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聖魔降臨  作者: 珀夜
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第五話 --- 寮生活

「しっかし、この世界も久しぶりだねぇ」

 桜が舞い散る桃色の雪を踏みしめる。

 そういえば、ここで花を見ないことなんてなかったなぁ、とふと思う。

 たんにぼーっと歩いてるだけで数多い知人---ヒトかどうかはともかく、集まりだす。

『おひさしぶりですなぁ』

『今回はいつまで滞在するんだい?』

『今度うちにきておくれよ。今度は上手くいくからさ』

 それらの問いを存外にせずきっちり返すところもまた彼らしい。




      <em><strong>聖魔降臨</strong></em>

         <em>第五話 --- 寮生活</em>




「・・・なんか静かねぇ」

 ドタバタ騒ぎから1日。

 たかが1日と嘲る者もいるかもしれない。がしかし、大きな騒動を起こした当の本人の姿が翌日に見えないというのは何かと気になるものだ。仮にそれが入院だったとしても。

 その騒動の被害者であるマユが静かだとぼやく。

「なに? まゆちゃんも気に入っちゃったの?」

「だーれがあんなやつっ!

 ふんっ 居なくなってせいせいしたわっ!」

「くすっ、私は瑠璃クンなんて一言も言ってないわよ?」

「・・・あんたねぇ」

 何を言っても無駄、そう悟ったのだろう。さっさと話題を切り上げる。千尋相手に言葉で勝とうなんて無理な話でもある。ふんっ、とそっぽを向いてしまった。

「別にいなくてもどうにでもなるでしょ」

「まあね。私たちにとってはそれが自然だったんだし」

「あいつが居ることが不自然なのよ!」

 ダンッ!

 テーブルに乗っていたコップが揺れる。

「はいはい、それでも御前様の言いつけらしいですから。」

「あやつは儂の言いつけだとは言わないじゃろうがな」

「御前様!」「阿左美様!?」




         <em>5th Story</em>

            <em>Life on Dormitory</em>




「失礼するよ」

 両者とも阿左美のことは当然のように知っている。

 如月家はかなり力のある一族といえる。

 ちょっと裏の世界をかじれば如月家を聞かないことはまずない。

 表の世界でも財政界に口出しできるほど発言力をもつ。国家に従う警察権力など言葉一つで従えるだろう。

 その如月家の総代でもある阿左美。表向きは如月学園の総帥として位置する。そんな人を目の前に置けば大抵は驚き固まってしまう。


 とはいえ、この如月寮でだれかが固まるなどということは滅多に起きない。

 寮に住むだれもが、何らかの形で阿左美と関係があるのだから。


 ふと現れる阿左美に席を勧める千尋。この辺は慣れきった対応だ。

 一方のマユだが、こちらは珍しくあまりの緊張に固まってしまっている。

(も、もしかしてさっきまでのも聞かれてた?!)

 と不安がっているのだが、それも影響してしまった。

 

「マユの言うこともわからぬではないが、儂に免じて許してやってくれんか」

 そういって頭を下げる阿左美に思いっきり困惑する二人。

「ちょ、阿左美様! 頭を上げてください!」

「そうですよ御前様。簡単に人に頭を下げるものではありませんわ」

 逆にそう諭してしまう始末。

 そんな二人に穏和な笑みを浮かべ答える。

「とはいえ、あやつに失礼があったのも事実。

 マユや。将来はあやつにもらってもらうか?」

 軽く笑いながら言うが、その目は笑っていない。

 もちろんマユも千尋もそのことは分かっている。

「冗談を。

 しかし、御孫さんが居られるとは初耳ですが」

「実家に居る事自体が珍しかったからの」

 その言葉に困惑すら浮かべてしまう。

「今もどこかほっつき歩いておるのじゃろうよ。

 数日此処を開けるとは思うが、問題あるまい」

「当然ですよ、御前様。

 これくらいで問題があったら今までの生活を疑われてしまいます」

 そう言ってころころと笑う。

 曲がりなりにも今の住人でやってきたのだ。そこに一人が加わり、その直後に抜けたところで問題は普通は起こらない。

「そうじゃな。

 何にせよ、あやつが寮主になるのは決定事項故、そこは受け入れてもらえんか」

「失礼ですけど阿左美様。なぜ突然にココの寮主に?」

「行きたい場所がなかったそうじゃ。仕方ない故に此処に縛り付けてやったといったところか」

 もっともそれもあまり意味があるようには思えなかったという言葉は決して出さない。




「へっくしょぃ」

『るりさまー かぜー?』

「ここで風邪なんてひくかい。

 こわーい誰かさんが悪いうわさしてるのさ」


============

第五話 了

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