振られた私を慰めてくれるのは嬉しいけど……もしかして私のこと狙ってる?
「好きです、付き合ってください!」
華の高校1年生、鈴木美紅。
中学時代は告白に失敗し続け……遂には彼氏がいない3年間を過ごしてしまった。
だから、高校では甘酸っぱい青春を送るはずだったのに……。
「ごめんなさい!」
あっけなく私の恋愛は幕を閉じるのだった。
* * *
「ってことがあって振られちゃった!」
昼休み。
お母さんに作って貰ったお弁当を口に放り込みながら私は目の前の少女に愚痴をこぼした。
「あいつに見る目が無かっただけじゃない?」
手作りのお弁当を口に入れながら、目の前にいる少女は答える。
こいつの名前は井良々優里。
中学のときに知り合った仲良しの親友だ。
「優里はいいよねっ。そのスタイルと顔ならモテモテだし」
「そんなことないって」
口では否定をしているが……嘘だ。
私は知っているんだからな、数日前にサッカー部の先輩に告白されていたことを。
言うまでもなく中学からモテている彼女は、孤高の美少女と言われ学校の有名人だった。
全ての告白を断り、おまけに友達も作らない。
そのせいで、優里狙いの男どもは私に近づいてくる。ほんといい迷惑よ。
私が告白した相手が次の日、優里に告白するなんてこともあったな。
まぁ、今となっちゃ笑い話なんだけどね。
私は笑えないけど。
「なに怖い顔してんの、可愛い顔が台無しだよ?」
「本当に可愛いなら、とっくに彼氏ができてますー。それに可愛いって言うのは優里みたいな人に言うんだよ?」
「えー、流石に言い過ぎだって。私、そこまで可愛くないよ?」
指で髪を弄っていた優里はそう言って首を傾げた。
色素の抜けた茶髪に、吸い込まれそうになる琥珀色の瞳。
そして、私にはない立派な双丘……。
顔よし、性格よし、スタイルよしの三点揃い。
それでいて可愛いと思っていないだと?
嫌みか? 嫌みで言ってるのか!?
「優里で可愛くないなら誰が可愛いってなるのさ?」
「初めから言ってるじゃん。美紅って」
瞳を輝かせながら優里は微笑む。
「あなたの目に私はどう映っているのよ……」
「そりゃあ……女神?」
なに、馬鹿にしてるの?
訝しげに優里の顔を見ると、何やらニヤニヤしている。
ぶん殴ってやろうかな。
「……まぁ、あんまり気にしないようにね。私でよかったらいつでも話を聞くからさ」
「——ありがとね」
「ほんと、私がこんなこと言うの美紅だけなんだからね?」
いつも通り優里は優しい。
だけど……なんか、違和感が……。
「……美紅は特別なんだから」
「…………」
……ん? なんか口説いてない?
いやいやいやいや、まさかそんな……私だって友達が振られたら同じ事言うし。
振られた影響か未だに頭は恋愛脳みたいだ。
全く……冷静になるんだ、私。
「……私ならそんな思いさせないのに」
私に聞こえるか微妙な声量で優里は呟く。
……ッ! これは絶対口説いてない!? こんな言葉ヤ○チンしか言ってる所見たことないって!!
いや、ネットでしか聞かないから現実にあるかわからないけどさ!?
そういえば……少し前の放課後に映画を見に行ったときも変だったような?
「ねぇ、現地集合って聞いたけどさ。私服に着替えるとは聞いてないんだけど」
放課後、用事があるとかでバラバラに集合したのだが、現れた少女はメイクも服装もバッチリで、とても高校生とは思えない大人の雰囲気を醸し出していた。
青のスカートに白のブラウス……。
え、わたし制服なんですけど? 隣歩いてたら絶対浮くじゃん!
「美紅の前では少しでも可愛くいたいから着替えてきちゃった!」
そういって優里は目の前でターンをした。
首元が太陽に照らされ輝く。
「ん? これ私があげたネックレスじゃん!」
私が優里の誕生日にあげたネックレスだ。
お年玉貯金からお札を何枚か取り出して買ったんだよね、懐かしい~。
「ふふっ、気づいちゃった?」
「付けてくれたんだ!」
「当たり前じゃん。大事なデートだもん、しっかりおめかししなきゃ!」
「なら私も私服に着替えたかったんですけど?」
「制服でも美紅は可愛いよ?」
そういう問題じゃなくない?
というか用事って着替えることか……。言葉の真意に気づいてたら私も帰ったのに!
「もういいよ、早く映画見に行こ」
「あいあいさー」
いちいちツッコむのめんどくさかったので、私は話を切り上げ歩きだした。
それから珍しいことに少しばかり無言になった。
優里と話してて無言になるなんていつぶりだろ?
なんてことを考えていると、突然優里は口を開いた。
「…………いやぁ~、最近寒いね? 秋はどこ行ったのって思わない?」
「確かにねー。カイロ持ってきたらよかったかも」
私がそう言った途端、待ってましたと言わんばかりに優里は私の手を握ってきた。
「わっ! え、なに!?」
「美紅が寒いって言うから仕方ないなぁ~、手をつないであげるよ」
色々と言いたいことはあるけど……なんで自分から繋いだくせに恥ずかしがってんの?
まるで私のこと好きみたいに……。
なんてこともあったなー。
今考えてもおかしな出来事だけど。
翌日、少し早起きした私はいつもより早く学校に着いた。
「なんだかクラスが騒がしい?」
教室に足を入れると、クラスの女子が集まってキャッキャとしていた。
ははーん。これは恋愛話だな?
