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虚想世界 冒険者は神を目指す  作者: OTE
森の賢者と少年少女
8/8

第六話 修行初日

ちょっと間が空きました。もうちょっと早く書ける様になりたいですね。

レイが目覚めると知らない場所だった。

どこだろう?

左手を見れば、そこには昨日仲良くなったエレノアが手を繋いでいる。


二人が寝ているのは大きなベッドだった。

天井も壁も木で出来ている。

窓からは明るい光が差し込む。

視線を巡らせると、かわいらしい小物が窓枠や棚に置かれている。

貴重な紙の本がたくさん並んでいた。


床にはごちゃっと書類や分厚い本、魔道具らしい物や用途の分からないガラス器具などが置かれている。

かなり広い部屋だ。

レイ達が住んでいたアパートの部屋二つ合わせたより広いくらい。だが、ほとんど足の踏み場もない。


ぐるっと視線を一回りして。

手を放すのももったいない気がして。

どうしようかと考えていると、ドアが開いた。


「ハァイ! 二人とも朝よー」


ドアを開けて入ってきたのは、ハイテンションな賢者様だった。

動きやすそうな服を着て、髪は軽くまとめられている。頭には鉢巻きが締められていた。


「あら! 仲いいね!」

にこにこのメイプルに言われて、レイは恥ずかしくなって手を放す。

「お、おはようございます」

「あらあら、手をつないだままでよかったのに。お邪魔しちゃった?」

「え、ええと」

レイは上機嫌なメイプルのテンションに戸惑っていた。


「…んー、メイプルおはよう」

「おはようエレノア! 二人とも起きたし、朝の鍛錬をしましょ! レイは部屋が別にあるからそっちで着替えてね」


レイはメイプルに別室に案内された。

建物はかなり広い。廊下だけで二十メートルくらい有るのでは無いだろうか?

廊下の両側にドアがある。

「ここがレイの部屋」

メイプルがドアを開けた。


部屋に入る。

先ほどの部屋の半分ほどの広さ。八~十畳ほどだろうか?

妙にスッキリした部屋の中央に、レイの荷物がぽつんと置かれていた。

ベッドが一つ。使い込まれた机と椅子が一つ。

鉢植えの観葉植物が幾つか。

掃除道具。

三分の一が埋まった本棚。

窓には白いカーテン。

今は窓が開いていて、風が入り込んでいた。


「着替えたら外に来てね。ドアを出て左の方が玄関よ!」

「わかりました」

レイはさっさと鍛錬用の服に着替えて外に出た。


外に出ると、メイプルが屈伸運動をして待っていた。

「賢者様、着替えてきました」

「はいはい。エレノアももうすぐ来るだろうから待っててね」

「はぁい」


しばらくすると気怠げな感じでエレノアがやってくる。

「おまたせー」


「じゃ、まずは塀の内側を一周走ってきて。ゆっくりで良いから」

メイプルは事も無げに言った。

レイはぐるりと見渡す。

幾つかの建物、畑、グラウンド。

広い。

こんな広さを走ったことはない気がした。

「一周で良いの?」

とエレノア。

「まぁレイは初めてだしね」

「魔力は?」

「んー、使って良いわよ」

「分かった。じゃ、レイいきましょ」

「え、うん」

当然のようにエレノアが言うので、レイもついて行くことにした。


ゆっくりということだったが、エレノアのペースはレイにはきつかった。

レイは、エレノアから随分遅れてゴールする。

「あらー、レイ体力無いね」

「レイ、おそーい」

女性陣二人にそう言われるが、レイには反撃する気力は無い。

膝に手を突いて肩で息をするのがやっとだった。


その後休憩の後、柔軟体操をし、型をして。

といっても、エレノアとレイは習った型が大きくことなるので、個別指導だったが。

そうこうしていると、建物から商隊のメンバーが出てきて、昨日のバーベキューのかまどを使って朝食を作り始めた。

いつもの野営スープに黒蜜パン。

サラダがあるのはメイプルから分けて貰ったのか?

