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聖魔降臨  作者: 珀夜
3/6

第二話 --- イベント=フラグ成立?

 そもそもの興りは明治時代にまでさかのぼるという。

 もともとは小さな宿として存在した。名産というものもないためそんなに賑わうほどのモノでもなく、温泉目当ての客が集まることもない。単に急な寝床を提供する、それだけの宿場だ。

 とはいえ、破産するほどに経営悪化はしておらず、格安な値段というのもあってとりあえずは生き延びていられた、というところだろうか。

「それで、これをどうしろと」

 彼がそうぼやくのも仕方がないのかもしれない。

 目の前にあるのは宿として賑わった建物・・・ではなく、その真ん中に大きな柳の木が貫通しているからだ。その丈は2階建ての建物の3倍を軽く上回っている。---もっとも、その珍しい風貌のため、利用客が増えたのもまた事実なのだが。

「これが、寮ねぇ・・・」

 あまりに増えすぎた利用客。それに対処できるほどこの店は大きくなかった。それまで必要なかった予約が殺到し、閉館間際には3年先以上の予約まであったとされる。

 その原因を作ったのが一組の老夫婦だというが・・・それは明らかにされていない。

「とりあえずは、ここの立て直しかな・・・」

 そういうと彼はしゃがみ込み、地面をコンコンと、扉を開くときのように叩く。

「いるかい? お願いがあるんだけど、いいかな」



      聖魔降臨

         第二話 --- イベント=フラグ成立?



 ぼーぜん。

 そんな言葉がお似合いだろう。二人の女子学生が建物を見上げる。

「・・・えっと、ここで間違いないよね」

「・・・他のトコに来た覚えはないよ」

 つまり、"間違いなく自分が住んでいる寮に帰ってきた"となる。

 驚くのも無理がない。朝出てきたときの寮は確かに木造だったのだ。かなり古い。

 しかし今は同じ木造でも、木目が綺麗に見えるほどの新しい造りとなっている---もちろん、シンボルの柳はそのままに。

「ねえ、マユ・・・絶対違うって」

「そういってもね・・・。道間違えてないモノ」

「絶対違う。私は帰るよっ」

「ちょ、帰るってどこによレイ」

「何処も何も、私の寮へよ!」

 言うだけ言って後ろに向かって走り出す。

「レイったら・・・」

 マユと呼ばれる少女は仕方なく、新しくなった(?)寮へと足を伸ばす。



 その数十分前。

「まぁこんなものか。ごくろうさま」

「瑠璃様のお願いですモノ。お聞きしないわけにはいきませんわ」

「そうですぜ。ワシらのささやかなプレゼントってことでうけとってくだせぇ」

「うん、そうするよ。ありがとノーム、ドリアード」

 そういって手を振る。ドリアードの姿---小さな人型の木---とノーム---大きい鼻をのぞけば小柄な人といったところか---の姿がかき消える。彼らの世界、精霊界へと帰ったのだ。

