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眠り王子  作者:
謁見
11/12

眠りの国。③



そこは少しばかり高いこともあって、一瞬恐怖を感じたが少しすると慣れて、風が気持ち良く通り抜けた。




「此処に座るとね、校庭の殆どが見えるんだ。」


「…ほんとだ。」




そこは下界を見下ろす天国のようで。

先程、麻未が拓真と立ち止まった場所もしっかりと見えた。


だが、米粒な生徒たちの中で良く自分を見つけたなとそこで気づく。

素直に聞いてみよう、と麻未が隣を見るとこちらを向いていた【王子】とばちりと目があった。




「あ。」




思わず声が漏れる。

その様子に【王子】は無表情で口を開いた。





「……間抜け?」


「はっ!?」


「顔が。」





まともに顔を見たと思えば、するりと悪口。

麻未はむっとして、【王子】の頬をつまんだ。


人間とは離れたような存在を自分の存在で汚してしまったような、少し嫌な気がしたが大人しく頬を差し出す【王子】を見て、くすりと小さく笑みを浮かべる。






「その顔も間抜けだよ。」


「……ひゃえへ。」


「んん?」





その時、一瞬甘い香りがした。

砂糖のようなキャラメルのような、メープルシロップのような。


そして、麻未は【王子】に両手を握られていた事に気づく。

その瞬間、頭の中を熱が突き上げた。


自分からさわるのは良いのに、【王子】からこちらへ触れられるのは意外だったのだ。





「なに、その顔。」


「っ、…っえ?」


「赤いよ、顔。」


「わ、あ、あの…ご、ごめん…。」




慌てて赤くなっていると指摘された顔を伏せると、頭上から【王子】の笑いが聞こえてきた。





「嘘だよ。」





子供っぽく笑みを浮かべた【王子】は、そう言って手を離した。


少し名残惜しい、と感じたのは錯覚だったのか。

麻未は遠慮がちに【王子】を見て、愛想笑いを返した。


麻未は気づかなかったが、もうそれほど【王子】への緊張はなくなっていた。

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