそう、想いふけっていると、城の眼前までやってきた。


ウチの会社の事務所がある雑居ビルより高い城だ。


西洋風の城の存在感を感じていると、少女は、3メートルはある城門をぎぎぎと片手で押し開け、そして、

ちょいちょいと僕の方に手招いた。


「来いって事か・・・」


僕は、少女の方へ向かい、城の内部を見ると、そこは光り一つ無い、暗黒の空間だった。


僕はその暗黒さ加減にビビってしまった。


僕だって大の大人だ。深夜の暗い施設で警備員のバイトだってした事あるから暗闇は慣れてる。だ

が・・・その暗黒は中の内装がまるで伺えない、

底無しの井戸を覗き込んだ様な闇だった。


何となく・・・何となくだが、この闇の中は行きたくない気がする。・・・闇の中だから怖い・・・って

のもあるが、何か行きたくない。


そんな闇を見て、たじろいでいると、少女は僕の手を掴み


「■■■■■■」


と言って微笑んだ。


何となくだが・・・きっと『大丈夫』って言っているんだろうなと思った。


「分った・・・行くよ・・・この先に行けば、何か分かる事があるんだな?君の正体も、このわけのわか

らない世界が何なのかも、その他諸々も」


僕がそういうと少女も優しい目で僕を見て、こくりと頷いた。


僕は城の中の闇の空間へ行く事にした。少女に手を引かれながら。



闇の中をてくてくと歩く、闇の中だが、幸い足元に石が転がっている訳でも無く、手を引いてくれるガイドも居たので、難なく歩いている。


「■■■・・・?」


少女は僕に呼びかけた。


「何だい?何か言っているのかな?僕は君が言っている言葉がさっぱりなのだけど」


「■■・・・」


僕の返答に少女のため息様に何か言った。


多分、僕が言葉がさっぱりわからないのをがっくりしているんだろう。


途中長い階段があった、僕は少女にリードして貰いながらゆっくりと上っていく。


本当に長い階段だった。ここで少女に突き落とされたら、僕は大怪我するだろう。


大分階段を上った。階段を上って、また新しい段を踏みしめた時だった。


『・・・・・おお・・・・・参られたか・・・・、この国の救世主よ・・・・・』


目の前の闇の中から、誰か、壮年の男の様な声が聞こえた。


・・・救世主・・・・?こんなセリフ映画の中でしか聞かないぞ。


「・・・お嬢さん、何か、聞こえなかったか?何やらおっさんの声がさ・・・」


僕が少女に聞くと


「■■■■!」


と少女は声を上げ、そして、まるで来て来てと言わんばかりに、僕の腕を引いた。


「わわっ、まってくれ、転んでしまう・・・・」


手を引っ張る少女に気をつけながら、もう一段階段を踏みしめる。


『・・・・・うむ、そなたは救世主よ・・・・・・、異世界から来られし勇者よ・・・・・』


またおっさんの声が聞こえた。


・・・異世界・・・?


まったくまるで意味がわからない。


「・・・異世界・・・?勇者・・・?どういう事なんだ・・・?」


階段を上る足を止めてしまった。


「・・・・・■■■・・・・・・?」


少女が何か疑問を持った様な声を僕にかける。


「・・・・・うん・・・・、いや・・・・・また、変なおっさんの声が聞こえたからな・・・・。いや・・・・どうしてかな?


 どうしてかわからない事は先から散々起こっているから、考えるまでもないのだけど・・・」


僕がそうぼやくと、僕の胸に何かがゆっくりと抱きついてきた。


抱きついてくる相手は、少女しか居ない。


「・・・・・■■■■■・・・・■■■■■・・・・」


少女は、僕の聞き取れない声を呟きながら、片手で僕の頬を撫でた。


上半身には、少女のおだやかな吐息を感じる。


どうやら、僕に「大丈夫、大丈夫」と励ましているのだろうか?少女には、僕が怯えている様に写ってい


たかもしれない。


「大丈夫だよ。有り難うな」


僕は少女の頭を撫でた。


「・・・■■・・・・」


少女の頭が僕の胸に重量を任せた感触を得た。


「大丈夫だ・・・・大丈夫。さぁ、もう行こう」


僕がそう少女に呼びかけると


「■■■■!」


少女は合点した様に答えた。


そうして、僕はもう一歩、暗闇の中の階段へ足を運ぶ。

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