「さって、新しくなった温泉にでもいきますか」



         2nd story

            Relation Flag Consisted of Confused Event



「おっふろ〜おっふろ〜♪」

 一通り建物---寮を見て回ったマユは温泉に向かう。

 ほぼすべての部屋が、面影は残すモノの新品同然に新しくなっているのを確認したのだ。となると温泉すら新しくなっている可能性が高い、と踏んだのだろう。

 その手にもつ着替えやタオル等、ワンセットと共に浮かれ気分で向かっている。


   ------そもそもだれが改装したのかを考えずに。


 彼女にしてみれば、全く姿の見えないオーナーがやったものだと勘違いしているのだろう。いくら優秀な業者とはいえ、半日足らずで全改装などできるはずもない。

 が、新品同然になっていた部屋---と家具を見てすっかり浮かれてしまっていた。

「♪〜」

 脱衣所---元は宿場なので台所やキッチンなどはそのままになっている---で服を脱ぎ、いざ風呂へ、とドアに手をかける直前だった。

 がらがらがらがら

「・・・・・・ん?」

「・・・・・・」

 沈黙。天使の通り道とはこのことをいうのだろうか。

 一方の男性は風呂側に、一方の女性は脱衣所側に。磨りガラス1枚を隔てていたが、それもなくなった。当然二人は---ある程度タオルで隠れているものの、裸である。

 二人ともこういう状況は初めてで、どう対応すればいいか分からない、らしい。

「・・・ん・・・」

 女性が右手を挙げる。

「我が命に答え、彼の邪悪を滅ぼせっ Hurricaneっ!」

「のわっ?!」

 ここに来て男の方も思考再開されたらしい。とっさにバックステップで距離を開け・・・ようとしたのだが、ぬれたタイルというのは意外に滑る。バックステップと同時に足が滑り・・・

「っっ!!」

 頭を打って悶絶する。ここぞとばかりに女は逃走。

 後に残された男は、しばらく悶えていた、という。



「ぜったい私は認めないからねっ!」

「まあマユもおちつきや。いいやないか裸ぐらい」

「よくない!」

 もう一人の女性---サラという---がマユをなだめる。が、火に油を注ぐ結果となった。

「だって、なぁ?」

「そうだよマユ。寮が綺麗になったのもオーナーが変わったからでしょ?」

 と、これは寮人の一人である千尋の言葉。

 マユと同行していたはずのレイは今だに帰ってきていない。

「関係ないわっ アナタはさっさとでてって!」

「つったって、これはばっちゃんの命令だしなぁ。ん?」

 ぴくっ

 三者三様に顔が引きつったのは気のせいか。

「おばあさまって・・・阿左美様?」

「片割れは」

 ひくっ

 三者三様に顔が引きつる。

「ま、まぁ。阿左美様の命や言うなら聞かないわけにはいかんやろ」

「そうなんだけど・・・」

 うーん、と悩み始める三人、いや二人か。

「私は賛成やで。居るか居ないかわからんようなオーナーよりはるーちゃんの方がよっぽどええわ」

(((るーちゃん?)))

 誰も口には出さないが。

 続いて千尋が口を出す。

「私は、どっちでもいいかな。瑠璃クンがオーナーになったからって特に変わることもないんでしょ」

「暇な時間はあるから料理ぐらいはするぞ?」

「モノによるけど、不味かったら今までみたいに私らがやればいいだけだしね。

 いいわ、私もどちらかといえば賛成」

「ちょっと千尋!」

「勘違いしないでマユ。管理人変更に賛成なの。瑠璃クンじゃなくてもある程度能力あるなら私は賛成よ」

 残るは一人、いや二人か。マユとレイになるのだが。

 瑠璃の考えではおそらくレイは問題ないとしている。---会ったことがないから、というのが理由らしい。

 となればマユを攻略できればいいのだが、如何せん初印象が悪すぎた。もうこれ以上悪くなることもない、という安心感(?)が不用意な発言を産む。

「どっちかっていうと、俺は被害者なんだがな」

 ギロッ

 マユの目がつり上がる。

「被害者? どゆこっちゃ」

「んー、つまりだな」

「わわわ、まってまって」

 慌てて口を閉ざさせるマユ。さすがに自分が侵入したとなると分が悪いと思ったのだろう。

「しょうがないわね・・・いーわ。さっきのことは不問にするから。」

「お、そっか」

「おーそれでこそマユや」

「大丈夫ですよ。明日になればキット忘れてますから」

 ものすごい言われようである。

「んじゃま、これからよろしくな」

「「ようこそ 如月寮へ」」



「ほっほっほ。

 あのマユ相手にあの道楽者もなかなかやるものじゃな」

 後日、この事件を耳にした阿左美はこう呟いたとか。


ということで、聖魔2話です。

んー・・・第一部だけでかなり時間かかるなぁ・・・


まだまだつづきますよーっ



あ、あとHPの方にはキャラを交えた後書きなどあります。

そちらももしよければどうぞ、なのです。

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