スマイルの値段
※シナリオ練習作品の為、まだまだ不備があります。
秋月 海 高校二年16
ミソカ 不明(16)
来須 笑 高校二年16
ツゴモリ 不明(14)
真由 高校二年生16
先輩 高校三年生
マックの店長 38
マックのバイト 20
駅の乗客・男
駅の乗客・女
予備校の講師 30
山形の高校の同級生
植木屋
不動産屋
○東京・深川・小さな神社
蝉の鳴き声がしている。
暑い夏の日の昼下がり。
海「どうぞ、よろしくお願いします」
海、手を合わせ願いを言う。
ミソカ「(モノローグ)ここは、私の生まれた場所…どうしてここに…」
風が吹いて、木々をゆらした。
タイトル
『海をみたかい』
○N駅
夕方になり、帰宅する人々が行き交っている。
○N駅前・ホテルの部屋
海、テレビを見ながら夕食のバーガーを食べている。
ふとチリンと鈴が鳴る。
海「ん?」
海、思い出したように、パーカーのポケットを探り鈴を取り出す。鈴を振る。が、鳴らない。
海「鳴らないよな」
海、鈴を横に置く。そのすぐ横にはフライドポテトがある。
海「一緒に食う?」
と、鈴に言う。
ミソカ「食う。食う」
海の真横から手が伸びて、ポテトを持って行く。
ミソカ「おいしい~」
海、慌てて振り返る。ミソカの姿をゆっくりと観察する。
淡いピンク色の桜柄の着物。その着物の丈はとても短い。下駄は黒。ひらひらの付いた小さなエプロン。髪は長くツインテール。
海「(小声で)あり得ないな…」
海、不機嫌な顔になる。
海「おい。お前。何者だ?」
ミソカ「(ポテトを食べながら)え?君、
私が見えるの?」
海「ああ、見える」
ミソカ「見えるの?」
海「で、幽霊か何か?何しに出て来た?俺、何も出来ないから、さっさと出てけ」
ミソカ「私、出て行けないし、それに、君が言ったんじゃない」
海「はぁ?」
ミソカ「私、その鈴から出てきたの。それと、今日、君、よろしくって言ったでしょ?」
海「え?これ?これは、この前、じいちゃんの家で拾った…」
ХХХ
(回想)二日前。祖父の家。「メゾン建設予定地」と「入居者募集中」の不動産の看板が並ぶ。その先には、古い家屋があり、家の横に桜の木があった。桜の下で鈴を拾う海。
ХХХ
海「鈴から?それによろしくって?」
ミソカ「君は秋月の何?」
海「何で、俺の名を」
ミソカ「幸次郎の何?」
海「(OFF)じいちゃんを知ってるのか?悪いものじゃなさそうだし」
海「俺は秋月海。幸次郎の孫だ」
ミソカ「孫?」
海「じゃあ、お前は何者なんだ?幽霊?」
ミソカ「幽霊じゃないわよ。こんな可
愛い幽霊がいたら困るでしょ?」
海「別に困らないけどな。まぁ、確かに、幽霊にしたら変な恰好だよな」
ミソカ「ええ?変?カワイイと思うんだけど」
ミソカ、自分の姿を見回して、ポーズを決める。
海「どこかのメイド喫茶みたいだ」
ミソカ「メイド?」
海「いや、いい。んーと(考えながら)。鈴はじいちゃんに聞いてみるとして。でも、俺はお前によろしくって言ってないけど」
ミソカ「私の神社でお願いしたじゃない」
海「今日行った深川の?あれは来年の受験のお願いだよ。お前の神社って、お前、神なのか?」
ミソカ「えーっと。神じゃないわ。成りそこない。そっか、あれは受験のなの?私、間違えちゃったのね」
海「じゃ、もういいだろ。消えてくれ」
ミソカ「ああ。ポテト。そう、これ。これを君は私に奉納してくれたわ。これのお礼が済むまでダメなのよ。だって私、神なんだし」
海「(めんどくさそうに)え?ああ。奉納って…。それ、俺の所為なのか?」
ミソカ「そうよ。君の所為よ」
海「じゃあさ、お願い。そこの消しゴムを拾ってくれないかな」
ミソカ「え?はい」
ミソカ、落ちていた消しゴムを拾って海に渡す。
海「ありがと。それじゃ、お願いは叶った。消えてくれる?」
ミソカ「ええ?そんなのじゃダメよ。心からのお願いじゃなきゃ」
海「……」
ミソカ「ね、ね。名前付けてくれない?」
海「はぁ?なんで、名前なんてあるだろ?」
ミソカ「いいじゃない。呼び名があった方が良いでしょ?」
海「別に」
ミソカ「何でも良いから」
海「ん、じゃ。ミソカ」
ミソカ「ミソカ?」
海「俺の本名らしいんだ。大晦日の晦。じいちゃんが付けたんだけど、父がいじめに遭うといけないからって、通称で『海』ってなった」
ミソカ「そうなの。でも、嬉しい。君の名前なのね。ありがとう」
海「……」
ミソカ「で、これ。無い?」
海「え?ああ、俺のポテト」
ミソカ、空になった箱を嬉しそうに眺めている。
海「わかった。買ってくる」
ミソカ「私も、行く」
二人、部屋を出てゆく。
○ホテルの廊下
廊下を歩く二人。客とすれ違う。他の人にはミソカは見えない。
ミソカ「でも、君、驚かなかったね」
海「人以外の者を、見慣れてるからね」
ミソカ「ふーん」
○N駅前・
ホテルを出て、マックへ向かう
急に強い風が吹き付ける。
海「風が強いな」
海、何かが気になり辺りを見回す。
海「(OFF)何?何かが…」
