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聖魔降臨  作者: 珀夜
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第一話 --- 歴史

 歴史は存在する。否、歴史は作られると言うべきか。

 現代に置いて現代のことは歴史に成らず、また未来も歴史になり得ない。現代から見る過去、未来から見る現代と過去。それすらも歴史には成り得ない。

 なぜならば歴史は常に作られるモノだからだ。現代から現代や過去を研究し、探索し、それを記録にすることで初めて歴史が生まれる。

 つまり歴史は一部のものが握っているものにすぎないのだ。




「・・・と、これをふまえて・・・。

 人が人として形をなす以前、まぁつまり有史以前のコトね。

 その時にすでに聖と魔の区別があった、とされています。

 ------はいそこ、鼻提灯作りつつ上向いて堂々と眠るんじゃないっ! 授業中に!」

「いでっ!?」

 教師の投げたチョークが見事鼻提灯を破壊し、そのまま額で砕ける。もちろん、眉間にはきっちりチョークの白い点が残ったままだ。

「いってーなっ! なにす---」

「何してる、はこちらの台詞です。授業中に---しかも開始5分でいびきかいてるなんて良い度胸じゃない、えーっと・・・如月クン」

 教師だと思われる女性が名簿を確認しつつ問う。一方で如月、と呼ばれた少年がバツの悪いような顔をして視線を逸らす。彼もさすがに悪かったと思っているらしい。

「さて、如月クン。有史以前の聖と魔の区別をなんと言ったかしら?」

「・・・。天使と悪魔」

「ハイ正解。まぁ、ここは授業でするまでもない、みんなよく知ってることだわね」




 人は有史以来、様々な知恵と力を身につけてきた。---その弱さ故に。

 集団による狩猟も形を変え、武器を手にできるようになったように。


 現代において、人が手にできるモノは数多くなった。

 神に請い、その力を分け与えられた者がいる。

 神を見、その力を解析した者がいる。

 精を使い自然を己がままに操る者がいる。

 科学という、鉄の装甲を纏う者がいる。

 人外の存在も暗に認められており---国の、それも上位の方は認めようとはしないが---霊媒師といった者も幾人もいる。


 いずれの者にせよ、科学以外の学問を収めようとするには特殊な状況が必要になり、その特殊な状況を揃えているのがここ、聖魔学園だ。名前の通り、聖や魔に属するもの、またそれ以外の人外の力によるものを一挙に引き受けている。


 いずれにせよ、この学園を通らないものは三流以下のまがい物と呼んで構わないぐらいに卒業者たちの質は高かったりする。




「じゃ如月クン。聖魔について説明してみて」

「めんどくさいから、わかりま---いたっ」

 如月の額に二つ目の白点ができる。無論、彼の教師が投げたものだ。---先程と同じく。

「なーに? もう一度いってみて?」

 そして彼女の顔が憤怒に変わっていることも、生徒全員がわかっている。---抑えることはしない。それはそのまま自分に飛び火するということだから。

「りょーかい。」


 聖と魔とは文字通り聖に属する者、魔に属する者を指す。聖とは即ち神や神の僕である天使。だがしかし魔とは堕天使---神に背きし天使たちである

 即ち元は聖魔は同じ属性だったのだ。

 しかし神の名に従うことができずその元から離れていった者たちを魔と呼ぶようになった。

 これだけを見る限り、どちらが正義でどちらが邪悪かは判断できない。互いに、相手を邪悪だと思っているからだ。その中間で両極を信仰している人間や、その力を研究している人間に善悪の判断をつけようもない。---もっとも、邪教という名称もあるのだが。

 何にせよ、世界では聖魔は等しく世界に息づいている、ということになっている。

 聖魔に限らず、人外の存在は認められ始めているのだ。


「・・・とこれくらいでよろし?」

「まぁいいでしょう。さて、ちょっと進めるわよ。それでここの・・・」

 如月---名を瑠璃という---がまたも睡眠の体制に入る。今度は教師側もあきらめたようだ。

 その夢の中で見るのは虚空か現実か・・・




「ちょっと瑠璃、授業中に寝るのもいい加減にしなさいよ?」

「まぁいいじゃんか。どーせ瑠璃は将来決まってるようなもんだ」

「そーそー、幼なじみもいいけど、本末転倒にならないようにな」

 昼休みに瑠璃を起こそうとする少女---彼らは中等部三年に属する---と、その両隣の少年。そもそも瑠璃はこんな学校に居る必要もないのだ。すでに大学卒業しているのだから。

