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魔弾の狙撃手ココットの日記  作者: 松乃森スバル
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プロローグ

私の名前はココット・パーレイ。今年の春に16歳になりました。


これは後に『二十年戦争』と呼ばれることになる、私の祖国ブルストニア公国とエル・アラム連邦国との戦争に従軍した全記録です。


あの戦争が終わって一年。

祖国に戻った私がこうしていられるのも、一緒に戦った仲間たち、そして死んでいった沢山の兵士たちのおかげだと思います。

よく偉い人が式典で『名もなき兵士たち』と言いますが、名前のない兵士なんて一人もいません。

1人1人に名前があって、家族が居て、刻んできた人生があって、それぞれの想いを抱えて死んでいったんです。

だから私は一人でも多くの仲間の名前を伝えたい。彼らの生き様を、最後の姿を、何より彼らが生きた証を残したくて筆を取りました。


あの戦争中、私は『魔弾の狙撃手』とか『死神の申子』なんて呼ばれていました。新聞で目にした方も多いでしょう。

でも私はその名前で呼ばれるのが嫌いでした。本当は今でもあれが私だって事は知られたくはありません。

そんな恐ろしい二つ名なんて、まるで人を殺すのが好きな人みたいじゃないですか?


元々、人を殺したい人なんて居ません。敵国を絶対悪として定義し、国の為、家族の為という大義名分でカモフラージュされた戦争という狂気が人を変えるんです。

だから私はなるべく人を殺さないよう、急所に弾を当てないように頑張りました。

『死神の申子』の正体は、こんな小娘なんです。


それに入隊時、私は射撃が下手でした。ド下手でした。

宣伝されてたみたいに百発百中なんて夢のまた夢。標的のどっかに当たればいい方でした。

なのにちょっとした事がきっかけで、不思議な力を授かったのです。


それは『撃つ前に弾が飛ぶ場所がわかる』というものでした。


後になって軍の研究者さんが言うには、一種の予知能力ではないか、と言われましたが、そんなすごいものだとは最初は思いませんでした。

頭の中にイメージが沸くんです。『今撃ったら、こう飛ぶな』とか、そんな感じ。

だけど実際撃ってみると、横風も突風も全部その通りに吹いて、頭の中のイメージ通りに当たるんです。


この能力に目覚めたとき、私は嬉しかったんです。

『これで人を殺さないで、役に立てる』からです。

だけど私が配属されたのは狙撃隊や特殊部隊。

射撃が上手いと思われたら、当然ですよね。

だって上手く撃てたら教官や隊のみんなが褒めてくれます。認めてくれます。

わざと下手な演技が出来るほど、当時の私は大人じゃなかったんです。


それから私は何人もの人を殺しました。たった13歳の小娘が、誰かの父を、息子を、恋人を殺しました。


これはそんな多くの人達の未来の幸せを、笑顔を奪った私の決して忘れえぬ記憶です―――


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