罪なき子へ鮮やかなローダンセを
過ぎていく日常、そんな日常で今でも忘れないある少年がいた、これはその少年と俺の決意と友情のお話
「僕の無実を証明して下さい」
俺は依頼はたいてい断らない、猫の捜索だろうが、手伝いだろうが何だってやってきた、そんな俺もこれは流石に断りたかった
死刑囚、一ノ瀬透16歳、とある町で起きた連続殺人事件の犯人、あまりにも残酷な事件の犯人として逮捕された一ノ瀬は当時14歳だった
「無理だ」
「おォ、きっぱり断りましたね」
「まず君が犯人なのは確実だ」
「何で?」
「まずは事件の起きた家に君の指紋が付いていた、それに死んだ人間は全員安堂製薬の幹部の人間だった、そしてこの会社の最近老衰した社長安堂和俊が昔君の家族を殺したと言う情報もある、復讐する為と考えれば納得だ」
「何で社長に復讐したいのに幹部を殺す必要あるんですか?」
「あの事件の時社長は釈放された、あの十人の奴らによって、恨み位抱くだろ」
「でも僕は違います、現場を探せばくまなく考えれば必ず無実が証明される」
「不可能だ」
「不可能なんて存在しません、技術力さえ上がれば人間は火星にでも行けるようになるし、不老不死も実行できます」
「技術力さえあればな、でも今は不可能だろ」
「でもこれは違う、必ず探した先に答えがあります」
「探した所で…」
「お願いいたします、ただ無実の証明だけでいいんです」
「…」
(本気だ、多分これは俺がダメだったら他の人をあてにする、おそらく死刑が確定した時から多分こんな事をしてたはずだ、こんな人気ない探偵の俺に依頼が来たのはその為だろう、やる意味はない…でもコイツの目は俺に期待している目、初めてされたこんな目…ハハッやれるならやれるだけやってみてやろうか)
「わかった、ただ俺ができる所までやる、いいな」
「!…ありがとうございます」
「では俺は」
「待って下さい」
「?」
「協力する以上仲良くいたいでしょ、友としてお互い接しません?」
「いいね、では友として無実の証明をやってみるよ」
「では」
「あぁ」
「お!面会終わった」
「あぁ」
コイツは助手の藤原海、情報収集に長けた女だ
「でやるんですか?」
「あァやってやるよ」
「名探偵、遥章一の復活ですか」
「さぁどうだろうな」
まずは情報収集だ
「海、被害者の家の間取りを」
「ではまずは最初に殺された幹部の一人堤さんの家です」
「堤さんは子供も居たんだよな」
「はい、そうらしいです」
「犯人は一階の窓を割って侵入、その後二階の子供部屋を襲い子供と取っ組み合いになるものの刺されて子供は死亡その後被害者の元へ行き刺し殺した」
「何で子供部屋を?」
「さぁ子供に何かがあったのだろうか…」
「あとこれ安堂和俊の資料です」
「………何かこんな偉人いたよな…」
「誰ですか?」
「室町の人」
「あァ、足利尊氏ですか」
「そう、メンヘラだろコイツ、それくらいやってる事が意味不明すぎる」
「でも精神身体共に異常はないと資料にはありますがね」
「まず…アイツの家襲ったんだ?」
「さァ?」
「面会するか…」
一週間後
「久しぶりです、探偵さん」
「一ノ瀬一つ教えてくれ、安堂と面識は?」
「ないです」
「じゃあ何で君の家族を襲ったんだ?」
「さぁ僕自身も全然」
「これからどうすればいいか…」
「僕のいもう…いや…安堂の奥さんに聞くのは?」
「安堂美智子か…でもどうやって?」
「……犯罪にならない程度でこれなら…」
「何だ?」
「まず─────」
「…まァ…やってみるか」
「やるんですか?」
「あァそれしかねぇだろ」
一週間後
「って事だ、海頼む」
「マジで!」
「マジだよマジ大マジのマジ」
「あーもうわかったよ!ただ後で必ず焼き肉寿司牛丼屋全部奢って下さいね」
「あァ……寿司!?」
「そりゃあそうでしょう」
「回る方?回らない方?」
「回らない方」
「まァ…当然か」
「じゃあ頼んだ」
「OK」
一週間後
「ここに来てから1時間そろそろか…」
(安堂美智子、頼む来いッ)
「…」
「はじめまして」
「あなた、孫を誘拐したのは」
「はい、来てくれると思いましたよ、警察には通報せず来てくれたのは本当に感謝します」
「そう、でも…ここに孫はいないようね」
「…そうでも助手の元にいてねこの一週間の間にあなたのお孫さんと仲良くさせて貰ってね」
「ふーんでも、本当にそこにいるの?」
「はい?」
「助手さんの所に、あなたは絶対にそんな事をやれる程覚悟のある男には見えないけど」
「では電話しましょうか」
『はいもしもし?』
「海さァ孫の子の声を聞かせてくれない」
『はい』
『何?』
「光ちゃん!」
「光太郎君、海さんに戻してくれる?」
『うん』
「ありがとう」
『で他に何か?』
「いや、もう何も」
『じゃあきりますね』
プープー
「どうですか、証拠あったでしょう」
「フフ、それ嘘ね」
「ッ!」
「顔が強張ったわね、図星のようね」
(何故気づいた?何故?気づいける証拠は?)