 とはいえ、この国でそんな免許が役に立つはずもなく、仕方なく義務教育を受けているというところなのだ。瑠璃にとっては暇な授業でしかない。

「まったくもう・・・ほらっ おきなさいっ!」

 少女が実力行使に出る。耳をとらえて引っ張り出したのだ

 こんな行為に出られてしまえば安眠にはほど遠い。

「いだだだだだ!?!!

 ・・・くぅ、・・・あ、おはよ、舞」

「おはよう、じゃないわよ・・・。まったくもう」

 ふう、と軽くため息を漏らすのも今日で何度目か。彼女、舞にとって幼なじみの存在はもっぱら迷惑の存在のようだった。

「だーって、ヒマなんだからしょうがないじゃんか」

「だからって寝ることはないでしょうに・・・。」

「そのために一番後ろの窓際の席を要求したし。まじめな学生さんからすれば俺なんて目の上のたんこぶなんだろ?」

「とうぜんでしょっ」

「あら舞らしい言葉」

 信じたことをまっすぐ突き進む。それがこの舞という少女らしい。

 そんな舞の耳元で瑠璃はささやく。

「そういう舞も、嫌いじゃないよ」

 ぼんっ、という効果音があればまず聞こえていただろう。顔だけでなく首から耳まで、すべて真っ赤に染まっていた。

「う、うるさいっ! うるさいうるさいうるさーいっ!」

 舞の行動が手当たり次第になる。暴れる、という言葉では物足りないぐらいに暴走しているのだ。

 かといって、この風景が異常かというとそうでもない。周りにしてみれば日常茶飯事なのだ。

「おい瑠璃、あんまりいじめるのもかわいそうだぞ」

「ほどほどにして抑えてやれよ?」

「へいへい・・・

 瑠璃、おちつけって」

「うるさーいっ!」

 聞く耳持たず。

 こういうときに出る行動といえば大抵きまっている。

 力任せに抑えるか、それとも驚かせてみるか。

「・・・」

 しばらく思案するが、どうやら後者の行動に出るようだ。

 暴れる舞にさっと近づき、腰と顎に手をやったかとおもうと頬にかるくキスをする。

「・・・あ」

「おはよ、眠り姫」

 これくらいの暴走なら軽く止められる瑠璃にしては結構珍しい行為ではある。

 ・・・が、やはり周囲の騒ぎは起こらず、すでに慣れてあきらめたという雰囲気がありありとでていた。

「「まったく・・・見せつけるなよな・・・」」

 心の叫びが聞こえるとしたらまず間違いなくそんな言葉だろう。




「で、今日はどうするのー?」

 揺れる髪を手で押さえつつ---瑠璃が運転するエアバイクに乗っている---問う。

「ま、いつも通りさね。庭で寝る」

 単純明快な答えに呆れる他はない。もっとも瑠璃本人にしてみればやることがあるのだが、そのために寝る、という気持ちでしかない。

「寝過ぎて遅刻しないようにね」

「はいはい、わかってますよ眠り姫さま」

 ぼんっ、と音を立てて顔を真っ赤にした舞がいたことは明記するまでもない。


 舞を送って自宅に戻ったその後。

 瑠璃の部屋に影が二つ。いや、小さい者を含めればもっと数はあるだろうか。

「で、決まったかえ?」

「まぁいいんだけどさ。面倒なだけで」

「はて、面倒とは?」

「学校。義務教育だからって行くようにさせたのはばっちゃんだろうに。」

「そのようなもの、いくらでも変えようがあるわぃ」

「さすが。ま、おもしろそうだから引き受ける気ではいたけどね」

「ならば、明日からでも頼むことにするわい」

「明日かよっ?!」 

瑠「めんどうだなー」

舞「面倒? それって・・・わたしのこと?」

瑠「うんそ--- いや、学校だって」

舞「・・・じぃ〜」

瑠「・・・ほんとだってば」

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