読んじゃだめだよ?
……あー。もしかして、このページ開いちゃったんだ? あー、もう、読むなってタイトルにもあらすじにも書いといたのにどうして開くかなー。
しょうがないから説明しとくけどさ、このお話は「不幸の小説」なんだ。あー、ほら、「不幸の手紙」だとかさ、似たようなので「幸福の手紙」だとか、ああいうアレなわけよ。わかる?
……んー。今時の子は知らないのかな。わかんない? 知らない?
不幸の手紙っていうのはさ、同じ文面の手紙を何日以内に何人に送らないと不幸になります~みたいなやつ。具体例として手紙を送らなかったT県I市の誰それが死んだ~とかなんかそんなしょうもないのが書かれてる手紙なわけよ。かなりはた迷惑なお手紙なんだけど、一時期流行ったりしたわけね。
ケータイとかみんなもってる今だと、手紙よりメールなのかな。チェーンメールって言ったらわかるかな?
ああいうの何が楽しいのかあたしはほんとわかんないんだけどさ、そういうの他人に送り付けてニヤニヤしてるバカがいるわけなのよ。
……でもって、話は戻るんだけどさ、このお話ってその「不幸の手紙」みたいなものなのよね。
いや別に同じ文面の小説を書いて、この「小説家になろう!」に投稿しないと不幸な目にあう、だなんて馬鹿なこといってるわけじゃないんだけどさ、要するに、読んだ人が不幸になっちゃうお話なわけ。
――具体的に何がどう不幸になるのは、もうすこし後で語ることにするけど。読むの止めるなら今が最後のチャンスだよ?
え、それにしてもなんだか妙に馴れ馴れしいって? いやだってさ、あたし、キミに話しかけてるわけだから。こっちからだとパソコンで見てるのかケータイでみてるのか、それともスマホ、だっけ? なんか変な薄いのでここ見てるのかわかんないんだけどさ。
あたしは、ここにいるわけなんだよ。え、あたしのいうここってどこかって? それはあたしにもわからないなー。
あたしの言葉は、文字に変換されてキミの目の前に表示されている。
意味、わかる?
つまり、あたしは、ここにいる。
残念ながらキミの言葉はあたしには聞こえないし、想像で受け答えするしかないから、だからどうしてもこちらからの一方通行にならざるをえないんだけど。
ああ、そんなくだらねー、って鼻で笑うのもしょうがないとは思うけどさ。この辺りまで読んでしまったら、もう後戻りは効かない訳なのですよ?
いやだから、信じなくてもいいんだけどね?
……ああ、後ろ向いたって誰もいないよ? あたしはめりーさんとか言う都市伝説じゃないし。でもまぁ不幸になっちゃうところは似たようなものかもしれないね。
さて、そろそろわかってもらえたかな?
……これは、「不幸の小説」です。
このお話を読んだ人のうち、誰か一人が、あたしの代わりにここに閉じ込められちゃうよ。
いや、VRMMOのデスゲームだの異世界トリップだのいろんなお話がいっぱいあふれてる場所だけどさ、まさかこんな所に飛ばされちゃうなんてね。
ああ、また鼻で笑ってる。
でも、ここまで読んじゃったらもう終わり。
ようこそ、名前も知らないキミ。
――だから、読んじゃだめだよって言ったのに。