「あの子ねおばあちゃん子なの、だから電話でも私の声を聞いたらすぐ反応する、なのに反応しなかった、それにあんなに大きな声を出したのに、録音した物でしょあれ」
「……」
「何が知りたいの」
「ここまで来たらもういい、何で最近死んだ社長安堂和俊は昔今の死刑囚の一ノ瀬の家を襲ったかだ」
「まさかあなたあの事件を解決しようとしてるの?」
「それと幹部の殺害事件もな」
「ならもう首を突っ込むのは止めなさい、きっとそこに何も救いはない」
(ここで…止める、確かにここで止めたらいいかも知れない…でもアイツは一ノ瀬は俺を信じてくれている…なら)
「言え何もかも」
「何の為にそこまでやるの?」
「友の為だ、年の離れた俺を期待してくれる友の為に」
「諦めなさい、それの方が幸せよ」
「待てッ」
「私の自宅まで」
「待て、行くなッ」
「では、私は」
ブゥゥゥンー
「くそが」
ガチャン
「どうでした?」
「何も…嘘もばれた」
「え?あれが」
「ハァ…どうするか…」
「まァ映画でも見て気分転換しましょう」
「……ん?何の映画だこれ?」
「知らないんですか?アカデミー賞も受賞した映画ですよ!」
「全然どんな内容だ?」
「えーと何かの精神疾患だったんだよな…」
「統合失調症とか?」
「あ!そうだそれだ、で主人公がその…」
「ふーん…!」
「どうしました?」
「紙!」
「あぁ、はいッ」
ザザザザザザザッ
「これだ!これなら!」
「す、凄い…」
「ハハッ、海この町で起きた誘拐事件などを調べて」
「は、はいッ」
数日後
「!…何でここが?」
「有能な助手に頼みましてね」
「で、諦めに来たの?」
「いや違います」
「じゃあ何?」
「この事件全てが解けた」
「へー」
「この町で起きた一ノ瀬家父母殺害事件と幹部連続殺人事件その全ての犯人は社長安堂和俊だ」
「何でそう思うの?」
「安堂はですね、殺す理由がないんです誰一人として…でももし統合失調症だったら?」
「…」
「統合失調症は幻覚、妄想などを引き起こす精神疾患です、調べましたよあなたの子供は二人いる、一人は女だそして子供がいる、そしてもう一人の息子がいた…誘拐されたんでしょ息子さん」
「…で?」
「誘拐とかなら納得が行く、安堂は死ぬ前に看護師に「もう二度と社長になりたくない」と言っていたそうです、そんな男からすれば息子は社長の座を継がせる希望なんです、調べたらこの町では一度誘拐事件が起きてた残酷な、その被害者が安堂の息子なら…統合失調症になってもおかしくない」
「じゃあ何で一ノ瀬家を襲ったの?」
(冷静にいろ、まだ怒るな)
「安堂には親に虐待されていた事があるらしいです、そして一ノ瀬家の家と安堂の実家少し似ていたんです、家を見て親からの虐待を思いだしそして殺そうとしてもおかしくない、もうその時には統合失調症になってたはずですから」
「では何で幹部を?」
「簡単です、安堂はもうその時重度の統合失調症だったはず、最初に殺された人の家族を見た時に子供の誕生日が殺された日と近かったんです、それに有給を取ろうとしており理由は子供の誕生日祝いの旅行の為、これを聞いた時もしかしたら「コイツが息子を誘拐した!」なんて思ってもおかしくないですよね」
(…おそらくコイツは俺の想像以上の悪だ、吐き気がする)
「それに事件が起きた時も子供部屋から狙ってますしそこにいなくてもあの十人の中にいると考えるでしょう、だから十人全員家族ごと殺した」