良い匂いが立ち上る。


「おーい、そろそろ飯にしよう」

ギルモアが呼びかけてきた。

「はーい、今行くわ」

とメイプル。

「じゃ、今朝はここまでにしましょう。」

三人は商隊メンバーと合流する。


「「いただきます」」

大勢での食事は中々賑やかだ。

レイは気がつけばエレノアの側に座っていた。

二人並んで食事を取っていると、大人達が声をかけてくる。

皆、レイとエレノアが仲良くしていることが嬉しいようだった。

しかし、ちょいちょいからかわれて、エレノアはすっかり機嫌を損ねてしまった。

レイは

「まぁいいじゃない?」

となだめるが、エレノアはそれがまた気に入らない。

「もういい!」

エレノアは席を離れてしまった。


レイが呆然としていると、ギルモアの弟子のヨハンが声をかけた。

「よ、大変だな」

「…女心って難しいですね」

「ちっさい割りには難しいことを言うね、レイくんは」

レイは困ってるのににこにこ顔だ。

「僕たちは、ご飯の片付けが終わったら、ダコタに帰る。そしたらしばらく女三人に男一人。頑張ってね」

「ぼく、このままやっていけるんでしょうか」

「まぁなんとかなるさ」

ヨハンは愛想笑いを浮かべると離れていった。


入れ替わりにセレス。

「レイちゃん、賢者様と修行頑張ってね」

「はい! セレスさん、炎弾、教えてくれてありがとうございました」

「いや、なんてことないよ。それと、魔力球のコントロール、レイちゃんならもっとできると思うよ。まだ七つだし」

「はい、がんばります!」

「まぁあたしも追い越されないように頑張らないとねぇ。まさか七つの子が四つも制御できるとか普通考えないけどね。普通七つの子といえば、まだ魔力球一個がちゃんと操れるかどうかだろうにねぇ」

「そうなんですか?」

「そうさ! 威張っても良いよ」

「でもパパが慢心は駄目だって」

「いやまぁそうなんだけどさ。あ、賢者様には話してあるからね。賢者様、修行楽しみにしてたよ」


とレイとセレスが話していると、緑のモヒカンが近づいてきた。ギルモアだ。

「よぉ、坊主、食ってるか!次来るまでに、大きくなっとけよ」

言うだけ言って去って行く。レイとセレスは顔を見合わせて肩をすくめた。


レイとエレノアの心中はさておき、食事が終わり片付けが終わると、商隊はさっさと帰り支度を済ませる。

そしてあっけなく帰って行く。

エレノアは何故かレイと口を利いてくれない。

レイは何となく置いて行かれたような気分で閉まった門を見つめた。


「とりあえず、状況の確認ね。昨日はあまり話せなかったから」

もう一度集合すると、メイプルはしれっと言った。

放って置かれたの間違いじゃないかな、とレイは思ったが黙ってた。

まぁ楽しかったから良いんだけど。とも思ってたがもちろんこれも黙ってる。

エレノアは相変わらずムスッとしていて、レイにはそっちの方が気がかりだった。


「一つ。マーティン達がいつ戻るかは分からない。でもとりあえず三週間以上」

新しい情報だった。三週間とは聞いてない。

横のエレノアがちょっと変な顔をした。

「一つ。レイには魔法使いの才能がある。魔力球の制御や炎弾を覚えたスピードはセレスさんから聞いたわ」

にっこり笑うメイプル。何となくうれしくなって、横を向いたらエレノアと目が合った。

「一つ。これは残念な情報ね。レイは体力が無い」

くすっ。と横から笑い声。

「一つ。これも残念な情報。私はしばらく忙しいみたい。数日はレイにばかり構ってられない」

「最期に一つ。これは良い情報。ジェーンの調子が良くなったわ」

「やった! これで美味しいご飯が食べられるのね!」

エレノアが喜びの声を上げるが、レイには意味が分からない。

「ジェーンさんってどなたですか?」

そんな人居たっけ?少なくともレイは紹介を受けてない。

「ジェーンは色んな事してくれる人なの。ご飯作ったり、お洗濯したり、庭の手入れしたり。狩りも上手よ」

エレノアが上機嫌でそんな事を教えてくれる。

「ジェーンはまぁうちのメイドみたいなものだと思ってくれれば良い。詳しいことは追々話すよ」

「メイド……。えらい人の家に居る? 賢者様はすごいですね」

それでヨハンが女三人って言ってたのか。レイの認識はそんなものである。


「私の手が空くようになるまでは、レイもエレノアも自習にしようと思う。ただ、そのままって訳にもいかないし、課題を幾つか与えておく」

課題は次のような物だった。

炎弾の強化。

炎弾の分散。

これは予想が付いたし、メイプルも実際使って見せてくれた。

強化は、炎弾の色が白くなった。この方が威力が高いらしい。

分散については、ちょっと難しい。炎弾を一度に複数作ると、それぞれ別の標的に当てた。

「次は、場に魔力を浸透させる訓練だ」

メイプルはそう言うと、手を地面に当てる。すると地面が盛り上がり山を作った。代わりに周辺の土が凹んでいる。

「私はこれ、得意よ」

とエレノア。

「んーー」

レイにはピンとこない。その様子を見てメイプルが解説を加える。

「自分の魔力を外にだして、場に与えるんだ。そうすることで自分の意思を物体に及ぼすことが出来るようになる。自分の延長が土に染みこんで自分の体の延長になったかのように考える」