興味が湧いた私はさっそく、その集団に混ざりにいった。
「ねぇ、何の話してるの?」
「あ、美紅ちゃん。えーどうしようかな?」
後ろにいる女子と目配せしながら、目の前の少女は悩むそぶりを見せる。
「もったいぶってないで教えてよー」
「実は……優里ちゃんの好きな人が噂になっててー」
「優里!?」
え、優里に好きな人なんて居たの!?
全然気づかなかった……。
「それで誰が好きなの?」
「美紅ちゃんはまだ知らないんだね。まぁ、当たり前と言えば当たり前なのかな? ヒントは女の子!」
「女の子……?」
「えー分からない? 優里ちゃんは恋愛的に女の子が好きならしいよ。だから、告白を断り続けてるってわけ」
え、女の子を恋愛的に好き……?
そんなこと1度も……。
「で、優里ちゃんの好きな相手は――」
「――美紅ちゃんなんだって」
バサッ。
気づかなかった。すぐ近くまで優里が来ていたことに。
「……ッ!」
「待って!」
肩からずり落ちたバックに脇目も振らず、優里は走り出した。
* * *
知られちゃった……。知られてしまった……。
私がずっと隠していたことを。
……美紅が好きって事を。
きっかけは多分あれだ。
中学2年生。美紅と出会った年。
あの頃は下心を向けて話しかけてくる男も、嫉妬で嫌がらせをしてくる女も、全てが鬱陶しかった。
……だから友達を作れなかった。
そんな私に根気強く話しかけてくれる人がいた。
それが美紅だ。同じクラスで隣の席。
どうせこの人も同じ。陰で悪口を言う人なんだろう。
だから、深く関わろうとせず浅く接し続けてきた。
——そんなときだ。
「ねぇ、優里ってやつ? なんだか調子乗ってるよね」
「分かる~。クール気取ってるのか知らないけど、ウザいよね」
「美紅もそう思わない?」
放課後の教室。美紅を含めたクラメイトが私の悪口を言っているのが聞こえた。
やっぱり……。
その場を後にしようと思ったのだが——。
「……あの子がクラスで下を向いてる理由がやっと分かった。あんたらがあの子の笑顔を奪ったのね」
「はぁ? なに調子乗ってんの?」
「……言っとくけど私はあの子の味方だから、気分悪いしもう帰る」
本当にそれだけ。悪口に加担しない。嫌がらせをしてこない。
その時だろう、私が美紅に恋をしたのは。
「はぁ、はぁ……」
私は屋上まで登り、膝を抱えその場に座り込んだ。
私、これからどうしたら……。
「はぁ……やっと追いついた。なにいきなり、走り出してんのよ……」
「……どうしてここが分かったの」
「そりゃ、優里のことだしどこに行くかぐらい分かるわよ……」
美紅はそう言いながら私の隣に腰掛ける。
「私に女の子が好きってばれたから逃げたの?」
「…………」
「私、全然そんなこと気にしないよ? だから――」
「……知ってるよ。美紅に女の子が好きって事を伝えても、そういって受けて入れてくれるって……」
そうだ、きっと美紅は受け入れてくる、でも――。
「私にとって好きになる相手に性別は関係ない。でも、美紅は違うでしょ?」
「そんなこと……」
「いいよ、そんなこと見てれば分かる。恋愛対象に女は入らないって。……だから私はこの気持ちを隠し続けてきたの。ごめんね、貴方を好きになっちゃって……」
思わず目尻から涙があふれ、スカートを握る手に力が入る。
言うつもりなかったんだけどなぁ。
できればこの気持ちは死ぬまで隠していたかったのに……。
「なーんでそんな振られたみたいな雰囲気出してるのよ」
「いや、だって――」
「あなたのこと分かってるって言ったでしょ? 確信したのはついさっきだけど、元々疑ってたからね?」
「そう……だったんだ」
隠してたつもりだったけど、無意識に表に出てたんだ……。
なのに一緒にいてくれたなんて、やっぱり美紅はいい人だな……。
「というか隠してたつもりだったことにビックリしたわ。無意識でアレとかどんだけ私のこと好きなのよ」
「…………」
「だーかーら、振られた雰囲気だすなって」
「いひゃっ!」
下を向く私に美紅はチョップを入れる。
「私がいつ付き合えません、なんて言ったのよ」
「え?」
「まだ、告白の返事聞いてないでしょ? いや、告白と呼べるかは別の問題だけどさ」
告白の返事……?
そんなこと言わなくてもわかるよ……。私が美紅と付き合えるわけ……。
「もしかして私が告白を断ると思ってるの?」
「え?」
美紅はその場で起き上がり歩き出した。
「……本当に好きな人が相手だと言葉にしづらいわね」
顔を赤くしながらぶつぶつ呟いていた美紅は不意に後ろを振り向き、その目が私を捉えた。
「言っとくけど私の好きは安くないから!」
「えっと……」
「私と付き合いたいんでしょ? 恋人の右手が空いてるんですけど!」
歩く足を止めて右手をブンブンと振っている美紅に思わず笑みが溢れる。
「ちょっとなんで笑ってるの!?」
「美紅がすごい可愛くて」
「かわっ……! あんた本当に平気でそういうこと言うんだから」
ほんと美紅はすごくかわいい。私にとって一番。だから私は……。
「それで……? 私は寒いんだけどどうする?」
「うん!」
私は元気よくそう答えて、彼女に抱きついた。
「バカッ! 手繋ごうって言ってるの!」
「こっちの方があったかいよ〜?」
私と彼女の関係は親友から恋人へ変わるのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
最近百合の良さを知ってしまったばかりなので、また百合作品書いてみたいですね〜。
面白かった、続きが読みたいと思っていただけましたら、
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