ミソカ「ねぇ、アレ。変じゃない?」
○駅前・踏切
女子高校生(来須笑)が手に似たカバンを落とす。そして、今にも遮断機をくぐり線路内に入ろうとしていた。警報機が鳴る
海「あれは…!」
海、言うと同時に走り出していた。女子高校生はくぐり終えている。
男性「危ないぞ」
女性「誰か」
海、走って手を伸ばす。女子高生は気にもせず線路内へ。
遠くに電車の光が見えた。
海「だめだ。間に合わない」
海の横にはミソカがいる。
海「ミソカーー」
ゴウっという音と共に風が吹き、女子高校生の足が止まる。
海、遮断機を押しのけ、踏切内に入る。女子高校生の手を掴む。
二人は、線路脇の道路で転んでいた。
電車が警笛音と共に、急ブレーキで、駅に滑り込んでいった。
海「(OFF)まずい」
海「早く」
海、慌てて女子高校生の手をひく、彼女のカバンを拾い。そのまま、マックへと駆け込む。
○N駅前・マックの二階
隅の席に海のパーカーを羽織って女子高校生が座っている。
海、コンビニの袋と、トレーを持って階段を上がってくる。
テーブルにジュースを置く。
海「飲める?」
来須 笑「あの、何故、私、ここに」
海「頭がぼーっとしたのは治った?」
笑「はい。少しは」
海「踏切での事、思い出した?」
笑「でも、どうして」
思い出して、震えだす。
海「もう、大丈夫だからそれ以上思い出さなくていいと思うよ。。それと、手当していい?」
海、澪の膝と肘の擦り傷の消毒をして、絆創膏を貼る。
笑「ありがとう…ございます」
海「こんなの、どうって事ない。それより、駅がちょっと騒ぎになってるから、そのパーカー着て行って。転んだ所為で、背中が汚れてるんだ」
笑「あんな事をしたってバレたら、やっぱり問題なんですよね?」
海「君に記憶が無いって言うのなら、駅員に聞かれない方が良いだろ?」
笑「あの、名前を教えてくれる?」
海「ん?」
笑「あの、助けてもらったんだし、お礼が言いたいけど、お名前を教えてもらえませんか?」
澪、支離滅裂だと思いながらも、一気にそう言った。
海「秋月海。山形の高校二年」
笑「高校二年。同じなの?山形って、どうして東京に?まだ学校あるでしょ?」
海「家の用事でね。出てきてる。大学受験の下準備とかで休み中はそこのホテルに泊まって、予備校に行く」
笑「そうなんだ」
海「で、そっちの名前は?」
笑「あ、私は、来須澪。N校二年」
海「N校か…。来須さん。俺、そろそろ行くんで、そのパーカー、今日は着て帰って。それは返さなくていいから」。
海、降りて行こうとする。笑、海を追う。手にさっきのジュースを持っている。海はどうぞと、手で合図を返した。
○N駅前
笑、一度、頭を下げてから、ジュースとカバンを手に駅へと向かい、改札を抜け階段に消えて行った。
○N駅前のホテル・海の部屋
海「ダメだあ。頭が痛い」
冷蔵庫から缶コーヒーを取り出し、ベッドに寝転び缶を額にあてる。
ミソカ「君、彼女に何かしたでしょ?」
海「人聞きの悪い言い方するなよ。あいたた…」
ミソカ「何かあの子に憑いてたんでしょ?」
海「うるさいな…。頭痛いって…」
ミソカ「さっきは何も出来ないって言ってたのに」
ХХХ
海「幽霊か何か?何しに出て来た?俺は、何も出来ないから。さっさと出て行け」
ХХХ
海「うるさい…」
ミソカ「あの子に何か良くない物が憑いてて、それを祓ったんでしょ?」
海「痛…。生霊だった。同じ学校の女の子。祓ったなんてものじゃない。ただ送り返しただけだ。俺は陰陽師じゃないからさ…。何も出来ない…」
ミソカ「それでも、あの子は君の名前を知ったし、服も着て行ったわ」
海「服なんて、気休めにしかならない」
ミソカ「あの子に生きる力があれば、また会えるわよ」
海「だと良いけどね」
ミソカ「あんた、思ったより、良い子じゃない」
海「思ったよりは余計だ。お前も思ってたより良いな」
ミソカ「思ってたよりが、余計だよ」
海「あはは…。あ、いてて」
ミソカ「缶、どけて」
海「?」
海、言われた通に缶を額からどける。ミソカがそっと額に手を乗せる。ヒヤッとした感触がする。
海「(思わず)気持ちいい」
ミソカ「でしょ?」
海「あ…、(照れる)ありがとう」
ミソカ「どういたしまして」
海「楽になってきた」
海、目を瞑る。
ミソカ「気になる?あの子とまた会うかもしれないわね」
海「生霊か、どうしたらいいんだろう。ミソカ。もういいよ。重いのが消えてきた。浄化したの?」
ミソカ、海から手をどける。
ミソカ「一応、神の端くれですから…あ、そうか」
海「ミソカ?」
ミソカ「私じゃ無理でも、あの子なら」
海「?」
※この作品(小説)を「シナリオ新人賞」の公募に出す事にしました。
大幅に構想からやり直してみようと思いますので、「シナリオ版」は公募の結果後にまた開始しようと思います。すみません。続きが気になる方は小説で読み進めてやって下さい。一応終わっていますので、途切れる心配はありません。安心して読めるかと思います。それでは、また(2016、2,6)