「むぅ」

レイは乗り気では無さそうな声を出した。やったことが無いから自信が無いのだ。

「最終的には、これで草取りしたり、畑を耕せるようになれば良いんだが。まぁ数日じゃ無理か。いくら何でも七歳だしな。ちなみにエレノアはできる」

メイプルはにやりと笑う。

「や、やります! ぼく、頑張ります!」

レイはあっけなく食い付いた。

「そうかそうか、男の子はそうでなくちゃな」

「…単純」

レイは早速地面に手を突いてうんうんうなり始めた。

既に二人の声は聞こえてない。


レイは、まずは魔力を体の外に出した。

魔力を手の先から伸ばすようにしてみる。これはやったことがある。

手刀をつくり、その先から光る魔力を出してオーラソードごっこをやったことがあった。

伸ばした魔力を広く大きくしていくイメージ。

メイプルの作った山を思い浮かべる。

しかし、土は全然動かない。

エレノアに聞こうと思って見回してみると、別の場所で何かやっているようだった。

その一生懸命な様子に邪魔をするのも悪いと思い、一人で頑張ってみることにした。


「レイ様、お昼ですよ」


レイが集中力の使いすぎでぐったりしていると、聞き慣れない声が聞こえた。

目を開けてみてみると、きれいな女の人が立っている。

銀色の髪に青い目。年齢は十代半ばか。

レイからすればずいぶんお姉さんだ。

機能性の高そうな飾り気のない黒の服に黒のロングスカート。

白いエプロン。

いわゆるメイド服と言うものだ。レイは初めて見たのでその知識は無い。


「お姉さん誰?」

「初めましてレイ様。私は賢者様に仕えるジェーンと申します」

レイが立ち上がると、ジェーンが近づいてきて、服に付いた土などを払い落としてくれた。

レイがお礼を言うと

「これくらい何でもありません。これからも何かあったらなんでも仰ってくださいね」


建物に戻り、食堂に案内される。

昨日はずっと外で食べたし、今朝も外だったから使うのは初めてだった。

中に入ると、メイプルの姿がない。

「賢者様は?」

とレイが聞くと

「賢者様は、今日は夕方までお戻りになりません」

とジェーン。

「え? 外なの? 私には危ないから外に出るなって言ってたのに」

エレノアは何だか怒っていた。


食事はパンに野菜スープと簡素な物だったが、下味がきちんと付けられていて非常に美味しい。

レイはまだ幼いので料理のことは良く分からない。でも、このパンと野菜スープは食べたことのないおいしさだった。

特にパンは柔らかで白かった。

さすが賢者様は裕福だなぁと、レイは感心した。


レイは午後も土と戦っていた。

中々思ったようにできない。

魔力は土と重なるのだが、体の延長という感じにならないのだ。


丁度飽きてきたところで、エレノアが乱取りをしようと言ってきた。

昨日と同じく、最初は魔力無し。

やっぱり何度やっても勝てない。

完全に力負けだし、技術もエレノアの方がある。

途中から魔力有りに変更すると、どっちつかずの展開になる。

魔力による身体強化はレイのがだいぶ得意なようだった。


レイとエレノアが飽きて遊んでいると、ジェーンが声をかけてきた。

「なに?ジェーンさん」

「レイ様、お部屋に荷物がありますが、如何しましょう?」

「あぁそうか。お片付けしなきゃ」


レイは部屋に戻ると、バッグを開けて荷物を置き始めた。

大した量ではないが、レイは拘る方なのである。

色々とレイアウトを頑張っていると、あっという間に時間が過ぎた。


夕食の席には、全員揃った。しかし、ジェーンの席はない。

ジェーンは残り三名の世話をする。

メイプルは、なんだか疲れている様子だったが、レイに声をかけてきた。

「今日は成果があった?」

「炎弾の強化が上手く行きました」

「早いね!」

「もう、メイプル! 私のことも聞いてよ!」

とエレノアがちょっかい出してくる。

「おっと、ごめんよエレノア。そっちはどうだったのかな?」

「何も、無いわよ!」

エレノアは胸を反らし威張って言った。何故か自慢げだ。

「それ、駄目なんじゃ……」

レイが小声で突っ込む。

「うっさいわね。こういうのは努力が大事なの! それに私は褒められて伸びるのよ!」

「そういうの自分で言うのは良くないと思う」

「レイはまた良い子ぶって」


わいわいと食事は続き、二日目の夜は過ぎていくのであった。


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