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眠り王子  作者:
謁見
9/12

眠りの国。①



その日はそれから授業を真面目に受けて、そのまま下校時間へ。



[From 裕貴

今日、部活で遅くなる。

一人で帰れるか?]




携帯を開くと裕貴からのメールが来ていた。

気遣いの行き届いた弟だ。

どちらが年上なのか、たまにわからなくなる。


麻未は大丈夫だと言う旨の返信を送り、梨絵と教室で別れた。

彼女も部活に入っているので、一緒には帰れないのだ。





朝は裕貴と歩いた所を一人で歩くと、少し寂しく感じた。

そこへ不意に走り寄ってくる足音が耳に入り、麻未は振り替える。




「裕貴?」


「…弟じゃねえよ。」


「えっ、拓真(たくま)…!」




そこには【元】彼氏、拓真がいた。

意外な人物の登場に思わず歩いていた足が止まる。


拓真も止まって、私の顔を見下ろした。

焼けた肌、煙草の臭い、それを消すための香水の香り。

その全てが懐かしくて、麻未は一瞬その胸へとダイブしたくなる。




「お前、何で連絡返してこねえんだよ。」




そんな想像さえも吹き飛ばしてしまう、拓真の声。

大好きだった声もこの時ばかりは耳障りだ。


いつだってそうだった。

拓真は女の人の喜ばせ方を知っていて、麻未のような恋愛経験の少ない子には少し刺激が強く、現実的な恋愛を強要してきた。


少女漫画のように素敵な恋はさせてくれなかった。





「……そっちだって、してこないじゃん。」


「はあ?普通、連絡途切れたら誰だって連絡しづらいだろうが。」





連絡しづらい。

それはそうだ。

だけど、でも……。


言い様のない不満が溢れ出す。

言葉に出来ない歯痒さに、唇を噛み締めた。






「……もう少し優しくしてあげたら?」






その時、拓真とは対照的な風のような声がきこえてきた。

この声には聞き覚えがある。


そうだ、この声は屋上であった……。




気が付けば、拓真と麻未の間に【王子】の姿があった。

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