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王子。①
この世界は夢物語とは違う。
「……もういいや。」
月明かりが差し込む部屋で、一人の少女が呟く。
そして携帯をベッドへ放り投げた。
画面には最近まで上手くいっていた彼氏の名前。
だが、そう思っていたのは少女だけで相手はとうの昔に彼女の事などどうとも思っておらず、ただの飾りだけの恋人にすぎなかったようで。
よくあるお話なら、此処で愛の力が試されて二人の仲がより親密になりました―――何て事もあるかもしれないが、生憎少女が生きる世界は紙の上でも誰かの頭の上でもないわけで。
少女から数えて約三ヶ月の付き合いは、彼女が現実を思い知った瞬間に呆気なく終わりを告げた。