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彼女を殺す魔法  作者: 四季織姫
行く先拓くは幼き暁
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第五話 禁忌と能力

 そして、彼女の指導のもと、魔力の訓練をしている裏で八日道についての勉強を進めていくことにした。なぜ、まだ使うことのない術について学ぶのかといえば、感覚としてはゲームのボス戦で相手の情報を集めて、パーティー編成を研究するのに似ているだろう。

 また、能力の発現のためでもあった。能力自体はギフトによるものが二つあったが、グレア先生曰く努力次第で新たな能力が発現すると言うことらしい。そして今は八道付与エンチャントという能力を目当てにしている。

「付与能力ですか。確かにレヴィくんは剣術も習っていますから相性は良さそうですね。剣に付与したりすれば強力な技となるでしょう。いいですね、ご両親が著名な剣術家というのは」

 有名な剣術家?「何だそれは」という顔で先生の方を見ていると、

「もしかして本当に知らないのですか?」

 確かに父は小さい頃から私に剣術を教えてくれたし、母はその父より強いという話を聞いたことがある。でも、有名な剣術家というのはどういう話なのだろうか?

「あなたのご両親は氷剣流の剣聖と剣王なのですよ。剣聖は上から二番目、剣王は三番目に位置する実力者への名ですよ」

 父より母の方が強いということは母が剣聖の名の持ち主ということか?確かにあの母の怒った時の形相といえば震えが止まらないほどではあるが。

 それからおやすみを言われるまでの一時間程度、勉強の傍に両親の凄さを先生は語ってくれた。

 何週間が経った頃だろうか?彼女の指導の甲斐もあって、エンチャントとついでに同一無視オリジナリティという能力を獲得した。不思議な感覚だが、能力や詠唱は英語に近いものがあるようだ。そして、たった数週間という時間で能力をいくつか発現出来たことで先生含め皆は驚いていた。それは私自身もそうだった。

 だが、流石に疲れた。テスト勉強並みの努力だった。いや、徹夜のRPGゲームの攻略といった方がいいかもしれない。そんなことを数週間続けていたのだからどんなに体力が有り余っている年頃でもきついものがあった。

 その間にいくつか八日道の術も覚えることができた。本当に初歩の初歩ではあったが大きな進歩だ。

「たった一月で術と能力を獲得するとはもしかして私いらないのでは?」

「そんなことないですよ。先生がいなかったらこんなに早くには完成しなかったですよ」

「どっちかっていうと君の能力が原因ですけどね」

 先生は謙遜も上手いなぁ。たかだか能力如きでここまでの成果は上げられまいよ。もっと威張ってもいいのに。

 ただ、十七という歳を考えたらそんな自尊心も大きくは育っていないのかもしれない。私もそんな感じだったかなぁ?年々、前世の細かい記憶が薄れつつある。例えば、少ししか経験したことのない紅茶の味なんかはこちらの世界のものが向こうと同じなのかなんてもう理解できない状況だ。

 オリジナルの術の開発も少しずつだが進んでいる。例えば、風檻ウィズマトと呼んでいる術だ。風と言いつつ夜の帳が下りる様子に近い檻を形成する術である。檻と言っても隔離する技ではなくて、小鳥を外敵から守る、そういう檻である。

 そう言えば、この世界には紙というものが少し向こうの世界より高い傾向にある。それは量産体制が確立されたばかりだからというところがある。

 そのため、二十年前までは一般人の反省の給与を賄えるほどの金額を誇っていた。そのため、公立図書館にしか本はないという状況だったのだが、近年、その環境も変化しているのであった。

 今では学校の教科書の他にも、新聞や情報雑誌なんかも登場しており、花の街には出版社や芸能事務所が作られているほどだ。雑誌の創刊にあたってファッションモデルの登場もあった。初めの頃、当初三年ほどは読者モデルの文化が一般的であったが、企業モデルの権利が確立されつつあった。そして、最初にモデル事務所を立ち上げた会社はそれからも続々と増える事務所の統括となり、芸能事務所会ワンガンとなった。その会の会長を務めるのが今の花神フロスである。

 少し話は逸れたがつまり、私の家にも多くの道本が置かれており、先生もまた自前の本を持っていた。

 術の研究は毎晩行われた。昼間は剣術と魔力増強の訓練、夕方には八日道の術の使い方のレッスンがあった。

 小規模の術を何度も繰り返し、自分が簡単にイメージできるように刷り込んでいく。それが無詠唱の訓練にもつながるようだ。

「君の能力に合わせてレッスンを変えてみたけれど、効果はありそうかい?」

「はい、見てください、基礎的な炎や水の生成ならできるようになりました。こんなかんじです」

 私は自分の手のひらに上に炎と水を作り出し、その上でその二つを合成して、小さな爆発を発生させる。これがこの一カ月の間にできるようになったことである。

 一カ月目の終わりに先生は自分の最高の術を見せてくれるといって、外にある小さな丘のところへ連れてきてくれた。

 彼女の術は始まりと同時に天空に暗黒の雲を生成し、その下に風を纏った龍が降臨する。

「これが私の使える八日道・禁忌、風龍ウィズラゴンです。大量の風を集める、そして、圧縮することで強力な風速を発生させているのです。敵を飛ばすだけでなく、硬く速い風が相手の肉を切り裂くことも可能なんです」

 禁忌というのは使用することで使用者の意識や生命力を奪う可能性を秘めている術だ。使用すれば単体で巨龍級と呼ばれる骸を討伐可能とさえ言われているほどの火力を誇る。

 禁忌の術は他の術と異なり、魔力によって物質や現象を作るのではなく、操作することで、自然界より強力な力を発生させるものである。よって、例えば同じ大きさの火球を作ることに関しても、禁忌の方が消費する魔力も小さいものとなる。


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