理想郷の為〜漆〜 新時代の台頭
先に仕掛けたのは雅羅だった。瞬きする間に距離を詰め、神速の一刀を放つ。しかし、双銘は後も容易く受け止める。双銘は驚いた。想像より雅羅の力が強かったからだ。双銘は即座に受け流しダメージを最小限にする。そこからはワイドとの斬り合いを彷彿とさせる連撃の嵐、しかし、ワイドの時とは違うことそれは双方互角。一歩も譲らぬ攻防戦に、それを見ていた兵士たちは固唾を飲んだ。
兵士a『あれが伝説の英雄の剣技、レベルが違う』
兵士B『しかもあれで全盛期とかはかけ離れているとは異次元すぎる』見ていた兵士全員がもっと見ていたいという思いと裏腹に双銘は距離をとった。
雅羅『なぜ距離を取った?』という問いに、『埒が開かないから』と嘲笑する様に答えた。雅羅は『そうか』とだけいい刀を鞘に納めて、構えた。
アレル『居合か』それはガドリムの派生で、瞬時に敵との距離を詰め、繰り出される神速の居合抜刀。
そして、それは一般兵士には雅羅の姿は見えなかった。しかし、双銘はそれをかわす。
双銘『俺との距離目測15m、それを人間では認知できないほどの速度で放つとは、昔より早くなったかい雅羅』
雅羅『次は、殺す』そして、再び構える。しかし、それでなお双銘はその場に佇んでいた。そして、雅羅が再度神速の居合抜刀を繰り出した。しかし、双銘はそのタイミングを合わせ、袈裟斬りのカウンターを入れる。雅羅は驚いたが、冷静にその袈裟斬りを躱す。しかし、その袈裟斬りの軌道は変化し、雅羅の方に向かってきた。呆気に取られていると、その斬撃が当たる。脅威的な反射神経により、致命傷は回避したがそれなりに深い傷を負う。
雅羅『凄まじい才覚、あんな芸当、早々にできるものではないぞ双銘』
双銘『思いつきのすげー芸当ができるから、俺は最強になれた』
雅羅『しかし、俺を舐めているのか?』周りの兵士はキョトン顔をする。
雅羅『その剣は、市販で売られている様ななんのエンチャントも掛けられてない雑魚が持つ剣だ。なぜそれを使う』
双銘『正確には日本刀だけどね、まーいいや大急ぎで来たから、準備できなかっただけだよ。あと、参戦する気もなかったから』
雅羅は『そうか』とだけいい、今度は歩いて近づく。更に双銘も歩いて近づく。そして、二人の制空圏が触れる。そして、完全に双方が制空圏の中に入った瞬間、再び一進一退の攻防戦が始まった。しかし、今度は、双銘が優勢だった。雅羅を少しづつ押していき、雅羅は後退りをする。そこに、双銘は見事な横薙ぎを入れる。それを雅羅は躱す為にバックステップを踏む。しかし、再度双銘の曲芸が炸裂する。
雅羅『刀身が伸びた!』横薙ぎを回避し、攻撃に繋げる為に必要最低限にしていたことが仇となり、再び、胴体に深傷を負う。雅羅は、双銘の包帯ぐるぐる巻きの手を見た。そこには、親指と人差し指だけで、刀を支える様子だった。雅羅は高速のバックステップで双銘との距離を取り、常に双銘を警戒していた。しかし、双銘は刀を鞘にしまった。雅羅は驚いたものの『なぜ納めた?。なぜ刀を納めた!答えろ双銘!』と怒号があたりには響く。しかし、双銘の回答は予想外のものだった。
双銘『そりゃ、そうでしょ、君を倒すのは俺じゃない』
雅羅『?』
双銘『新時代だ』
雅羅は即座に横を見た。そこには眼前にまで迫る。水弾があった。雅羅は考える暇もなく、その水弾がクリーンヒットする。顔面だったこと、かなり大きかったこと、これまでの連戦により疲弊していたことが相まって、かなりの大ダメージだった。