「では何で…一ノ瀬?だっけソイツの指紋が見つかったの?」
「最後の事件の時の第一発見者は一ノ瀬透だ、普通殺人現場を見たら色んな所を触ると思いますよ」
「……」
(これがダメならもうダメだ、これに全てを賭ける)
「ハハッ流石、こんなんでもちゃんと探偵なのね」
「…」
「ご名答、全てあなたの言う通り」
「何で社長を一ノ瀬父母殺害の時に辞退させなかった」
「さァ」
「社長の奥さんと言う名の権力に目が眩んだのか?」
「フフッそうよ当たり」
「お…」
「何?」
「お前が…お前が権力に溺れたせいでたった一人の少年があんなことにッ」
「知るかよ、ボケがッ消え失せろ」
「は?」
「…車が来たようね」
「おい?」
「じゃあ」
「………チッまたかよ……でも」
数日後
「「じゃあ」これが証拠の音声だ、君の無罪は証明された、そして裁判は…」
「いえ、裁判はしません」
「は?」
「言ったでしょう、無実を証明してほしいと」
「いやでも君は無実なんだ、だから…」
「一度死刑囚と言う肩書きにでもなってしまえば、それがどんな間違いでも人々は俺を恐れ、否定します、そんな世界で生きたくない」
「何弱音を…」
「弱音じゃないです、本音です」
「でも君は死ぬ理由もない子供だ、なら生きていいだろ」
「僕はッ…姉に迷惑かけたくないんです、僕はいいですよどんなに恐れられようが否定しようが…でも姉は違う…あの時殺されそうになった時に助けてくれた恩を仇で返したくない」
「…」
「姉は今はバレてませんが、俺が無罪になった時いつ俺の姉とバレてもおかしくないんです…だから」
「それでいいのか…未練は…」
「ありますよ大ありです、でもこれが僕の決意です」
「…」
「フフッ笑って下さい、笑ってもらわないとこっちまで悲しくなる…」
「ごめん、わかった」
「最後の依頼があります」
「最後の…依頼?」
「まァ後で手紙を送ります、それを姉に」
「わかった、やるよ」
「やっぱ俺達気が合うと思うんですよ」
「そりゃ友達だもんな」
「そうですね」
「じゃあ帰るか」
「気を付けて」
「あァ」
これが俺と一ノ瀬の最後の会話になった
死刑が執行され一ノ瀬透は死んだ
3日後手紙が届いた、そしてこの手紙を姉に預けた
ずっと泣いていた、何回もバカと言い泣いていた
その数週間後の話
「……!これって手紙?」
そのポストには手紙が一通あった、一ノ瀬透からの手紙だった
「……」
〔永遠の友へ、この手紙を読んでいる…いやこんな事はいいや、兎に角本当にありがとうございました、僕は幼少期の時あれを経験してから人を信用する事ができなかったんですけど、初めて会った時この人なら…と思いました、二回目ですけど本当にありがとうございました、これからも頑張って下さい探偵いや遥さん、友として親友として応援してます…あなたの友一ノ瀬透より〕
「ハハッ馬鹿野郎…」
そして今
この一年色々あった
安堂美智子は車の事故により植物状態らしい、それ相応の末路と言うべきだろう
俺は今や世間から名探偵と呼ばれる程成長した
ザッザッ
「久しぶりだな、一ノ瀬」
俺は一ノ瀬に何もしてやれなかった、だから俺はいつでもこの墓が鮮やかであるよう花を手向ける
罪なき子へ鮮やかなローダンセを
「さァ帰るか」
ガッ
「ッぶね、こける所だった」
ヒュー
風が吹いた時そこにあったローダンセの花は揺れていた、まるで一ノ瀬が笑ったように




