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作者: 内田 倫

思春期で自意識過剰かつ自信のない僕には陽の光はまるでスポットライトのように感じられて、僕をたちまちミュージカルの俳優に変えてしまう。


といっても本当になるわけではないが。


学校へ行くまえに、表情筋をしっかり動かし準備運動をする。


(いきなり動くと怪我しちゃうからね)


無理やり自分を納得させるように心の中で呟く。


学校に着くと、友達に笑顔をふりまき、

「おはよう!」

そこから決まった友だちと他愛もない話をする。

決まった日常。一つも動かない心情。


自信のなさは陽の光から遠ざかる。陽の光は自信のなさを炙り出している。

勘違いでも欲しいもんだと、皮肉げに思っている僕には陽の光は畏怖の象徴とも言わんばかりである。


陽を避けて歩き、家に帰ると昼でもなんでもカーテンをすぐに閉じた。


ベッドに飛び込んで完全に光を遮断する。そうしてやっと僕はボクと対話できる。そこでボクが言ったことは外に出てくることはないし、ボク自体が出てくることもできない。

出たがっているし、僕も出て欲しいと思っている。

でも出れない。

僕はボクの鎧のようなものだった。

でも呪われていた。

長いこと着続けているとそれは脱げなくなりどちらが自分かわからなくなる。


それが嫌で僕は次第に区別をするようにした。ボクはそうすることを嫌がった。拒んだ。


僕は同じ自分なのに意見が食い違うことに違和感を感じ、一層溝は深くなり、幅は広がった。


その溝の幅は大人になればなるほど大きくなり次第に君は見えなくなってしまった。


そうして、ほとんどの人は取り残され、夜の街は元鎧に埋め尽くされていく。


もう僕は無邪気なボクのことを忘れようとした。



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